蒼野は休みの日に自宅に居る時には、必ず愛犬と散歩に行きます。散歩の際には、なぜか緑のある公園や、丘に行くことが多いです。アスファルトの上を歩くだけでは、何か物足りないのです。緑の中で走るとワンコも本当に嬉しそうな顔をします。それを見ると蒼野も幸せな気持ちになるのです。今日は自然の健康効果について、深堀したいと思います。
現代人の遺伝子は、現代の急速な環境変化に対応できていません。人類の進化過程の大部分は、自然の中で起こってきたものなのです。人類が自然の中にある音や光や色、匂いにうまく適応するように出来ているのは当たり前かも知れませんね。しかし忙しい現代人の都会生活の環境には、自然の要素は極端に減っているように感じます。
様々な研究によって、自然環境が人間の健康に大きな利益をもたらすという結果が得られています。そのメカニズムにはストレスが大きく関わっています。2021年のメタ分析でも、31の研究の1842名の検討で、自然に触れることで、唾液中のストレスホルモンが減少し、不安が減り、血圧と心拍数が下がり、自覚的なストレスも改善することがわかりました1)。
自然は人類の自律神経の働きを整えてくれるのですね!日々のストレスで、交感神経優位となった我々の体に働きかけ、副交感神経を活性化して、溜まった疲れや、ダメージを回復してくれる働きがあるのです。長く自然の中で生き延びてきた人間は、自然に触れると、体も心も整う遺伝子を残してきていると言えるのです。
個別にみてみましょう。まず音については、自然の音には1/fゆらぎというリズムが入っています。これは実は神経細胞のリズムと一緒であることが分かってきました。自然の中に入り、聞こえる音と同期することで、外界の1/fゆらぎを感知し、生体リズムが整い、自律神経や精神状態が安定し、元気になるというメカニズムがあるのです。
また少し前のブログで取り上げた、ガンマ波=40Hzの音や光は、川のせせらぎや、森林の中で聞こえる音、落ち葉を踏みしめる音や、木漏れ日の煌めきなどの中に含まれています。これは人間の集中力などのパフォーマンスを上げ、認知機能を高めてくれる不思議な作用があることは、前回書きました。
自然光、つまり太陽の光は、体内時計と密接に関わっています。体内時計に従って、人間は昼は交感神経優位、夜は副交感神経優位とバランスを取っています。ビルの中の窓が無い環境、夜になってもブルーライトを浴びる環境では、体内時計は狂いやすく、自律神経のバランスが狂ってしまいます。時間に合わせて変動するホルモンの異常が起これば、体調は狂ってしまいます。
人間は色に敏感に反応することで、食料や水のありかをみつけてきました。自然との繋がりを感じさせる色に囲まれた空間を、心地よいと感じる様に出来ているのです。豊かな自然で見られる色は、綺麗な水や、エネルギーに満ちた植物、果物、花などの色です。人間は緑に囲まれると、心拍や血圧が落ち着き、ストレスが緩和されやすいことが分かっています。
家具や内装の素材としても、大理石、タイル、ステンレス板に比べて、木を使ったものの方が、リラックスするという研究結果が出ています。ヒノキの匂いに代表される木材の匂いは、興奮した前頭前野活動が鎮静化し、副交感神経を優位にしてくれます2)。ヒノキ風呂が気持ちが良いのはこのためですね!
また木を手で触れた感触も、他の建築素材よりも副交感神経活動を亢進させます3)。日本人であれば裸足で触れる縁側や畳の感触も、我々を落ち着けてくれるのでしょうね。面白いことに、壁に使う木材は、木目が横に使われているよりも、縦に使われている方が有意に、副交感神経の亢進が認められました4)。自然に見ることが多い見え方まで、影響に差があるのですね!
また自然が体に良い理由は他にもあります。緑の多い、自然な大気の中には、多くの有用な微生物が漂っています。これを吸い込むことで、腸内細菌の多様性にも繋がり、腸内環境が改善するのです。昔からパワースポットと呼ばれている場所では、なぜか元気になる気がします。特に身体に良い菌が多いのかも知れませんね。
ということで、ストレスが多い現代では、出来るだけ自然を生活の中に取り入れてゆくことが重要になります。しかしながら、近くに自然や公園は無いし、忙しいので行く暇もないよという方は多いかも知れません。そんな方は偽物の自然でも効果はあるようです。取り入れやすいのは、スマホアプリなどの自然音や、部屋に自然の写真を飾ったり、パソコンの壁紙に自然画像を入れることから始めましょう。
窓のある環境も重要です。寝ている間は真っ暗な方が良いのですが、朝はカーテンを開けて、しっかり光をキャッチすることで、体内時計がリセットされます。蒼野は中学3年生で、親の転勤で下宿したのですが、なかなか賄い付きの下宿が無く、最初の下宿は窓のない三畳一間でした。帰るたびに気分が沈んだのを思い出します。
偽物の画像や音も、人類の歴史には無かったものなので、脳は本物か偽物かの判断はできないのです。観葉植物を部屋に持ち込むのも重要です。もちろん窓から、緑が見えたり、海が見えたりするのが理想ですが、モニターで景色を流すだけでも、ただの壁よりも人間は元気になり、パフォーマンスは上昇するのです。
職場環境を整えれば、仕事の効率がアップすることが分かってきて、近年は盛んに応用されています。いわゆる『バイオフィリックデザイン』です。バイオフィリアとは自然を愛する、人間の本能を示す言葉です。本能を満たすように、環境に自然を取り入れれば、ウェルビーイング、つまり幸福や健康に近づくのです。
2015年に発表された47ページに及ぶ、ヒューマンスペース・グローバル・レポートによれば、自然と接触する機会がないオフィスで働く人と比較して、自然と接触する機会が多いオフィスで働く人は、幸福度が15%向上、生産性が6%向上、創造性も15%の向上が見られました。
しかし2015年時点では、世界中のオフィスの47%では、自然光が入らず、58%では植物を置いていないようです。オフィス環境に植物や自然光があることだけで、労働者の幸福度は15%も有意に上昇するのです。同じ勤めるなら、環境の良い綺麗なオフィスで仕事したいですよね!
部屋の色も整えられると良いですね。サバンナでは青は水、緑や深緑は水や植物、赤は果物の色です。人間は深緑や緑、明るい赤を好むのです。黄色や茶色は、土や乾燥したり枯れかかったりしている植物です。職場の色は緑、青、白を中心に、黄色や茶色、赤が少し入ると、やる気や生産性、創造性、幸福度、モチベーションなどのアップに大きく影響します。逆にグレー1色の職場は、これらを低下させ、ストレスが増大するようです。
優秀な人材を確保したい企業は、バイオフィリックデザインを取り入れるべきです。逆に環境が整っていない職場での、体調が悪くなることでの生産性や積極性の低下は、プレゼンティーイズムと呼ばれています。アメリカの試算では、年間の損害額は2,000億ドル超と見積もられています。GoogleやMetaなどの世界のトップ企業はこのことに気付いており、社員のウェルビーイングのための環境整備を行うことで、高い生産性を上げています。
環境って大事ですね。蒼野の職場は殺風景ですし、自宅も借家です。大きな改変はできないため、これからも、朝散歩や犬の散歩で、出来るだけ緑の公園に通いたいなあと思います。寝るときの自然音はアプリで流しています。観葉植物は買いたいなあと思います。部屋の空気も綺麗にしてくれるみたいです。
皆様も定期的に自然環境に入ったり、偽物でも良いので、自然を生活に取り入れて、体調を整えてくださいね!病院の机にサボテンを置こうと思っている蒼野でした。
参照文献:
1)The effect of exposure to the natural environment on stress reduction: A meta-analysis. ; Urban Forestry & Urban Greening 2021. 57 https://doi.org/10.1016/j.ufug.2020.126932
2)Physiological effect of olfactory stimulation by Hinoki cypress (Chamaecyparis obtusa) leaf oil. ; Journal of Physiological Anthropology 2015 34 (44) DOI 10.1186/s40101-015-0082-2
3)Physiological Effects of Touching Wood. ; Int. J. Environ. Res. Public Health 2017, 14(7), 801; https://doi.org/10.3390/ijerph14070801
4)Physiological Effects of Visual Stimulation Using Knotty and Clear Wood Images among Young Women. ; Sustainability 2020, 12(23), 9898; https://doi.org/10.3390/su12239898
参考ページ:世界中の職場におけるバイオフィリックデザインの効果 ヒューマンスペース・グローバル・レポート 2015
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