花粉症と食物アレルギーの意外な関係!

2022/02/02

  そろそろスギ花粉が飛び始める時期になりましたね。花粉症の有病率は、H20年で人口の約30%と立派な国民病です。蒼野は33歳の時に、スギヒノキ花粉症を発症しました。手術中に水鼻が止まらなくなり、手袋をした清潔状態だったため、たびたび看護師さんに、幼児のように鼻をチーンしてもらって恥ずかしかったのを覚えています。

 今日は、元々花粉症などのアレルギーがある人が、のちにその花粉のアレルゲンと交差反応する生の果物や野菜を摂取したときに、口やのどの粘膜で起こるアレルギー症状を発症する事がある、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)についてお知らせしたいと思います。

 聞きなれない病名ですが、特定の野菜や果物を摂取した直後~15分以内に、口の中がかゆくなったり、のどがイガイガして腫れたり、息苦しくなったりするなどの症状が現れる疾患です。口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれます。軽度な症状が多いとされていますが、まれに生命を脅かすアナフィラキシーにつながる場合もあるため、知っておいた方が良い疾患です。

 主な症状としては、スギヒノキ花粉は、トマトと似たアレルゲンを持っているため、トマトを食べるとくちびる、舌、のどなどが痒くなり、チクチクしたりイガイガしたりして、腫れたりする人が16.5%程度見られます。トマトジュースを飲んだ後に、呼吸困難で搬送された症例もある様です。

 北海道などで有名な、シラカンバ(白樺)の花粉症の人の20~40%にリンゴやサクランボ、桃などを食べると症状がみられたとの報告もあります。白樺花粉症は、大豆とも交差反応があるため、一度に大量に摂取できてしまう豆乳は、特に全身的な症状が出ることがあり注意が必要です。息苦しい、意識がもうろうとするなど、症状が重い場合は救急要請した方が良い場合があります。

 イネ科のカモガヤやオオアワガエリではセロリ、スイカ、メロン、トマト、オレンジ。ブタクサやヨモギなどではセロリ、スイカ、メロンなどでの報告があります。食べ物が口腔粘膜に触れることで、局所でアレルギー反応が起こります。食物アレルギーのように、腸から吸収されて起こるアレルギーではありません。

 花粉症以外にも、交差反応によるアレルギー疾患があります。有名なラテックス-フルーツ症候群は、ラテックス(天然ゴム)アレルギーを持つ人が、果物を食べることで症状が起こります。バナナ、キウイ、アボカド、クリとそれらの加工品による症例が報告されています。ラテックス製の手袋をよく着用する食品関係の人や、医療従事者や医療処置を繰り返し受けている人、などに起こりやすいといわれています。

 納豆アレルギーを持つ人は、マリンスポーツ愛好家に見られることが多く、納豆の粘り気の成分が、クラゲの触手にも存在する成分と交差抗原性があることから、クラゲに刺されたこととの関連性も報告されています。

 原因が分かりにくいアレルギーとしては、食物を摂取しただけでは症状は起こらず、特定の食物を食べたことと、食事の後の運動や入浴、成人の場合、疲れ、NSAIDsの服用、飲酒などの要因が合わさることで起こるアレルギー症状があります。食物依存性運動誘発アナフィラキシーと呼ばれており、食物の摂取だけ、もしくは、運動しただけではアレルギー症状は起こりません。食後2時間は、もう一つの誘因である運動などを避けることが重要になります。

 アレルギーのある人は、少量ずつアレルゲンを摂取して慣らすことで、一時的には反応がおきづらくなるとの報告がありますが、しばらく摂取しない時期があると元に戻る様です。まだ明確な治療法はなく、現在も研究中です。ただ生で食べずに、火を通せば、アレルギー反応は起こらなくなる様です。

 アレルゲンなどの侵入により、複数の臓器において、全身にわたってアレルギー反応が起こっている状態で、生命に危機を与えうる過敏反応をアナフィラキシーと呼びます。アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴うと、「アナフィラキシーショック」といわれる、大変危険な状態となります。一刻も早く救急病院に搬送が必要です。

 アナフィラキシーが起こる原因には、食物、ハチ毒、医薬品、ラテックスなどがあります。アレルギー症状が、ほぼ同時に皮膚・粘膜と全身の臓器に現れます。口内の違和感、唇や手足のしびれ、じんま疹、顔色が真っ青になった後全身が紅潮、全身のむくみ、唇の腫れ、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、血便、せき、ぜーぜー苦しくなる、息苦しさ、のどの詰まり、胸痛、動機、不整脈、めまい、頭痛など、多彩な症状が現れるのです。

 蒼野も1例だけ、偶然に遭遇した事があります。医師8年目くらいの時に、脳神経外科外来がたまたま駐車場から、病院に入る入り口の一番近い所にあったのですが、一人の男性が、ドアを突き破る様な勢いで、倒れ込みながら入ってきました。

 顔面蒼白でチアノーゼを認め、ぜーぜー言いながら、喉を指差しており、息ができない様子です。すぐに挿管しようとしましたが、喉が腫れあがってて管が入る状態ではなく、アナフィラキシーによる咽頭の腫脹で、呼吸困難になっている事が分かりました。

 意識がなくなりつつある為、応急処置で、手元にあった18Gの注射針(一番太い針)を喉に10本くらい突き刺して、酸素を投与しました。引き続き、体制を整えてから気管切開を行い、呼吸器を繋いで、ステロイドを大量投与することで、チアノーゼは解消し、命は取り留めました。本当に生きた心地がしませんでした。

 アレルギーがある人だったようで、食材にアレルゲンが入っていたのに気づかずに食べて、息苦しくなり、自分で車を運転して、病院に到着したら、いよいよ息が出来なくなり飛び込んできたとのことでした。全身性のアレルギーは本当に怖いと感じました。

 ワクチンの問診とか、投薬の際も必ずアレルギーについて訊かれますよね。食べ物のアレルギーも怖いですから、もしアレルギーがある人は、料理を頼む際にも、必ず伝えることが重要です。

全国のアナフィラキシーショックによる死亡者は、毎年50~80人程度です。アレルギーは、圧倒的に軽症の方が多いと思いますが、運が悪ければ、全身性のアナフィラキシーにつながる可能性があることは、覚えておきましょう。

 特に、いままでアナフィラキシーを起こしたことがある場合は、カードに書いて、持っておくほうが良いかもしれませんね。学校などには、緊急時個別対応カードを提出しておくことや、緊急時の注射であるエピペンを用意しておくことなどが、命を救うことに繋がります。

 食事の変化で、腸内環境が悪くなり、今後もますますアレルギー疾患は増えてゆくと思われます。『備えあれば憂いなし』ですので、アレルギーがある方は、危ない食べ物があるかもしれないことは意識しておいてくださいね!

 最近は食生活の改善のおかげか、あまりスギヒノキ花粉症もひどくない蒼野です。トマトは大好きなので、食べるのをやめる気はないのですが、せめてトマトジュースはやめておこうかなと思っています。

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