生物学が教える正しいダイエット!

2023/12/17

 今年もあと半月弱になりましたね! クリスマスや年末年始、ご馳走を食べる機会も多い時期でもあります。その結果、年明けからダイエットに取り組むという方は一定数おられると思います。しかしダイエットは続かない人が多いのも現実です。今日はその生物学的理由について、最近読んだ本から学んだので、シェアしたいと思います。

 「絶対痩せてやる」とモチベーションが高い時期には、太りそうな食べ物を避けて、もう少し食べたくても我慢することは、短期間であれば、誰にでも可能です。しかし意志の力は長続きしないのが当たり前なのです。リバウンドは恐ろしい事実を含んでいます。それは動物実験でも証明されています。

 実験用のラットにカロリーをコントロールした食事を与え続けると、最初のダイエットでは体重が減ります。しかしダイエットをやめて自由に食べれる様にすると、徐々に太り始めます。2回目の同じダイエットでは、痩せるまでの時間が長くなります。止めると前回よりも早く太ります。

 3回、4回とダイエットを繰り返してゆけば、カロリーを制限しても、増えた体重が減らなくなります。これは生物学的に、食料がない時に生き延びて行く為に、全ての生き物に備わっている恒常性(ホメオスタシス)の一つです。食べる物が少なくなった、という生命の危機があれば、身体は次に同じ事が起きても、乗り切れるように進化?(変化)してゆくのです。

 つまり一時的なダイエットを繰り返すたびに、止めるとリバウンドし、水を飲んでいても太る!?様な体質へと変わってしまうのです。体重をコントロールするためには、本能が生命の危機だと感じるようなダイエットは、してはいけません。ダイエットの本質は、一生行なうものであり、一生行う事が可能な事でなければ、上手くいきません。

 お腹が空いても、1日に何カロリーまでしか食べないというダイエットは、特に難しいです。空腹の時に食べたくなるのは、全ての生物に共通の、生き残るための警報です。これを意思の力で無視する様なダイエットは続けられないのは当たり前です。食べなければいけない会食などで、美味しい物を目の前にすると、「今日1日はもうダイエットは忘れて楽しもう」という気持ちになり、いつも以上に驚くほど食べてしまうということも起こります。

 食べたい空腹感を、いつも我慢していると、逆に満腹感も失われます。食べ始めると歯止めがかからずにドカ食い、やけ食いが起こりやすくなるのです。我慢すればするほど、意志力は使われて無くなって行きます。運動しすぎると筋肉が疲労して、動けなくなるのと同じ事が起こるのです。

 食べるのを我慢すればするほど、人は食べ物の事を考えやすくなります。そして意志の力は使われて枯渇してゆき、自分がコントロールできなくなってゆくというのは、とても皮肉な話ですよね! 食事を極端に減らす様なダイエットが、必ず失敗する生物学的理由はここにある様です。

 我々の本能には、ホモサピエンス誕生からの、生活環境に適応してきた長期間の進化が刻まれています。飢餓の時代には、たまたま果実の木を見つけたら、残さず収穫して、出来るだけお腹に詰め込んだはずです。採り残して次の日に見にきたら、他の人や動物が食べ尽くしてなくなっている可能性が高かったからです。

 食べ物を我慢するために、意志の力を使う必要が出てきたのは、飽食の時代になったここ60年のことです。そして意志の力は、使えば減ってゆくのです。これは実験でも証明されています。はらぺこの学生を、同じ部屋で焼きたてのクッキー群とラディッシュ群に分けて、目の前の物しか食べてはいけないと我慢させました。

 その後で、クッキー群、ラディッシュ群に加えて、比較のため、はらぺこのままの群の3群に、解けないパズルに挑戦してもらいました。クッキー群とはらぺこ群は平均20分、パズルに取り組みましたが、クッキー群を横目で見ながらラディッシュを食べた群は、平均8分で諦めてしまいました1)。

 人間は意志の力で、努力すればする程、疲れてしまいます。意志力が消耗すると、自分を制御することが出来なくなります。脳の制御の中枢である、前帯状皮質の働きが弱くなり、感情や反応のコントロールが困難になるのです。意志力が消耗すると、欲望自体も強くなります。やってはいけないと分かっていてもついやってしまうようになります。

 また本能に逆らって行う努力は、我々にとって大きなストレスです。ストレスホルモンは、食欲を上げ、筋肉を落とし、インスリン抵抗性を高めて、お腹の脂肪を増加させます。ダイエットでストレス太りするのでは本末転倒です。意志力が無くなれば、歯止めの効かない爆食いにつながる危険性を秘めているのです。

 意志の力でダイエットするのが、いかに無駄なのか、また難しいのかがよく分かりますよね! 適正体重に戻して、それをキープしようと思う時には、決意してダイエットをしてはいけません。自然に痩せてゆく生活習慣を手に入れて、粛々とそれを続けてゆくしかないのです。やって欲しい生活習慣は次の通りです。

 まずはよく眠ること。睡眠不足は食欲を増進させます。そして規則正しい生活です。1日のホルモン分泌周期が安定することで、ストレスホルモンも安定します。日常のストレスは運動で解消するのが理想です。こまめに動くだけでも違ってきます。ちょっとお腹が空いた時は、我慢するのではなく、身体を動かすのが正解です。

 目の前にすぐに食べれるものを置かないのも重要です。食事をして帰宅したら、すぐに歯を磨きましょう。小さい頃からの習慣で、歯を磨いたら、食べないというのは多くの人に刷り込まれています。歯を磨けば、夜食や寝る前に食べないというのは、自然なことので、余計なものを食べることが減ります。

 お腹が空いてから食べるというのも、摂食中枢や満腹中枢を活性化するために必要なことです。お腹は空いてないけど、時間が来たから食べるという習慣は、飽食の時代になってからのものです。お腹が空かなければ抜いて、たまには短期間の断食をやってみるのもおすすめです。オートファジーが活性化され、細胞がリフレッシュされます。

 食べる時は、ゆっくりと噛みながら、満足するまで食べましょう。意志の力で途中でやめると、良い結果になりません。ただ食べる物の内容は吟味してください。世の中に溢れる加工食品は、食欲を増して、より多く食べてもらう様に作られています。栄養価の高い食材を選べば、カロリー過多にはなりにくいのです。

 自然の素材を中心に、タンパク質や野菜などの栄養をたっぷりと摂りましょう。バランスの悪い、炭水化物や、脂質が過多になる様な食事では、体重は増え、老化も進み、病気の発症にもつながります。本当に食べたい時は、ストレスを溜めない様に食べるのも良いですが、基本的には、お家で調理したものを食べましょう。

 過激なダイエット、我慢するダイエットは、かえって悪い結果をもたらします。年末年始、思い切り楽しんだら、ゆっくりと自然に元に戻してゆきましょう。くれぐれも無理なダイエットはなさらないように、お願いしたいと思います!

参考文献:
1)Yielding to Temptation: Self-Control Failure, Impulsive Purchasing, and Consumer Behavior. ; Journal of Consumer Research, 28,(4),  2002,  670–676

参考書籍: スピリチュアルズ 「わたし」の謎     橘 玲

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