今日はストレスに対抗する脳内伝達物質であるセロトニンについて、深堀したいと思います。調べていると、複雑すぎることと、まだよく分かっていない事が混在していて、蒼野の頭では、全てを上手く説明出来ないのですが、自分で理解できた事について書いてみたいと思います。
セロトニンは「幸せホルモン」と言うイメージですよね。不足すると、不幸せになる、気分が落ち込む、鬱々するといった印象を蒼野は抱いていました。であるとするならば「増やせば良い」と単純に思いますが、やはり身体は複雑で、ブラックボックスの様です。
『過ぎたるは及ばざるが如し』と言うのは身体の中で起こる反応にもよく当てはまります。セロトニンが急激に増加すると、「セロトニン症候群」と言う状態になることがあります。これはセロトニンに関係する薬(抗うつ剤など)の副作用として知られており、興奮、混乱、不安やイライラ、発汗し発熱し、下痢になり脈が早まります。身体が硬くなり、震えたり、ピクピク勝手に動いたりするのです。
蒼野も入院患者様の鬱がひどいときに使った薬(SSRI)で、経験したことがあります。すぐに薬をやめれば症状は消えますが、続けていると命に関わることもある病態です。薬だけではなく、違法薬物のMDMA(エクスタシー)や、抗うつ薬内服中に、ハーブのセントジョーンズ・ワート、処方や注射による鎮痛剤や鎮咳剤のデキストロメトルファンを併用すると生じることもあるようです。
これはセロトニンが、情動だけではなく、睡眠,摂食,運動,体温な ど様々な神経機能の調節に関与している神経伝達物質だからです。セロトニンは脳幹部の縫線核という部位で作られ、脳や脊髄の様々な部位に影響を及ぼします。その受容体は15種類以上もあるのです。そのため薬剤などで急激にセロトニン濃度が高まると、副作用としてセロトニン症候群が出てきて、様々な症状を呈します。
現代人は、急速に変化した現代環境に対応できる遺伝子変化は起こせていません。様々なストレスがあると、それに対応してストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されます。コルチゾールはセロトニン受容体の感受性を低下させたり、セロトニンの再取り込みを加速させて、脳内のセロトニンの働きを低下させる状態が長く続きます。
うつ病のメカニズムはまだ解明されていませんが、まず遺伝的要因があり、ストレスや心的外傷、加齢などによるホルモンや体調の変化、様々な病気や薬物やアルコールなどの生活習慣、慢性炎症、脳損傷や医薬品などが影響を与え、発症するのではないかと言われています。その際に、コルチゾールの慢性的な分泌から、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質のバランスが崩れ、気分や感情に影響するとされています。また神経細胞自体(海馬など)の損傷が生じていることも分かっています。
うつ病の人ではしばしば脳内のセロトニンの働きが悪くなっています。セロトニンが低下すると不安や悲しみ、無気力や睡眠障害が出てきます。そこでうつ病に薬である、セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を投与すると、脳内のセロトニン濃度が高まり、全員では無いのですが、うつ病の症状が軽減しやすくなります。しかしこれは対症療法に過ぎません。環境や生活が変わらなければ、薬をやめると、症状は増悪してしまうことが多いのです。
以前のブログで書いたように、日本人はセロトニントランスポーター(再取り込みする様セロトニンを運ぶ運搬体)が少ない遺伝子を持つ人が多い民族です。日頃からセロトニンが再取り込みされずに、シナプスでのセロトニン濃度が上がりやすいのです。
「セロトニンが上がると良いのでは?」と思われる方もおられると思うのですが、日常的にシナプス間のセロトニンが高い状態だと、ダウンレギュレーションと言って、身体はそれに対応するために、セロトニン受容体の数を減らしてしまうのです。ですからストレスを緩和するためにセロトニンが出てきても、受容体の数が少ない人では、セロトニンが上手く働きません。
つまりセロトニントランスポーターが少ない遺伝子の人は、ストレスに上手く対応ができません。セロトニンのリサイクルが上手くいかず、ストレス時にしっかり増やすこともできにくいのです。その上受容体の数が減っていて、セロトニンが働きにくい状態ですので、ストレスに対して、過敏で、繊細な人が多いのでは無いかと考えられます。これはうつ病の一つのリスクです。
身体は常にバランスをとる様に反応することが多いのです。セロトニンが多いと、その受容体は減り、セロトニンが少ないと受容体が増えたりします。大事なのは、日頃からストレス時に対応して、十分にセロトニンを含む神経伝達物質の、バランスが取れる状態にしておく事が重要なのです。前回のブログで書いた、ストレスに強くなる食べ物はこのバランス力アップに繋がります。
それ以外の、ストレスに対応して、脳内の伝達物質のバランスを保つための生活習慣は、尊敬する樺沢紫苑先生が、いつも口にしている、『睡眠、運動、朝散歩』です。それぞれとセロトニンの関係について説明します。
セロトニンが作られる脳幹部縫線核というのは、覚醒状態を維持し、睡眠周期のコントロールに関与しています。セロトニンは夜になるとメラトニンに変化し、我々は眠くなります。夜はしっかり眠り、毎日お日様に合わせて、一定のリズムで生活する事により、ストレスを受けやすい日中のセロトニンは高く、夜はメラトニンの作用でぐっすり眠れるのです。規則正しく、十分に眠る事で、セロトニンを始めとする、脳内伝達物質はバランスよく働くことが出来ます。
セロトニンはリズム運動でも、その分泌が促されます。リズムのある歩行や呼吸、咀嚼などがそれに当たります。うつ状態になると、しんどくて運動なんか出来ないという人は多いです。しかし一時的には薬の助けを借り、簡単なリズム運動から始めることが重要です。セロトニンが必要に応じて出せる様になると、脳内伝達物質のバランスが回復します。
朝散歩は睡眠の要素も、運動の要素も含んでおり、本当に良い方法です。太陽の光を浴びて、目から光を入れ、脳内の時計遺伝子を刺激すると、セロトニン神経も朝を感じて活動を開始します。夜もブルーライト(太陽光と同じ光)に溢れた現代社会では、デジタルデバイスや夜の光の使い方を工夫しなければ、セロトニンのリズムが保たれにくいのです。
夜はなるべくブルーライトを目に入れないことが重要です。メラトニン分泌がストップし、よく朝のセロトニン分泌に影響が出ます。スクリーンタイムが増えることで、現代人の運動する時間も減っています。朝散歩を習慣にするだけで、セロトニン周期、脳内伝達物質のバランスを保つことになるのです。
オキシトシン(愛情ホルモン)は、セロトニン分泌を促してくれる作用を持っています。セロトニン神経に、オキシトシンの受容体があるからです。ペットや誰かと触れ合ったり、誰かとコミュニケーションを通わせたりすることで、オキシトシンが分泌され、セロトニン濃度が上がります。鬱々している時には、一人で居ないで誰かに相談するのが重要であるのは、脳内伝達物質のバランスを整える作用があるからです。
身体には沢山のホルモンや伝達物質があって、複雑に絡み合っています。そしていまだにその全容は明らかにはなっていません。ただ一つ言えるのは、そのバランスが崩れ続けると、精神的にも身体的にも、人は不調になってゆくという事です。今日はセロトニンに注目してみましたが、やっぱり身体はブラックボックスだなあと思いました。
理屈は分からなくても、サバンナで暮らしていた頃のリズムや活動で、進化して、生き残ってきたのが我々です。昼夜逆転の生活や、座りっぱなしの生活、孤独な生活が増えている現代では、意識して生活を送らなければ、心身の不調が出てくるのが、当たり前だと思います。蒼野は毎日『睡眠、運動、朝散歩』を意識し、犬を可愛がり、いっぱいおしゃべりして、気持ちよく生活しています。皆様も是非取り組んでみて欲しいと思います。
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