ChatGTPの衝撃から、今後の医療に介入すると思われるAIについて調べている蒼野です。すでに研究結果も報告されていましたので、今日は蒼野の私見も含めて、これからの医療について書いてみたいと思います。
人間にはヒューマンエラーや判断の間違いがつきものです。これは医療ではあってはならないことではあります。1973年のイスラエルでの1ヶ月間の医師のストライキで、医療を受けていた65000人が、救急のみの7000人になりました。
その結果、同国の死亡率が半減し、医療再開と同時に元に戻ったという事例があります。このことは医療においても、潜在的に様々なエラーや判断の間違いが起こっていた事を示唆しているものだと思います。
人類が行ってきた論理思考を、コンピュータ上に再現するプログラムであるAIは、学習を繰り返すことで、様々な判断を下すことができるようになっています。しかも人間を超える知識量からすれば、エラーは少なくなるはずなのです。この仕組みを医療に応用するものが「医療AI」です。
ビッグデータで学んだAIを、発症リスク評価や予防・疾患診断・治療法選択・予後評価などに応用すれば、現時点で医師が、学習と経験から判断しているよりも、高い確率で正しい選択ができる可能性があるのだと思います。これは以前から予測されているものではありますが、ChatGTPに触れてみると、今後現実的に、誰もが使えるようになると思います。
蒼野の医者生活を振り返ってみると、患者様への説明は、年を追うごとに難しくなってきました。医者になりたての頃は、医療の知識は、分厚い教科書には書いてありましたが、一般の方からは遠い存在でした。患者様は医師に説明されたことを、信頼するしかない時代でした。
それがインターネットの発達により、長く患っている方などは、ひょっとすると医師よりも、詳しい知識を持つ方もおられます。知的な患者様やご家族によっては、治療の前の時点で納得が得られず、セカンドオピニオンが必要な場面も出て来ています。しかしGoogle検索等で判断するには、ある程度の知性を持って、幾つものページを見て総合的に知識を得なければ、正解はまだ分かりにくいように思います。
しかしそれをAIが助けてくれるようになると、分かりやすい医療知識が、もっと一般化しそうに思います。これはとても良いことでもあります。病院で診断された場合、その病気について質問すれば、ちゃんと医師が正しいことを言っているのかどうか、AIに尋ねることができます。蒼野の経験上も、営利目的の医師も沢山出会ったことがありますので、勧められるままに治療しなくてもよくなるのは、医原性の健康被害を出さないためにも重要です。
以前も書いたことがありますが、病院自体も営利団体ですので、経過観察も出来るし、手術もできるという場合であれば、手術を勧めることが多いのです。こんなことを書くと医師は、仕事がしにくくなると思いますが、自分の健康や身体を自分で考えられるようになるということは、本当に素晴らしいことだと思います。
もちろん医師側もデメリットばかりではありませんよ! 医療画像から疾患診断を行う部分は、年季が必要な部分です。これをビッグデータを持つAIがサポートしてくれれば、作業負担がとても軽減されると思います。見落としは少なくなりますし、特にスクリーニングにはぴったりだと思います。
AIはまだ完璧では無いため、偽陽性も含めて少し怪しいものは全てチェックしてから、老練な医師が最終判断をすると言う形になってゆくのでは無いでしょうか? また予後の判断も、AIを交えて、どのくらいのパーセントで回復するのかなども、患者様にお伝え出来るようになることは重要です。
大切な家族の脳卒中や重症頭部外傷などは、突然の出来事です。蒼野の経験でも「できることは全部して下さい」と言われて、緊急手術を行ってきました。経験的には、手術しても決して意識は回復しないだろうと思われる患者様にも、ご家族の希望で手術することが多かったです。結果として、そのまま亡くなってしまったり、植物状態になってしまう方がほとんどでした。
もちろんご家族が冷静な判断が難しい状況でもあり、医師側も救急で運ばれて来た方を、そのまま見守るだけで亡くなるという判断が難しかった面はありますが、今後AIが介入する事で、見守ることが、お互いの納得の治療になる可能性も大きくなってくるように思います。
今までの積極治療は日本人ならではの心情と、国民皆保険いう面が大きいのだと思います。海外では、高額の医療費の問題もあり、ダメなものはダメとして、救急で運ばれても、点滴一つ取らないという国は多かったりします。世界一の高齢化社会である日本としては、医療費の高騰は看過できない問題ですので、AIの画像診断と予後予測が実装されることで、少しでも緩和されると良いなあと思います。
また医師による医療格差、地域による医療格差に関しても、AIの導入で緩和され、適材適所での治療が進むと良いと思います。マイナンバーカードと紐づけられるクラウドカルテが実現すれば、カルテ上の病歴から、AIが診断を助けてくれると思いますし、ウェアラブルデバイスとも紐づけられれば、予防医学にも応用出来そうですよね!
精密医療が標準化すれば、遺伝子や腸内細菌から個別の情報も含めて、AIが病気の早期発見や予防に活躍すると思います。治療に関しても個別の情報が集積され、新たな創薬や治療法が見つかりそうです。予防が進めば、それこそ医療費の削減が進むと思います。医療機関が変わる度に、同じ検査を行う今のシステムは、過去のものになるでしょう。
今日は蒼野の妄想が結構入っているかもしれませんが、そんなふうな未来が結構近い気がしています。AIはトライアンドエラーを繰り返すことで、同じ過ちは繰り返さなくなります。まだ全部は信用はできませんが、医師もAIの知識が必須になる時代も、そこまで来ているように思います。
すでに「ChatGTP」を心血管疾患の予防に応用した場合の適切性の評価について、オンライン論文が出ていました。危険因子、薬歴、検査結果、予防の対処などの25の質問を行い、AIに判断させ、心臓病の予防医学において経験豊富な臨床医が評価しました。25項目中21項目について、AIは適切な回答を行なっていました1)。
医療用ではない「ChatGTP」で、これだけの結果が出るのはやはり驚異的だと思いました。健康を守るのに一番良いのは予防です。蒼野も予防医学に携わりたくてブログを書いています。もう数年、ひょっとすると数ヶ月で、病気の予防の知識は、どんどん進化する「ChatGTP」で調べるという時代になるような気がします。
しかし困った症状が無ければ、生活習慣を変えられないのも「人の常」です。予防プロジェクトに参加するのは、健康で意識が高い人だけです。健康な人だけが健康になり、不健康な人は不健康のままというのは、いくらAIが発達しても変わらないのかも知れませんね。
健康知識に関しては、そのうちに「ChatGTP」には敵わなくなることを覚悟している蒼野です。しかし知識だけでは、生活は変わらず、健康にはなれません。健康になるお手伝いが出来る仕事を、追求してゆこう、という思いを強くした蒼野でした!
参考文献:
1)Appropriateness of Cardiovascular Disease Prevention Recommendations Obtained From a Popular Online Chat-Based Artificial Intelligence Model. ; JAMA. 2023 Feb 03; doi: 10.1001/jama.2023.1044.
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