新しいダイエット!? 動いて冷やすと脂肪は燃える!

2023/05/28

 体重を減らすのに基礎代謝の影響が大きいということを聞いたことがありますよね? 加齢と共に落ちてゆく基礎代謝のため、ついつい若い頃と同じように食べていると太ってしまう現象が、中年太りと言われるものになります。理論的には、基礎代謝を上げれば、いっぱい食べても、太りにくくなる訳です。今日は基礎代謝を上げてくれる”脂肪”の話を書こうと思います。

 痩せる脂肪細胞、それは褐色脂肪細胞です。体内の温度を保てるかどうかは、人間が生きてゆく上での生命線です。中核体温(深部体温)が一定の温度内に保たれていないと、体内の代謝酵素が働けなくなり、免疫力が落ちたり、必要な反応が起こらなくなったりして、生命活動自体に影響が出てしまうからです。高熱も低体温も続くと命に関わります。

 寒い時に皆様は、どうしておられるでしょうか?手を擦り合わせたり、足踏みをしたり、ブルブル震えたり、おしくらまんじゅうをしたりしますよね。これらは全て褐色脂肪細胞を活性化することにつながります。褐色脂肪細胞はエネルギーを熱に変換する能力があり、筋肉と共に熱を産生して、寒いときの体温維持装置の一つになっているのです。

 人間ではまだあまり動けない赤ちゃんの時に、最も褐色脂肪細胞が多いことがわかっています。大人になるにつれて減ってゆくのが観察されます。成人の褐色脂肪細胞の保有は、個人差があり、痩せている人のほうが、 体重の重い人より多く持っているということが分かってきました。褐色脂肪細胞が多く残っていたり、活性化させたりすることができれば、体温が上がり、代謝が上がって、痩せやすくなりそうだなと蒼野は感じます。

 体内での最大の発熱組織は筋肉です。激しい運動をしたら暑くなりますよね!筋肉を動かすと、筋肉細胞からマイオカインという物質が分泌されます。その中のイリシンという物質は、褐色脂肪細胞に働いて、活性化させ、熱産生を促すのです。よく考えると運動して暑いのにさらに、熱産生するのは道理に合わない感じがしますよね。

 実はイリシンは”震え”の時にも分泌され、体温を上げる作用があるのです。寒さの中で、15分間ガタガタ震えるだけで、1時間運動したのと同じだけの代謝効果がある1)というのは驚きました。その時にイリシンが働き、残っている褐色脂肪細胞で熱を発生させ、同時に皮下脂肪などの白色脂肪細胞を、ベージュ脂肪細胞に変化させます。ベージュ脂肪細胞は褐色脂肪細胞と同じ様に働き、熱を産生してくれるのです。

 まだ研究課題は残っている様ですが、イリシンを多く分泌させる生活を送れば、褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞が活性化して、代謝が上がり痩せやすくなるのではないかと考えられています。もしかしたら糖尿病、肥満、脂肪肝などの治療にも寄与するかもしれません。もともと太りやすい人と、痩せやすい人というのは遺伝的な違いもあるため、確定的なデータはまだ出ておりません。

 まずは王道である運動ですね! 筋肉を動かせばイリシンは分泌されるので、続けることで、褐色脂肪細胞が残っていない人でも、お腹周りなどの白色脂肪細胞が、熱を産生し、代謝を上げてくれるベージュ脂肪細胞に変わり、どんどん痩せやすくなるはずです。筋肉が増加すれば、それだけ基礎代謝は上がりますし、運動で全身の血液循環が改善すれば、全身の臓器や組織への、栄養と酸素の運搬が増えるため、代謝が上がります。トリプル効果で痩せやすくなるのです。

 体温が上がりやすくなって、免疫力も上がり、代謝が上がって、痩せやすくなります。もちろん運動すればカロリーを消費しますが、それは微々たるものです。本当の痩せる効果は、基礎代謝を様々なメカニズムで上げてくれることで、食べても太りにくくなるということなのです。冷え性と感じている人は、まずは運動からがオススメです。

 夏よりも冬の方がダイエットに向いているというのは真実です。熱の産生が余計に必要になるため、基礎代謝が上がりやすくなるからです。とすれば寒い所に行ったり、住んだりするのは、どうでしょうか? しょっちゅう震えていれば、ベージュ脂肪細胞が増えて、代謝が上がりそうです。しかし、我々の身体の環境適応能力は素晴らしく、寒冷地や冬季には、脂肪を溜め込んだり、余計に食べたりする別の要素が入るため、それほど上手くはいかない様です。

 しかし寒冷刺激自体は、腹部や大腿部のベージュ脂肪細胞を増やしたり、残っている褐色脂肪細胞を刺激したりするため、ダイエットにも、健康のためにも良い可能性があります。蒼野が去年の秋から行っている冷水シャワーですが、今も続けています。今の時期になると震えるほど冷たくはなく、ちょっと物足りないのですが、朝目が覚めて、シャキッとするのには有効です。

 サウナの水風呂も気持ち良いですよね!水風呂を出て休んでいるときの感覚は最高です。まさに整う感じがします。もちろん心臓が悪い人や、冷たいのが嫌いな人にはオススメはしません。その辺も多様性があって然るべきだと思っています。寒冷刺激だけで痩せたという論文は見当たりませんでした。しかし肥満になっている人は、褐色脂肪細胞の活動が低下しているという論文は散見されました2)。

 まだあまり一般化はされていませんが、短時間の超低温環境に入って治療を行う全身冷凍療法(クライオセラピー)は、主にスポーツ後の抗炎症、鎮痛、抗酸化作用などに用いられています。ピッチャーが登板後に肩から腕を冷やすのもこの理論の応用です。2010年からのレビュー論文では、脂肪細胞の代謝を上げることで、肥満や2型糖尿病といった代謝疾患に対する治療戦略の可能性が示唆されています3)。

 最後は食べ物です。カプサイシンなどのカプシノイドは、褐色脂肪組織(BAT)の熱生成と全身のエネルギー消費を活性化することで知られています。燃焼系サプリというのはこのカテゴリーですね。20~32歳の健康な男性18人を軽装で19°Cの寒冷条件下で2時間過ごしてもらい、FDG-PETで褐色脂肪細胞の活性度と基礎代謝を観察しました。

 すると活性化していたのは10人、8人の画像は変わりませんでした。つまり10人には褐色脂肪細胞が残っており、8人にはあまり残っていないことはわかりました。その後27度の環境に入ってカプシノイドを摂取すると、10人では基礎代謝が大幅に上昇し、8人ではあまり変わりませんでした4)。

 つまり、代謝を良くする食べ物だけでは基礎代謝は変わらず、褐色脂肪細胞が残っている痩せた人や、運動でベージュ脂肪細胞を増やした人なら、ダイエットに有効かもということなのでしょうね。褐色脂肪細胞を刺激するカフェインや茶カテキン、オリーブオイルなどの作用も、褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞があって初めて発揮されるものだと考えます。現時点では、やはり好きなものを思い切り食べるためには、『運動しかない』ということなのでしょうね! 

 運動と寒冷刺激が習慣になり、七味やラー油やオリーブオイルが好きで、緑茶とコーヒーをガブガブ飲んでいる蒼野は、やはり”筋金入りの健康オタク”というのが、今日のブログの結論になってしまいましたとさ!

参考文献:

1)Irisin and FGF21 Are Cold-Induced Endocrine Activators of Brown Fat Function in Humans. ; Cell Metabolism. 19 (2) 2014 302-309

2)Brown Adipose Tissue in Morbidly Obese Subjects, ; PLOS ONE February 24, 2011
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0017247

3)Whole-Body Cryotherapy in Athletes: From Therapy to Stimulation. An Updated Review of the Literature. ; Frontiers in Physiology Volume 8 – 2017 | https://doi.org/10.3389/fphys.2017.00258

4)Nonpungent capsaicin analogs (capsinoids) increase energy expenditure through the activation of brown adipose tissue in humans. ; American Journal of Clinical Nutrition, 95(4), 2012 845-850.

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