脳卒中にならないために必要な事!

2023/03/17

 蒼野は今、学界真っ只中、日本脳卒中学会2023で、横浜に来ています。色々と新しい知識を勉強しています。新しい薬も出ていますし、救急から離れて忘れかけていた知識を思い出したりもしています。今日は、聞いた話の中から書いてみたいと思います。

 今日の話題は若年性脳卒中です。通常脳卒中の好発年齢は60歳以上です。一般的な若年性脳卒中は18歳から55歳までに発症したものを指しています。脳の血管が詰まったり、破れて出血するのが脳卒中です。世界中で、年間1300万人の脳卒中患者が発症します。若年者はその20%と言われています。近年は以前に比べて40%もの増加が見られています。

 血管が若い人は、なかなか詰まったり、破れたりはしないはずですよね。何か理由があるのでしょうか? 人口比が一番多い地域は西アフリカです。次に多いのはアメリカや東南アジアです。中所得以下の人に多くなっており、高所得者では逆に減っているそうです。食べるものやライフスタイルの影響がありそうですね!

 日本では概して男性の方が多いのですが、25歳から30歳に限っては、女性が多くなっています。これはピルの内服や、妊娠による凝固亢進の影響があるそうです。この年代の女性では、喫煙や、片頭痛がある人では、特にピルの内服には注意が必要です。

 若年性脳卒中になった人が持っている疾患や習慣では、特別なものではなく、高血圧(55%)、喫煙(42%)、糖尿病(21%)、脂質異常症(47%)になります。若いと流石に糖尿病は、少ない様ですが、若いからといってこれらを放置しないことが重要ですね!

 これらのリスクの保有率について見てみると、未婚の人、独居の人が多いことが判明しています。喫煙については本数が増えるほどリスクが高まっています。その他の習慣としては、コーラ等の常飲、違法薬剤、コロナなどの感染症、経済的困難者、意外なところで過度の運動、でリスクが高いとのことでした。

 どうしても一人だと、食事は自炊ではなく、外食やコンビニ、お惣菜などに偏りがちです。甘い飲み物やタバコによる、体内炎症や酸化、糖化の亢進が続くと、リスクが上昇します。安い食べ物は加工食品が多いため、それが若年脳卒中のリスクになっているというのは納得できます。運動もやりすぎると酸化ストレスが上昇します。

 時代と共に数年単位で、食事内容が変わってきています。加工食品は過食になりやすく、メタボリスクが高い食品です。食べ続けていると、肥満になり、血圧が上がり、腸内細菌が乱れ、体内炎症、酸化ストレス、糖化ストレスが上昇するのが自然な反応です。これが加齢と共にリスクの上昇につながるのです。

 若年性脳卒中の内訳は、梗塞が約4割強、脳出血が32%、くも膜下出血が26%程度です。もやもや病や脳動脈瘤、脳動脈解離、抗リン脂質抗体症候群などのベースの疾患が原因になるものは昔からありますが、最近増えているものに関しては生活習慣の影響が大きいと思います。

 若いからといっても、病変の部位や大きさによって、様々な後遺症が残ることが多いのです。片麻痺や言語障害、中には橋出血などで植物状態になる方も居られます。働き盛りの人に、ある日突然に発症するのです。脳出血の方が重症であることが多いのですが、脳梗塞にしても発症5年後の時点で、約半数の患者様が、働くことができない状態であるというのが事実です。本人の負担だけではなく、家族の負担は計り知れません。社会的にも大きな損失です。

 長く苦しいリハビリを行なっても、必ず良くなるわけではありません。発症のストレスから、精神的に鬱状態(脳卒中後鬱という病名もあります)になる人も多いのです。上記のリスクがある人は、生活習慣を変えるのが理想ですが、難しい場合には、内服薬でのコントロールも含めて検討することが大事になるのです。

 身の回りに倒れる人がいなければ、特に若年では自分には関係ない、と思いやすい疾患です。皆様は検診で、もし肺に影があったら、肺癌かもと思って、病院を受診しますよね! しかし血圧が高いと言われて、病院に行く若年者はとても少ないのです。先ほども書いたように、脳卒中はある日突然発症し、人生が変わる病気です。ひょっとすると癌よりタチが悪いかもしれません。

 脳出血に関しては、若年者と高齢者で増加が見られます。高齢者の場合は血液サラサラの薬の影響があると言われています。若年者であっても、血圧は病院で140/90mmHg、家庭で135/85mmHg以上は放置せずに、改善に取り掛かることが重要です。

 日本の高血圧患者は4300万人いて、全体の60%がコントロールが不十分です。55歳以下の高血圧患者では、指摘されていても72%が、未治療のまま放置しているのが現状です。同僚に自分と同じ様に血圧高めの人がいたとしても、二人とも危ないのであって、安心はできないのです。

 もう一度言いますが、例えば脳出血を発症すれば、脳卒中患者の障害の程度を表すmodified Rankin Scaleで、日常生活に介助が必要な4、寝たきりの5、死亡の6を合わせた予後の割合は、約半数です。高血圧を始めとするリスクを放置するのは、死神の鎌が首に当たっている状態なのです。

 3年ぶりに日本脳卒中学会に現地参加した蒼野が、今回感じたのは、治療法についての進歩はもちろんなのですが、予防についての演題も多かったことです。脳卒中を見ている医師が共有しているのは、皆様には発症して欲しくないという気持ちです。特に若年での発症は悲惨ですので、メタボ等のリスクは放置しないで欲しいと思います。

 皆様が忙しいのは重々承知です。自分の健康よりも、他に気を取られることも多いと思います。かつての蒼野もそうでした。しかし若ければ若いほど、生活習慣の改善で、少し痩せただけで脳卒中リスクは下がるのです。元気なうちに、リスクを少しでも減らしておくことが、後悔しないために必要なことなのです。

 学会としては、近年行政ともタイアップが密接になってきています。日本循環器学会と日本脳卒中学会が、健康寿命の延伸のための「脳卒中と循環器病克服 5 ヵ年計画」の取り組みを2016年から始めています。心臓病と脳卒中を合わせれば、要介護原因としては、一番多くなるからです。

 2022年からは第二次の「脳卒中と循環器病克服 5 ヵ年計画」が始まっています。最初の5ヵ年計画ではまだ学会が中心でしたが、今回の取り組みには行政との連携がさらに強化されている様でした。これは今までの学会では見たことがありませんでした。高齢化は急速に進んでおり、いかに要介護の人を増やさないかということが、これからの日本にとって、本当に大きなことになるのだと感じています。

 リスクが無い方は、今の健康的な生活を続けましょう。リスクがある方は、少しずつでも生活を見直してゆきましょうね! 忙しいでしょうが、勇気を出してクリニックを受診してみてくださいね! 蒼野の経験では、若くして脳卒中になる人は、「健康に対して、驚くほど意識がない人が多かった」という事実は知っておいて下さいね!

参照ページ: 日本脳卒中協会 YouTube
       https://www.youtube.com/channel/UCDZB0dvvW7_QkR2yHsmXfIg

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