リコード法 その他の習慣

2021/12/28

 昨日はリコード法の中心となる食事について書きました。『アミロイドβは原因ではなく様々な要因が重なった結果として生じる生体の防御反応の一つである。』というその要因には、食事だけではなく、運動、ストレス、脳トレ、睡眠、口腔ケア、カビなどについても対策が必要です。今日は簡単に、それらについても説明させて頂きます。

1、 運動は、脳の血流を改善し、ニューロンを維持する神経栄養因子(BDNF)の分泌を増やし、アルツハイマー病の原因物質の沈着を減らすなどの、様々なメカニズムによって認知症のリスクを減らすことがわかっています。

 特に、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、記憶力を高める効果があることが多くの研究で確認されてきました。フィンランドの研究では、中年期から少し汗をかく程度の運動を、週2回以上、20~30分行うことで、20年後にアルツハイマー型認知症になるリスクが約1/3に減少していました。米イリノイ大学の研究では、週3回のウォーキングを1年間続けたグループは、海馬が2%大きくなることがわかりました。

 1週間で150分以上の運動習慣が、認知機能維持に有用である、という研究は沢山あります。インスリン抵抗性を改善し、炎症の原因となるストレスも軽減します。疲れることで、睡眠の質が改善される効果もあります。

 さらに運動をしながら、同時に頭を使うDual taskを取り入れると、さらに効果が上がります。ウォーキングや踏み台昇降をしながら100から3を引き続ける計算をしたり、2~3人でしりとりをしながら歩く方法などを、国立長寿医療センターが推奨しています。

2、 ストレスコントロールも重要です。ストレスを受けると、コルチゾールやACTHなどの、いわゆるストレスホルモンが分泌され、全身の血管が収縮し、血流が悪くなることで、結果として神経細胞が必要な酸素や栄養が届かなくなってしまいます。また、ストレスホルモンに晒されると、神経細胞自体が障害されます。特に、海馬はストレスに弱く萎縮しやすいため、記憶力が低下しやすくなるのです。

 ストレス管理の方法としては、マインドフルネスという瞑想法や、副交感神経の働きを活性化する自律訓練法、ネガティブになりやすい考え方の癖を治す認知行動療法などを習得することなどが提案されます。音楽や入浴なども楽しみながら取り入れましょう。

 瞑想を習慣としている人は、そうでない人と比べて脳の萎縮が少ないとか、マインドフルネスを元にした訓練を、アルツハイマー病の人が2年間続けたところ、認知機能低下が少なかったといった研究報告があります。

3、 脳への刺激が多い生活を送ることも重要です。脳も筋肉と同じで、普段使わない部位は衰えていきますが、鍛えれば再び回復する可能性があります。新しいことにどんどんチャレンジし、楽しみながら、脳の様々な部位を刺激してゆきましょう。具体的には、文字を読んだり、書いたり(読書や日記など)、絵画を描いたり、楽器を弾いたり、歌ったりすることです。

 他人と交流するのも、脳を刺激する素晴らしい知的活動です。一人暮らしで閉じこもりがちの生活をしていると、コミュニケーションによる脳の刺激が少なくなり、認知症のリスクが高まります。「仕事をやめるとボケる」と言われるのもこのためです。ボランティアや社会活動に参加したり、友人や親族と週1回以上は会いましょう。コロナ禍で人と会えなくなり、認知症リスクが上昇していますので、ZOOMやテレビ電話なども積極的に使いましょう。

4、 短時間睡眠は、認知症になるリスクを高めます。アミロイドβなどの、神経障害物質は、睡眠中に主に排出されます。7~8時間睡眠をとる人と比較した場合、睡眠時間が1時間短いと、脳内にできる隙間が、1年ごとに0.59%拡大して脳が縮んでいき、認知機能は1年ごとに0.67%低下する、と報告されています。

 年をとるに連れて、眠りは浅くなりやすく、睡眠時間も短くなります。質の高い睡眠が取れるよう、工夫しましょう。規則正しい時間に起床し、朝日を浴びましょう。体内時計をリセットし、気持ちよく散歩して、セロトニンを分泌しましょう。そうすれば夜になるとメラトニンに変わって眠りやすくなります。

 日中に少し疲れるくらい身体を動かし、昼寝は30分以内、午後3時までに行いましょう。短時間の昼寝は認知症リスクを下げます。飲酒は少量として、睡眠の質を下げないようにしましょう。寝る少なくとも1時間前からは、部屋は暗めにして、テレビやパソコン、スマホの光は目に入れないようにしましょう。認知機能低下の副作用がある、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は避けましょう。

5、 口腔ケアも重要です。歯周病菌などは、歯茎から直接血管に入ることができるため、脳にも流れてゆき、アルツハイマー病の大きな要因になります。また歯を失い、噛めなくなることも、脳血流を減らし、認知機能の低下を招きます。

 歯磨きは毎食20分後に、念入りに行いましょう。食後すぐは、口内が酸性に傾いて歯が傷つきやすいため、歯磨きに最適なタイミングは20分後です。デンタルフロスなどを使って歯間掃除も行いましょう。朝起きた直後も重要です。寝ている間に、口腔内の細菌は大きく増加します。そのままにすると、体内での炎症の原因となるのです。

6、 毒物への暴露は大きな認知症の原因です。食事からの毒物以外にも注意が必要です。環境の中のカビも、アルツハイマー病の発症と大きく関係していることがわかっています。空中に漂うカビの胞子を鼻から吸い込んでしまうと、脳を直撃する恐れがあるのです。家や車の中で繁殖しやすいクロカビは、有害とされています。日頃から自宅や車などの、こまめな掃除や通気を心がけ、しっかりカビ対策しましょう。

 沢山あって、全てをクリアするのはなかなか難しいかもしれませんね。本にはもっとたくさんの項目が書いてあるので、興味のある方は読んでみてくださいね。ちょっと難しめですが、認知症予防の教科書のような本だと思います。

 蒼野自身の課題としては、まだ瞑想は取り入れられていませんし、自宅のカビ掃除にも積極的には関わっていません。しかし運動やストレス、脳トレ、睡眠、歯磨きなどは概ねできているかなと思っています。

 繰り返しになりますが、認知症予防の生活は、健康長寿につながる生活です。一つでも多く、習慣にして、無意識にできるようになることが重要です。一生明晰な頭脳で、楽しい日々を生きていきましょうね!

参考書籍: アルツハイマー病 真実と終焉   デール・ブレデセン