慢性炎症

2022/01/06

 そろそろオミクロン株による、第6波が始まりましたね。酸化、糖化と考えてきて、今日はいよいよ、日本人の死因のほとんどに関与している、慢性炎症について考えたいと思います。

 新型コロナウイルス感染症で、重症化する人は、高血圧、糖尿病を持つ肥満の人が、圧倒的な割合を占めます。免疫力が低い上に、免疫システムが暴走しやすい状態にあるからです。慢性炎症が、免疫機能の異常を起こします。その根源にあるのが、内臓脂肪の蓄積です。

 欧米諸国と比べて、日本人は新型コロナウイルスの、患者数や、死亡者数が少ない、と感じられます。これは国民の肥満率に関係があるのではないかと言われています。BMIが35~40の人は、肥満のない人に比べ、新型コロナによる死亡リスクが40%増加します。BMIが40を超える人では、死亡リスクが90%増加するのです。

 アメリカ人の肥満率(BMI30以上)は、2021年で42%、イギリスは31%と深刻な状況です。一方日本は14%ですが、上昇傾向にあるのは変わりません。有効な対策が立てられなければ、2025年までに世界の成人の5人に1人が肥満になる可能性があります。うち3分の1はBMIが35以上で、医学的な介入が必要になるとされています。

 肥満は、現代病の代表的なものと考えられます。『太っているけど、元気です』と思っている人は沢山おられると思います。しかし健康長寿を考える上では、内臓脂肪がついている時点で、何らかの健康異常が生じていることは、認識しておく必要があります。

 メタボリックシンドロームについては、皆様ご存知のことと思います。肥満になると、血圧が上昇したり、糖尿の傾向が出てきたり、コレステロールが高くなったりします。人によって見える症状は様々なのですが、氷山の一角が見えているだけで、海の中では、目に見えない身体の異変、慢性炎症が、徐々に進行しています。それがある限度を超えると、メタボリックドミノと呼ばれる状態につながり、各種臓器の病気やがん、認知症などが、一気に表面化してくるのです。

 原始人には、肥満した人はいませんでした。現代においても、狩猟採集生活をしている少数民族の研究で、肥満を始めとして、糖尿病や認知症、がんなどは認められないのです。生活習慣病と言われる現代は、原始時代と何が変わってしまったのでしょうか?

 原始時代の生活と現代の生活を比較してみると、大雑把には次のようになります。
1:多すぎるもの → 
        摂取カロリー、精製食品、塩分、酒、煙草、食品内の化学物質、ストレスなど
2:少なすぎるもの → 睡眠、運動、食物繊維、自然環境など
3:新しすぎるもの → 加工食品、人工照明、インターネット(デジタル機器)など
今までも何度も書いてきたのですが、我々の遺伝子は、原始時代と比べてほとんど変わっていないのに、これらの変化は、ここ数十年の激変なのです。

 原始時代の炎症は、細菌感染や火傷や怪我などによる、組織の傷害に反応して、体内の免疫系が反応し、身体の一部に発赤・腫脹・灼熱・疼痛などを起こすことでした。生き延びるために必要な生体の防御反応であり、慢性化することはありませんでした。その反応が現代では、激変した生活習慣に対して、慢性的に免疫系が反応し、身体のあちこちでくすぶることで、組織や臓器が傷害されていくのです。

 現代生活で増えやすい脂肪組織は、脂肪を蓄積するだけではなく、重要な内分泌器官です。脂肪細胞からはアディポカインと呼ばれる生理活性物質が分泌されています。インスリン感受性を高め、血圧を下げて、炎症を抑えるアディポネクチンや、食欲を抑えるレプチン、インスリン抵抗性を高め、炎症を惹起するTNF-α (t腫瘍壊死因子)、血圧を上昇させるアンギオテンシノーゲンなどです。

 内臓脂肪が溜まると、アディポネクチンの分泌は低下し、レプチンが多くなりすぎて、満腹を感じなくなり(レプチン抵抗性)、TNF-α やアンギオテンシノーゲンが増えて、血圧が上昇し、インスリン抵抗性が増して、糖尿病や高脂血症を引き起こし、慢性炎症を引き起こすのです。

 慢性炎症は「万病のもと」であり、放置すると、老化が進行し、寿命が縮まります。しかし現代の医学では、慢性炎症そのものを治癒する特効薬は存在しません。そのため、しっかりと予防をすることが最も大事なことになるのです。

 糖化によるAGEsも、炎症を引き起こします。酸化による活性酸素も、炎症を引き起こします。逆に言えば、糖化や酸化を予防する生活を徹底すれば、慢性炎症を防ぐことができ、慢性炎症が引き起こす、がん、肥満、糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞、肝炎・肝硬変、関節リウマチ、認知症、うつ病などの、様々な病気を遠ざけることができるのです。

 慢性炎症の、最初の入り口は肥満です。レプチン抵抗性やインスリン抵抗性がある状態では痩せられません。どちらも改善してくれるファスティングを、生活習慣に取り入れましょう。カロリー制限や、糖質制限、運動だけでは、常にリバウンドリスクがつきまとい、強い意志を持ち続けなければ、体重のキープができません。脂肪細胞を元の大きさに戻して、異常な生理活性物質の分泌を元の状態に戻しましょう。

 直接的に炎症を起こすものの摂取を減らしましょう。タバコや、適量以上のアルコール、腸に穴を空けて、血管内に炎症を広げる小麦のグルテンや乳製品のカゼイン、加工食品で使われている様々な化学物質、体内で炎症の元になるオメガ6脂肪酸、トランス脂肪酸、酸化脂肪、AGEsが多く含まれる香ばしい食べ物。血糖を乱高下させて、炎症を起こすスイーツや甘い飲み物などになります。全てをカットすることは、蒼野も無理だと思うので、少しでも減らすことや、一緒に炎症を改善するものを摂ることを意識しましょう。

 逆に炎症を抑えてくれる食べ物は、魚(養殖でないもの)などのオメガ3脂肪酸、野菜や果物の抗酸化物質、ビタミン、ミネラルです。そして食物繊維や発酵食品は、腸内細菌叢を改善し、腸内の炎症を抑えてくれます。自然の中で育った牛や豚や鶏(穀物飼料でないもの、グラスフェッド)の肉や脂。グラスフェッドのバターやギー、オリーブオイル、ココナッツオイル、ナッツやダークチョコレートなどもお勧めです。

 口腔内のメンテナンスを行い、歯周病を防ぎましょう。歯周病で賛成される炎症性サイトカインは全身の炎症を惹起します。運動すると、筋肉からマイオカインという筋肉の炎症を抑える物質が、分泌されます。しかし逆に、1時間以上のきつい運動を行うと、免疫機能障害が数日間続きます。激しい運動ならHIITがお勧めです。健康のための運動であれば、短時間の筋トレと30分の歩行で十分です。

 ストレスと、うまく付き合いましょう。瞑想や、自然環境を生活の中に取り入れ、気持ちよく運動しましょう。良い睡眠も必須です。照明やデジタル機器は使用時間をコントロールして、睡眠を妨げないようにしましょう。体内時計が狂わないように、毎日6~8時間の睡眠が必要です。

 急激に変化した、現代生活とうまく付き合ってゆくことは、誰にとっても難しい課題です。肥満率の増加を見ても、全世界共通の問題であると思います。一時的に痩せることではなく、リバウンドしない、一生続けられるダイエットが必要です。

 自分に合った方法を、いろいろと試してみましょう。死ぬまで元気で、やりたい事が出来る人生を全うするために、これからも、一緒に考えてゆきましょうね。

参考書籍: 食べても太らず免疫力がつく食事法  石黒 成治

      最高の体調    鈴木 祐

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