健康肝臓で元気ハツラツ!

2023/08/09

 今日は患者様の血液検査結果を見ると、本当によく見かける脂肪肝について、まとめておきたいと思います。お酒呑みの男性では必発ですし、お酒を飲まない人でもよく見かけます。肝臓は沈黙の臓器で、脂肪肝になってもほとんど症状は無いため、健康診断で指摘されても、そのまま放置する人が、とても多い疾患です。

 脂肪肝は、毎日の生活で余った糖質や脂質が中性脂肪に変化して、肝臓の細胞の30%以上に溜まったものと定義されています。根本的な原因はカロリーオーバー、食べ過ぎです。アルコール消費量は近年減ってきていますので、非アルコール性の脂肪肝が増えています。蒼野は、手軽に食べられる食品とスイーツ、特に食欲が増すように作られている加工食品が、原因になっているように思います。

 2016年の統計では日本人男性の40.2%と女性の22.8%に軽度の肝機能障害を認め、20年前と比べると10%も増えています。これは脂肪肝が増えているものと考えられます。エストロゲンは内臓脂肪を貯まりにくくするため、脂肪肝は男性と、閉経後の女性で、特に注意が必要な疾患です。

 脂肪肝は肝臓の機能を低下させます。肝臓は働き者で、栄養の代謝、毒物の解毒、免疫という3つの重要な役割があるため、機能が少しずつ低下することは、日々の不調に繋がります。疲れが取れにくくなったり、体や頭が重く、働きにくくなったり、肌の吹き出物が増えたりするのです。

 しかし、これらの症状は、脂肪肝のためだとは思わない人が多いのです。脂肪肝があると、インスリン抵抗性が上昇する事がわかっています。糖のエネルギーが消費されにくくくなり、太りやすくなった上に、エネルギー不足で元気がなくなるのです1)。放置すると、糖尿病をはじめとする生活習慣病につながってゆき、命に関わる疾患のスタートとなる状態なのです。

 過去の常識では、肝臓疾患といえば、アルコールか肝炎ウイルスが原因でした。肝硬変や肝がんの原因の9割を占めていました。しかし現代急増している肝疾患は、脂肪肝がベースとなって生じる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)です。10年後には肝臓病死亡の第一原因となると推測されています。

 お酒と同等のダメージを肝臓に及ぼすのは、精製された糖質です。糖質過多になった現代食では、余剰の糖質は中性脂肪に変化し、脂肪として蓄えられます。特に急激に血糖値が上昇するような、液体の糖質は、肝臓の代謝が間に合わず、そのまま肝臓に脂肪として貯まってしまうのです。

 中でも果糖は、肝臓でしか代謝できないため、ブドウ糖の5倍も肝臓の負担となります。現代の甘い飲み物や、ケチャップやソースなどに含まれる、ブドウ糖果糖液糖は、脂肪肝への特急券です。ジュースのみならず、スポーツドリンクを飲んだり、体に良いと思って、野菜ジュースや乳酸菌飲料を飲むのもNGです。

 果糖が悪いなら果物はどうなのと思われるかもしれませんが、食物繊維と一緒に摂取すれば、ゆっくりと吸収される上、小腸の酵素でブドウ糖に変換されるため、肝臓の負担は軽くなります。もちろん量の問題はあるので、毎日南国のフルーツをお腹いっぱい食べると、小腸で処理できない果糖が、肝臓を痛めつけます。

 りんご一つとっても、丸ごとなら一個食べれば十分ですが、100%ジュースにしたら、一度に四個分くらい、子供だって飲む事ができるという事です。血糖スパイクを作らないような食べ方が、肝臓にも優しいのです。主食も同様で、玄米や全粒粉などの、食物繊維を多く含むものの方が有利です。ベジファーストも良い食べ方になります。

 ざっとした統計では、成人の3人に一人が脂肪肝で、脂肪肝の5人に一人が脂肪肝炎になります。ここまでならまだ元に戻れます。肝臓は再生能力がとても高い臓器なのです。脂肪肝炎患者さんでも、毎日飲んでいた甘い飲み物をやめてもらうだけで、1か月くらいすれば、肝機能は改善します。

 脂肪肝かどうかの数値は、血液検査のALTに注目しましょう。健常者のALTはASTよりも低いのが普通です。ALTは正常範囲の30以下であっても、ASTよりも高い場合、90%以上は脂肪肝になっているのだそうです。もちろんALTが30を超えたり、γGTPが男性50、女性30を超えるような場合には、肝臓はダメージを受けています。

 肝臓の数値が上がったという場合に、ウコンや肝臓エキスを飲んだり、サプリメントを摂ったりする人がいるかも知れません。しかしこれもNGです。日本肝臓学会の調査では、薬物等による肝臓障害で第一位になったのは、ウコンだったのです。ウコンに含まれる鉄分は肝炎を悪化させる事があるのです。

 シジミやレバーにも鉄分が豊富に含まれています。ヘパリーゼなどの肝臓エキスも、糖質が多く、科学的に肝臓に効くというエビデンスはありません。内服薬が多いのも問題です。薬物の代謝に肝臓が関わっていることは多く、負荷が多くなれば、脂肪肝や脂肪肝炎が悪化するのです。肝臓を良くするには、何かを入れるのではなく、負担を軽くすることしかありません。

 肝臓に最も効くものは、ズバリ筋肉です。筋肉は糖質をグリコーゲンとして貯蔵できる、最大の糖質貯蔵庫です。筋肉を増やせば、糖質は内臓脂肪に変わりにくくなります。軽度の脂肪肝の段階では、卵や鳥の胸肉、大豆製品や魚などの良質なタンパク質をしっかり摂取し、筋トレするのが一番の肝臓の薬なのです。

 有酸素運動でも脂肪肝は改善します。筑波大学の研究では、肥満男性169人を対象に、週250分以上の中高強度の運動、つまり1日30分で5日間、早足で歩いていると、内臓脂肪が減る事が確認されています2)。

 もちろんアルコールは、脂肪肝の大きな原因です。毎日晩酌する人では、90%以上が脂肪肝を抱えています。アルコールは直接は脂肪にはなりませんが、カロリーですので、体脂肪がエネルギーとして使われなくなる上、一緒に食べた糖質や脂質は、全て脂肪に変えてしまう作用があるのです。

 飲酒後のラーメンは美味しいですが、アルコールの処理と、エネルギーの処理で、肝臓を鞭打つ行為なのです。肝臓の再生能力は高いのですが、連続攻撃には弱いのです。肝臓の再生には最低でも48時間はかかるため、休肝日を作ることがポイントになります。48時間経たずに、アルコールの負荷をかけていると、肝臓が繊維化してゆき、元に戻らなくなります。やがては肝硬変→肝がんへと命に関わる病気へと進行するリスクが高くなるのです。

 アルコール歴が長い人は、多かれ少なかれ、アルコール依存が生まれています。ですから最近の肝臓学会では、禁酒よりも減酒が提案されるようです。週1の休肝日→慣れてきたら二日に1回の飲酒で肝硬変を防ぐのが目標になります。連続攻撃にならないように飲めば、一生飲むことも可能になるということです。

 アルコール量日記を記録すると、モチベーションが続きやすくなります。純アルコールの計算は、度数×量×0.8です。5%のビール、500mlで0.05×500×0.8で20gになります。『減酒にっき』というアプリが便利です。必ず肝臓が悪くなる量は、男性60g/日、女性40g/日以上の時です。

 男性は30代、女性は閉経後に脂肪肝が増えてくるため、この年代でお酒を飲まれる方は自分の飲酒量を把握しましょう。基本は甘い飲み物を飲まないことと、加工食品を増やさないことです。大事な肝臓が死ぬまで元気に働けるよう、意識してゆきましょう。

 お酒もジュースもやめて、毎日1万歩以上歩くことで、40代の頃よりもやる気が湧いて、体調が良いと実感している蒼野でした。

参考文献:
1)Ectopic Fat Accumulation and Distant Organ-Specific Insulin Resistance in Japanese People with Nonalcoholic Fatty Liver Disease. ; PLOS ONE 2014  https://doi.org/10.1371/journal.pone.0092170

2)Moderate to vigorous physical activity volume is an important factor for managing nonalcoholic fatty liver disease: A retrospective study. ; HEPATOLOGY 2014 https://doi.org/10.1002/hep.27544

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