認知症は栄養で防ぐ!?

2025/05/04

1、脳は非常に栄養の影響を受けやすい臓器です。

脳は体重の約2%しかありませんが、全身のエネルギー消費の20~25%を使うことから、ミトコンドリアへの依存が非常に高い臓器なのです。つまりミトコンドリアの代謝状態が直接的に影響されるということになります。

またセロトニン、ドーパミン、アセチルコリン、GABAなどの神経伝達物質の原料や補酵素には、ビタミンB群やアミノ酸、鉄、亜鉛、マグネシウムなど、多くの栄養がが必要です。

脳の約60%は脂質で構成されています。神経が伸びるためには、DHAのような柔らかくて形を変えやすい脂質が必要です。硬い脂質(オメガ6の過剰、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸)が過剰になると神経構造や機能に悪影響が出るのです。また酸化されやすいので、豊富な抗酸化物質が必要です。

しかし脳には有害物質をブロックする「血液脳関門(BBB)」があり、一部の栄養素は特定のトランスポーターの助けがないと、脳に届きません。トランスポーターを作る様々なアミノ酸、やビタミン、ミネラルが不足すると脳に影響が出るのです。

またBBBがある脳の毛細血管内皮細胞や周囲の基底膜、これらを覆うアストロサイトやペリサイトにも、多くの栄養が必要です。

2、脳と栄養の関係

高齢化に伴って認知症の有病率が急速に増加しています。認知症は脳の老化が進んだ状態と考えることができます。現時点で老化を防ぐ薬は存在せず、医療での治癒は困難であることから予防に対する関心が高まっています。

これまでの研究で、栄養素が脳の老化に影響を与える可能性が示されています。注目されている栄養素には、オメガ3系多価不飽和脂肪酸、ビタミンB群、ビタミンD、抗酸化物質、ポリフェノールなどがあり、これらは主に抗酸化作用、抗炎症作用、血管の健康を保つ作用を通じて効果を発揮します。

しかし単一栄養素のサプリメントを用いた臨床研究では、いまだに大きな効果を示すものはありません。栄養素が相互に影響し合うため、ある栄養素だけを補っても、他の栄養素が足りない場合には効果が出ないのです。脳の老化に関わる栄養メカニズムは多因子的で、単一栄養素よりも食事全体のパターン(食事スタイル)としてのエビデンスがいくつかの観察研究で確認されています。

3、論文紹介

1、Concurrent nutrient deficiencies are associated with dementia incidence :Alzheimers Dement 2024 Jul;20(7):4594-4601. 

ホモシステイン↑、ビタミンD↓、オメガ3脂肪酸↓の3つが揃うと、認知症リスクは約4.6倍となります。これは喫煙中(約2倍)、糖尿病(約2倍)、APOE ε4キャリア(約3倍)よりも高かったのです。(50歳以上、968名、15.5年間の前向きコホート研究)

2、Omega-3 Fatty Acid Status Enhances the Prevention of Cognitive Decline by B Vitamins in Mild Cognitive Impairment :J Alzheimers Dis. 2016;50(2):547-57.

70歳以上のMCI患者266名に対して、2年間栄養介入を行なった研究では、ベースのDHAやEPAの血中濃度が高いほど、ビタミンB群による認知機能の改善効果が顕著に見られました。一方、プラセボ群ではオメガ3の濃度による差は見られませんでした。オメガ3状態が良好だった人にビタミンBを投与すると認知症悪化が33%でしたが、プラセボでは59%が悪化していました。

認知機能の低下は、扁桃体-海馬複合体や嗅内皮質の両側の灰白質減少と強く関係しており、ホモシステイン)値が高い高齢者では、ビタミンB群の投与により萎縮の進行が9分の1になっていました。ビタミンBってすごいですよね!

ホモシステインには、神経毒性があり、代謝時に活性酸素を発生させ、メチレーション反応を阻害します。脳の修復や神経伝達物質の合成を邪魔するのです。また血管にも作用し、NO合成を阻害することで脳虚血を起こします。しかしビタミンB6・B12・葉酸によって低下することが出来るのです。

4、世界での認知症予防の注目は栄養と生活習慣!

そんな中、イギリスで生まれた非営利団体「Food for the Brain」が、認知症、うつ、ADHD、認知機能低下などの脳の不調を、栄養と生活習慣で予防・改善することを目的に、

世界中から、参加者2000万人のデータを集めています。

そこで啓発されている「脳を守る方法」としては

  • 血糖コントロール(低GI・精製糖の制限)
  • オメガ3脂肪酸(特にEPA・DHA)摂取
  • ビタミンB群(B6・B12・葉酸)の充足
  • ビタミンD、マグネシウム、亜鉛の重要性
  • 抗酸化食品(カロテノイド、ポリフェノール)の積極的摂取
  • 腸内環境の改善(脳腸相関)
  • 睡眠・運動・ストレス管理

が挙げられ、これらを守ることで認知症は80%予防できると言われています。

今日は認知症に注目しましたが、全ての細胞、ミトコンドリアは栄養や生活習慣で守れます。ずっと元気でいる為に、正しい知識で栄養と生活習慣を選択してゆきましょう!!