今日は真面目な健康情報の話題です。現代生活で、食べることがとても多くなった超加工食品と病気や死亡率の関係に関する研究が次々に発表されています。便利で手軽で美味しく感じるように作られ、依存しやすい食品ですが、その闇の一面について知っておくのは、健康長寿を目指すために必要なことだと思います。
まず食品ですので、影響が起こりやすいのは腸になります。一つ目は腸の炎症性腸疾患との関係です。潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は、日本でも激増しています。潰瘍性大腸炎は調査が始まった1975年時点で965人でしたが、2020年には約22万人と報告されています。安倍首相も潰瘍性大腸炎でしたよね。
クローン病についても、1976年で128人でしたが、やはり2020年には7万人余りとの報告がなされています。その原因として、食事の影響は大きいと考えられていますが、明らかな因果関係についての報告は未だに限られています。
カナダ・マックマスター大学の研究では、35歳以上の約11万6千例で超加工食品摂取とIBD発症の関連を前向きに評価しています。9.7年間の追跡期間中に、クローン病90例、潰瘍性大腸炎377例の発症が認められました。他の因子を補正しても、超加工食品の摂取量が多いほどIBDの発症リスクが高いことが認められました。
具体的には清涼飲料水、精製甘味料入り食品、塩分の多いスナック菓子、加工肉などの超加工食品のさまざまなサブグループで、IBDのリスク上昇との関連が認められています。1日1サービング未満と比較した場合、1日5サービング以上では1.82倍、同1日1~4サービング場合は1.67倍、発症が多いことが分かりました1)。
ちなみに1サービングというのは、清涼飲料水では355ml、精製甘味料入り食品では、キャンディーなら1~2個、クッキー1~2枚、チョコバーなら40~50gです。ポテトチップスなら15~20枚、プリッツやクラッカーで30g、カップ麺やカップスープは1個分です。加工肉はハムやサラミでは2~3枚、ソーセージは1本(50~100g)です。1日で5サービングというのは意外に食べてしまいやすい量かもしれません。
大腸がんと超加工食品との研究もありました。アメリカで医療従事者の男性4万6,341人、看護師の女性15万9,907人について、食事内容と大腸がんの発症について調べたものです。追跡期間24~28年間に、大腸がん3,216例(男性1,294例、女性1,922例)が報告されました。
超加工食品の摂取量の上位20%の大腸がん発症リスクは、下位20%に比べて、肉/鶏肉/魚介類ベースの調理済み食品を食べる男性で44%上昇し、加糖飲料では21%上昇していました。女性においてはやや関連が薄いものの、レトルトなどの一皿料理の摂取量が多いと、17%発症が多くなっていました2)。女性では、ヨーグルトなどの乳製品ベースのデザートの摂取量が多いと、大腸がんリスクは17%減少していました。
大腸がんだけではなく、他の癌への影響についても報告があがっています。フランスの大規模なコホート研究で、18歳以上の10万4,980例に対して8年間追跡した研究結果によると、超加工食品の摂取量は、全がんリスクの上昇と関連していました。超加工食品の割合が10%増加するごとに、全がんリスクは12%、乳がんリスクは11%有意に上昇していたのです3)。
認知症に関する研究もあります。10年間前向きに、1年あたり71万7,333人を追跡した調査によると、518例が認知症を発症し、うちアルツハイマー型認知症は287例でした。他の因子を調整し検討した結果、超加工食品の摂取量が10%増加した場合に、認知症リスクは25%増えていました。逆に超加工食品の1割を、健康的な身加工食品に置き換えると、認知症リスクは19%低下すると計算されました4)。
最後は全死因死亡と超加工食品の関係です。スペインで行われた20~91歳の1万9,899例を2年ごとにフォローアップした研究です。平均年齢は37.6歳、フォロー期間は10.4年です。超加工食品の平均1日摂取量を、低摂取(1.4サービング)、低~中摂取群(2.7サービング)、中~高摂取群(3.5サービング)、高摂取群(5.3サービング)に分け、いずれも4,975例になるように調整しています。
高摂取群は低摂取群に比べ、平均BMI(23.8)が高く、喫煙者が多く、教育レベルが高い傾向にありました。また間食や1日3時間以上のテレビ視聴の割合が高く、座る時間が長いことが分かりました。食事内容は、ファストフード、揚げ物、加工肉、砂糖入り飲料の摂取量が多く、野菜、果物、オリーブ油、アルコール飲料、総食物繊維の摂取量が少ないことも分かりました。
割合として多く摂取するものから挙げると、加工肉(15%)、砂糖入り飲料(15%)、乳製品(12%)、ポテトフライ(11%)、菓子パンやお菓子(10%)、クッキー(8%)の順でした。そして、超加工食品の高摂取群は、低摂取群に比べ、全死因死亡のハザードが62%有意に高いことが判明しました。癌死は22%増加し、心血管死は116%増えました5)。
超加工食品が1サービング増えるごとに、全死因死亡が相対的に18%有意に増えるという計算になります。蒼野の感想は「やっぱりなあ!」というものです。超加工食品は口には美味しく、食べればお腹は一杯になりますが、人間の本来の遺伝子に合った食べ物では無いのだと思います。
草食動物に肉ばかり食べさせたら、病気になるのと同じです。ホモサピエンスの200万年の歴史のうち199万年食べ続けて生き残ってきた食べ物が、体には一番合っているのだと思います。それは農業が始まる以前の、栄養バランスです。糖質、炭水化物過多で、脂肪過多、塩分過多の食べ物である高加工食品の割合は、ゼロは無理でも、出来るだけ減らしたいものです。
超加工食品にはさらに、様々な食品添加物、保存料、発色剤なども含まれています。これらは単一物質での短期間の動物実験データはありますが、複合して摂った場合の、長期の人体への影響は全く分かりません。またこれらを食べることによって食物繊維不足になることも決まっています。
これらの論文からの結論も、やはり素材から作るおうちご飯が、最強であるという事です。問題は食べたくても、1人だと素材から作るのには、超加工食品よりもお金がかかったり、忙しくて料理する時間が無い、などがハードルになる事です。
しかし毎日健康に気分良く、人生を充実させるためには、健康は絶対必要条件です。自分投資と考えて、出来るだけ超加工食品を減らしてゆけば、余計にかかる医療費や、働けなくなるリスクなどを避けることができるのでは無いでしょうか? 是非皆様に少しでも減らすよう意識してもらいたいなあと、蒼野は願います。
16年使ったレンジが壊れて、奮発してヘルシオウォーターオーブンレンジを注文しました。ヘルシーで美味しい料理のレパートリーを増やそうと、心に誓う蒼野でした!
参照論文:
1)Association of ultra-processed food intake with risk of inflammatory bowel disease: prospective cohort study. ; BMJ (Clinical research ed.). 2021 07 14;374;n1554. doi: 10.1136/bmj.n1554.
2)Association of ultra-processed food consumption with colorectal cancer risk among men and women: results from three prospective US cohort studies. ; BMJ 2022; 378 doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2021-068921
3)Consumption of ultra-processed foods and cancer risk: results from NutriNet-Santé prospective cohort. ; BMJ. 2018 Feb 14:360:k322. doi: 10.1136/bmj.k322.
4)Association of Ultraprocessed Food Consumption With Risk of Dementia. ; Neurology. 2022 99(10):e1056-e1066.
5)Association between consumption of ultra-processed foods and all cause mortality: SUN prospective cohort study. ; BMJ. 2019 : 365 : 1949. doi: 10.1136/bmj.l1949.
もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております