ファットアダプト

2022/01/28

 今日は、色々な人に役に立つかもしれない、ファットアダプトという、ちょっと新しい食事法について、書いてみたいと思います。特に持久系の長時間スポーツを行う人にとっては、やってみて欲しい食事法なのです。蒼野が目指す、一生リバウンドしない、健康な食事法としても取り入れてみようと思う方法なので、ぜひ読んでみてください!!

 特にトライアスロンや、ウルトラマラソンなど、フルマラソン以上の持久力が必要な競技では、昔からレース前に、「カーボローディング」や「グリコーゲンローディング」と呼ばれる食事法が行われてきました。長距離ドライブに出かける前には、ガソリンを満タンにしておくのと同じように、燃料を増やして、準備をしようという考え方です。

 具体的には、試合の4日前までは糖質を抑えた上で、ハードなトレーニングをして、体内のグリコーゲンを一旦減らしておきます。3日前から糖質量を、急に大きく増やして、グリコーゲンを余計に溜め込むという方法です。最大2倍程度貯蔵量を増やせるとされています。

 しかし通常、体内に貯蔵できるグリコーゲン量は限られており、肝臓には500kcal、筋肉には1,500kcal、合わせて2000kcal分が、通常の貯蔵量です。倍になっても4000kcalです。身体がシュガーバーニングに慣れている人では、レースの後半になって、グリコーゲンが底をついてくると、体脂肪をエネルギーとして利用する、ファットバーニングのエネルギーシステムに変更する必要が出てきます。

 気持ちよく走っていたレース後半、突如ペースがガクンと落ちる「30kmの壁」、「35kmの壁」と呼ばれるその現象は、体内のグリコーゲン、とくに骨格筋のグリコーゲン枯渇が主な原因だと考えられています。長距離のレースをグリコーゲンだけで走り切ることは難しいのです。

 しかし体にはエネルギーとして、沢山の脂肪が貯蔵されています。鍛え上げられたスポーツマンで、体脂肪率が7%程度であっても、70kgの体重であれば、4.9kgの脂肪があり、これは4万4100kcal分のエネルギーに換えることができるのです。

 カーボローディングで、糖質を沢山摂ってレースに臨むと、体内にはインスリンが分泌されています。血中インスリンが高い状態では、脂肪をエネルギーとして、効率的に使うことが出来ないのです。ここで新しい考え方が出てきました。最初から脂肪を燃やせる、ファットバーニングのエネルギーシステムで、日常を過ごせば、レース中も最初から脂肪を燃やすことができて、持久力が一旦途切れる心配なく、レースが有利になるのではないか、というものです。

 そこで実験が行われました。ウルトラマラソンやトライアスロンの選手で、カーボローディングをしているアスリートと、糖質を控えている(すなわちファットアダプトをしている)アスリートに、最大酸素摂取量の65%(中程度)の運動強度で3時間の運動をしてもらい、運動の前後、さらに、その後2時間安静にしてリカバリーした後の、筋肉グリコーゲン量を調べました。

 リカバリー開始時に、カーボローディングをしている人には高糖質ドリンク、糖質を控えている人には低糖質で高脂質のドリンクを飲んでもらっています。その結果、長期間ファットアダプトをしているアスリートと、カーボローディングをしているアスリートの間に、筋肉内のグリコーゲンの差はありませんでした。あらかじめグリコーゲンを溜め込む必要は無かったことが証明されました。

 運動中のエネルギー源については、ファットアダプトをしているアスリートの方が、安定して脂質を主なエネルギー源として燃やしていました。つまり脂質をエネルギー源として、安定的に燃やせる体質になっていたということです。

 カーボローディングしているアスリートは、最初は、主なエネルギー源として糖質を利用してはいましたが、運動中に徐々にエネルギー源を脂質にシフトさせました。つまり、カーボローディングをしているアスリートでも3時間の間、糖質だけをエネルギーにすることはできなかったのです。

 もう一つ実験があります。12週間エリートアスリートに、高糖質の食事か高脂質の食事かを選んでもらい、通常のトレーニングをしてもらいました。高脂質グループでは体重と体脂肪率が、有意に低下しました。100km走る持久力テストでは両グループに有意な差は出ませんでした。しかし瞬発力を測定する、6秒間のダッシュや、パワーを測定する、クリティカルパワーテストでは、高脂質グループの成績が上がったのですが、高糖質グループでは下がっていたのです。

 ファットアダプトを積極的に取り入れている、日本が誇る世界的アスリートが、サッカー日本代表の長友佑都選手です。パフォーマンスを上げるために、今までも様々な食事法も研究してきておられます。ファットアダプトを取り入れてから、様々な変化が起こり、今までで最高の体調が維持できていると言っておられます。

 怪我をしにくくなった、肌のトラブルが減った、試合中の外傷性気胸で、入院、手術をおこなった時も、医者が驚くくらいに回復を見せて、1ヶ月後には試合に実戦復帰されています。良い油をしっかり摂ることで、細胞レベルで機能が改善するようです。ダイエット効果もあるのですが、筋肉が落ちたりもしないのです。

 長友選手の実感としては、食後に頭がぼーっとして、集中力がなくなる事もなく、脳も筋肉も思い通りに働くようになり、メンタルが安定して、体のキレもスピードも戻ってきて、36歳の現在、20代の頃よりも良いコンディションで、良いパフォーマンスが発揮できていて、日本代表に選ばれ続けているとのことです。

 もう一つ、週6回以上の厳しいトレーニングをおこなっているアスリート10名による、6日間の血糖モニタリングの研究が、ニュージーランドで行われました。エネルギーを補給するために、従来の高糖質(日本人とほぼ同じ、糖質60%、タンパク質15%、脂質25%程度)の食事を摂っていたのですが、4人はモニタリング時間の70%で血糖値が、食前血糖の上限である108mg/dlを超えており、3名は糖尿病予備軍の値、1名は食後高血糖の後に72mg/dlの低血糖状態になっていました。

 トレーニングを日常的におこなっているアスリートでさえ、食後高血糖を起こすタイプがかなりの割合で見られているのです。これらはインスリンの分泌能が高い白人での実験ですが、日本人はインスリン分泌能が低く、カーボローディングなどで、糖質摂取を増やせば、さらに血糖が乱高下し、食後低血糖のリスクも高くなり、スポーツだけでなく、日常生活でも、パフォーマンスが下がることが予想されます。

 健康長寿を考えても、血糖の乱高下は、高血糖時に脂肪が貯まりやすくなります。インスリンが高いために、脂肪をエネルギーとして燃やすことができず、痩せにくくなります。身体を焦がして変性させる糖化を起こし、引き続いて酸化や慢性炎症の元となり、メタボリックシンドロームにつながってゆくことで、健康状態が悪化してゆきます。

 スポーツのパフォーマンスのためにも、健康長寿のためにも、140mg/dl以上の食後高血糖は避けるべきなのです。そのための食事は、1食当たりの糖質を、40g程度に抑えるのが、安全です。その分、良い脂をしっかり摂取してゆく食事法が、ファットアダプトなのです。

 長友選手がプロ生活12年で、一番良いコンディションの維持ができている食事法。皆さんは興味はありますか? 明日、具体的にその方法について書きたいと思っています。

 我慢せずに、美味しいものを食べながらダイエットする方法、筋肉も減らず、リバウンドせずに、健康が維持できる食事法が、指導できる人になりたい蒼野でした。

参考書籍:  長友佑都のファットアダプト食事法 身体を劇的に変える28日間プログラム  

                            長友佑都       監修:山田 悟

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