今日は、『酸化』と共に、現代人の病気や老化に深く関わっている『糖化』について、知識をまとめておきたいと思います。酸化に対しては、人類の身体の中に抗酸化酵素があることを書きました。しかし飢餓の歴史を生きてきた人類にとって、糖化はここ100年余りで出てきた、解決が難しい、新しい問題なのです。
人類の身体は、まだ糖化に対する解決法を持っていません。糖化の知識を持って、生活習慣をコントロールしなければ、病的老化を早め、気が付いた時には、生活習慣病、動脈硬化、骨粗鬆症、白内障、アルツハイマー病など、ありとあらゆる慢性病が進行してしまっている状態になりやすいのです。
さて、糖化とはどうゆうものなのでしょうか? 活性酸素による酸化が「体のサビ」と言われるのに対して、糖化は「体のコゲ」とも呼ばれています。糖化は、食事などから摂った余分な糖質が、体内のたんぱく質などと結びついて、細胞などを劣化させる現象です。糖質とタンパク質が結合して、AGEs(糖化最終生成物)に変化することで、多くの現代病を引き起こします。
抗酸化酵素の主成分もタンパク質です。糖化によって抗酸化酵素も、能力を発揮できない状態になってしまいます。活性酸素を防御する機能が低下し、身体のさまざまな場所でおきる酸化のダメージを助長します。両者がそろうことで、病的老化、慢性病発症リスクは、5倍にも10倍にもなると言われています。
もちろん糖質は、身体にとって貴重で、必要な栄養素ですし、皆様も大好きだと思います。元々糖質は、人類の生活に、ごくわずかしかなかった物質であり、血糖を上げるほどの量を摂取することはできませんでした。そのため、人類は糖化を引き起こす、高濃度のブドウ糖や果糖を、毒物として認識できないのです。
ヒトの脳のA10神経は、正常範囲内の血中ブドウ糖には反応しませんが、食後の高血糖には反応して、快楽物質であるドーパミンを分泌します。糖質を沢山摂ると、幸せな気分になるのです。甘いものや小麦、白米は、麻薬と同等の中毒性があり、糖質依存になるように、私たちの体はできているということになります。
だからこそ、人類は糖質が手に入らなかった時代には、糖質にありつくと、無理をしてでも食べ尽くすように本能が命令します。食後のスイーツが別腹なのはそのためです。20世紀になってから、小麦や米などの精製穀物を、普通に全員が食べられるようになり、20世紀後半から、異性化糖が登場し、食後の血糖値は、急上昇するようになりました。現代は幸せを感じる食べ物を、好きなだけ食べれる時代となったために、糖化と肥満が進む世の中になっています。
異性化糖とは、果糖+ブドウ糖を主成分とする糖で、芋やとうもろこしから作ります。中でも果糖ブドウ糖液糖や高果糖液糖などは、砂糖よりも価格が安いため、市販のジュースなどの清涼飲料水、スポーツドリンク、ドレッシング、焼き肉のたれなど、私たちの身近にある多く食品の、ほとんどに配合されています。果糖はブドウ糖の10倍以上も糖化を進め、肥満の原因にもなるのです。
こうして摂りすぎて余ってしまった糖がAGEsに変化します。これは、体内で分解されにくく、蓄積することで、私たちの体の60兆個の細胞内にある、老化を促進する遺伝子のスイッチをオンにしてゆきます。病的な老化を助長してしまう、もっとも大きな危険因子のひとつが糖化なのです。
まずは見た目の変化からお話しします。体内のタンパク質の約30%を占めているコラーゲンに糖化が起こると、皮膚の真皮層の約70%を占めるコラーゲンにAGE架橋ができ、皮膚はカチカチになってハリを失い、シワやたるみ、くすみ、シミの原因になります。
頭皮の真皮層でAGE架橋が起これば、抜け毛、切れ毛、白髪も多くなるのです。カルシウムとコラーゲンでできている骨組織に糖化が起こると、コラーゲン繊維にAGE架橋ができて、脆くなり骨粗鬆症が進みます。糖化によってコラーゲンの合成を妨げる酵素(コラゲナーゼ)が活性化されるため、修復は難しくなります。
血管の組織に、AGE架橋ができると、血管がかたくなり弾力性が失われ、動脈硬化が進みます。心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが上昇するのです。腎血管が傷害されると、老廃物のフィルター機能が傷害され、尿タンパクが出始め、腎機能も低下してくるのです。
水晶体を構成するクリスタリンというタンパク質が、糖化してAGEがたまると白内障の原因になります。
高血糖状態が続き、脂肪の貯蔵庫である肝臓に中性脂肪がたまると、非アルコール性脂肪肝となります。AGEの蓄積が原因の1つと言われており、蒼野の外来でも、採血で高中性脂肪血症+γGTP高値を示す、少し過体重の方はよく見かけます。
脳内に老人斑と呼ばれる、βーアミロイドの集合体ができるアルツハイマー病ですが、その老人斑からAGEが大量に検出されています。リコード法の所でも書きましたが、糖質の過剰摂取は認知症リスクを跳ね上げます。
もちろん、日本人に予備軍も含めて2000万人いると言われる糖尿病では、AGEが体内に蓄積されやすく、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症 糖尿病性腎症などの合併症の確率が上昇し、下肢切断や失明、透析などに繋がりやすくなるのです。
さて、本当に恐ろしい糖化ですが、今自分に糖化が起こっているかどうか、簡単に分かる方法があります。「食後2時間ぐらいで空腹感を感じる」かどうかです!これはインスリンの大量分泌をもたらすような、食事の仕方を示し、糖化の危険信号なのです。
通常、食後30分ほどで、次第に血糖値が上がり始め、インスリンが分泌されますが、過剰に糖質を摂取すると、急激な高血糖に対してインスリンが過剰に分泌されてしまいます。その結果、2時間後には、血糖値が急に下がり始めて低血糖となり、空腹感が刺激されてしまうのです。
ここで甘いお菓子や、手軽な菓子パンやスナックなどのジャンクフードなどに手を出すのは最悪の選択です。血糖値は再び急上昇し、AGEsを絶え間なく製造することになってしまうのです。血糖の乱高下からインスリン抵抗性も上昇し、糖尿病をはじめとする様々な生活習慣病にまっしぐらです。
もっとマイルドなサインとしては、「食後2時間ぐらいで眠気を感じる」です。これも、同じ理由で、低血糖になると眠たくなるのです。お昼過ぎに眠くなるのは、お昼に糖質を取り過ぎている可能性が高いです。蒼野も、お昼過ぎには起きているのが大変でしたが、糖質制限をするようになってから、昼からもバリバリ仕事ができるようになりました。
現代社会で、普通に食べていると、糖化は避けては通れない問題であることが分かっていただけたでしょうか? 次回は糖化を起こしにくい生活習慣に関してお伝えしたいと思います。頭では分かっていても、スイーツや、どんぶりご飯が大好きな蒼野でした。
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