2024年の私的な医療展望!

2024/01/03

 2024年の医療展望について、蒼野の私見を述べてみたいと思います。医療者側から言えば、4月からの「歴史上初めて、罰則付きの医師の時間外労働の上限規制が始まること」の影響は大きいのではないかと推測します。去年は専攻医の過労自殺死の問題もあり、医師の健康を守ると言う意味からは大事な事だとは思います。

 元々長時間労働になりやすい職種です。現時点で、病院常勤勤務医の約4割が年960時間超、特に救急、産婦人科、外科や若手の医師を中心に、約1割が年1,860時間超の時間外・休日労働を行なっている現状があります。研究や学会発表の準備など、自己研鑽については、労働時間には入っていなかったということも、大きな過労死リスクとなっていました。

 今後の少子高齢化による人手不足や、医療の高度化、医療ニーズの変化などを考えると、今後も医師個人に対する負担は、増加することはあっても減りそうにはありません。あまりに厳しい職場であれば、今後医師になろうとする人も減ると思います。睡眠不足によって、ミスが増える可能性も否めません。

 法改正で対応する医師の働き方改革は、今後も持続可能な医療提供体制を維持していく上では、大事な変更だと言えます。医療機関毎に、一般労働者と同様の年上限960時間の病院と、外勤許可の病院、救急病院、臨床や専門、高度技能の研修を行う病院などでは、上限が当面1860時間になります。文面を見ると、医師の労働環境の改善に繋がりそうですよね。

 始まってみないと分からない部分はあるとは思いますが、現場では、変更後の実態が文面とは異なる可能性があることが心配されています。今までの仕事量が減る訳ではありません。法律に触れないように、労働時間を短縮すると言うのは、現状では人が増えない限り難しいのです。ですから混乱を避けるために、特例を設けて、表面上の労働時間が短縮できる方法が提案されています。

 医療機関が労働基準監督署による宿日直許可を受けている場合は、その宿日直に携わる時間は、規制の対象となる労働時間には含まれません。もちろん夜間ほとんど労働が必要のない勤務であることが前提で、もしあっても短時間業務に限られると言う条件付きではあります。しかし蒼野の経験上、電話を受けるだけであっても、夜中の1時3時5時とか2時4時6時等に1分ずつの電話でも、翌日のダメージはかなりのものです。

 また研鑽についても、必要不可欠な勉強や、学会準備、資格更新、手術見学などに関する勉強については、労働時間と認められるはずですが、これも医療機関によって取り扱いは変わります。週の労働時間上限についても、1日8時間、週40時間を超える場合、週1日以上の休日の確保ができない場合には、医師と医療機関の間で協定(36協定)を結ぶ必要が出てきます。

 オンコール待機時間に関しても、はっきりとはしていません。程度による様ですが、今までの裁判例でも、オンコール待機時間は労働時間に該当すると言うものと、認めていないものに分かれているそうです。基本的には、労働時間とカウントされないことが多くなりそうです。

 ずっと病院に居ても、見かけの労働時間を減らすために、必要な研鑽も、自己研鑽として労働時間としてカウントされないし、宿日直も労働時間ではないとされれば、逆にめちゃくちゃブラックな勤務形態になりかねません。それが実態となれば、医師を志す人は減る一方になるかも知れません。

 もう20年以上前の、蒼野の大学病院勤務の時を考えると、収入という点からもかなり厳しくなると思われます。当時は昼間大学病院で仕事をし、週に何日も夜は他の病院で当直をして、大学の薄給を補っていました。市中病院と大学病院の給与はあまりにも違う為、市中病院から、大学病院に転勤すると、バイトをしなければ、前年度の税金が払えなかったからです。

 労働時間とカウントされない宿日直や、オンコール待機に対しての賃金が、労働では無いと言われて、減ってしまう様な事態もあるかも知れません。外勤先も減り、大学病院等に勤務する医師の給与は減る可能性が高いと思います。独身ならまだしも、家庭がある医師は、大学を辞めて就職する人は多くなりそうです。マンパワーと労働時間によって可能だった大学病院の高度医療が、同じレベルではできなくなる様に感じます。

 患者側からすれば、当直出来る医師数が、勤務上限時間に縛られて減ってしまうと、夜間救急できる病院が減ってしまうと思います。数少ない救急病院しか無くなれば、魔が悪ければ、診察までに数時間を要するようになる可能性がありそうです。これは医療資源が限られている人口減少地域では、大きな問題になると思われます。

 ここからは蒼野の妄想の領域になりますが、医師の人手不足を補うためには、病気の診断に関しては、既に医師を凌駕しているAIの利用が進んでゆくことになる気がします。それは病院で行うだけではなくなると思います。不調が起こった時の初期診断AIが、急速に普及すると思います。

 そうなれば医師の仕事も変わるでしょうね。士業はAIに仕事を奪われると言われていますが、医師も例外ではない気がします。上記のように、医師を取り巻く労働環境は、ますます過酷になる可能性は十分にあると考えます。医師数が減れば、現在世界に比べると多すぎる日本の病院も減ってゆく運命にありそうです。AIが受診する必要性は低いと判断すれば、受診する人が減ると思うからです。

 蒼野としては、多剤併用の問題の解決や、医学的な必要のない入院などの、現在の過剰医療解決の方向にシフトしてゆくのであれば、混乱と問題が山積しそうな、今回の改革も未来に向けて必要な第一歩の様な気もします。6月に行われる2024年の診療報酬改定も、高齢者増加による医療費の増大を受けてマイナス改定が噂されています。医療界の未来は明るくは無いですね!

 健康は誰にとっても一番大事な財産です。「病気になったら病院に行けば良い」と思うのは幻想です。賢明な人は、AIの助けを借りながら、自分の健康は自分で守ると言う時代になると思います。医療によって病気を予防すると言うのは難しいです。蒼野の経験でも、大きな病気を発症すれば、元通りに回復する人はほんの一握りです。

 タクシーや運送業だけでなく、医療でも2024年問題は、大きな影響がありそうですね!日本人の健康リテラシーが高まり、予防医療がクローズアップされて、病気になる人が減ってゆく未来を期待している蒼野でした!

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