脳血液関門(BBB)!

2022/07/21

 今日は脳血液関門について書いてみたいと思います。人間の臓器はどれも大事ですが、特にデリケートで、大切に保護されている組織が脳です。解剖学的に見ても、厚い骨に囲まれ、硬膜に包まれて、脳脊髄液の中に浮かんでおり、傷害を受けにくい構造になっています。

 体の内側で、血液中の有害物質から脳を守るシステムが脳血液関門(Blood Brain Barrier=BBB)です。これは脳組織内の毛細血管内皮細胞とそれを囲むペリサイト(周皮細胞)、神経細胞の生存と働きを助けるアストロサイト(星状膠細胞)の相互作用で形成されています。

 毛細血管内皮細胞は、腸の内皮細胞と似ていて、隣同士の細胞がタイトジャンクションで強固にくっついていることで、血液から脳に必要な栄養素(ブドウ糖、ケトン体、一部のアミノ酸、ビタミンなど)や酸素などは通過させますが、分子量が500以上の大きな物質や、脳に障害をもたらすような物質は、基本的には通さないようになっています。

 タイトジャンクション以外にも、内皮細胞の中を細胞内小器官の中に取り込んで、脳へと運ぶトランスサイトーシスという機能もあります。これは年代によっても通しやすさが異なり、小児期にはこの機能が高いため、さまざまな薬剤にも影響を受けやすいと言われており、投与量の検討が必要な場合が多いのです。

 BBBは加齢と共に機能が低下することが分かっており、また様々な影響で、タイトジャンクションが開いてしまい、本来は脳に入れたくない物質が、脳内に溜まってしまうことが観察されています。先日書いた腸漏れ(リーキーガット)に類似した、リーキーブレインという病態が存在するのです。

 リーキーブレインの状態が続いてゆくと、脳内にアミロイドβや、αシヌクレイン、様々なタウ蛋白などが蓄積してゆき、様々な認知症の原因となってしまいます。脳に霧がかかったような、すっきりしない機能低下(ブレインフォッグ)の原因にもなります。

 リーキーブレイン(BBBの機能不全)を起こす原因は多岐に渡ります。動物実験で確かめられたものとしては、血流障害(脳梗塞)、高血圧、高血糖、そして全身性の慢性炎症です。そして近年では、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症、多発性硬化症、統合失調症などの精神・神経変性疾患において血液脳関門機能の異常が報告されるようになっています。

 つまり精神、神経変性疾患のコントロールのためには、、リーキーブレインにならないような生活が重要ということになります。皆様ご存知のように、認知症や精神疾患は薬だけで治る病態ではありません。APS細胞技術が進歩しても、脳細胞は、全て入れ替えることはできないため、今まで生きてきた神経細胞に、毒性物質が溜まらないようにしてゆくことしかないのです。

 それではリーキーブレインを引き起こす、生活習慣について述べてゆきます。これには3つの種類があります。一つ目は運動不足や睡眠不足などの、基本的な生活習慣の乱れ 二つ目は体内の慢性炎症を起こすもの、3つ目が栄養素やホルモンなどの不足です。

 運動不足はリーキーブレインの引き金になります。運動は脳内のBDNFの分泌を促し、海馬や前頭葉の神経細胞を増やしてくれるため、週150分(1日30分×5日)の有酸素運動と週2日の筋力トレーニングがお勧めです。定期的に行うことが重要です。マラソンのようなあまり激しい運動は、コルチゾールを分泌させ、BBBの破綻に関与するため、逆効果になることがあります。適度が重要です。

 睡眠不足も、コルチゾールを出しますし、飲酒も同様です。夜更かしせずに、毎日の睡眠リズムを守ることや、夜ブルーライトを見ないこと、スマホをベッドに持ち込まないことなどを徹底し、朝は朝日を浴びて、セロトニンを分泌し、夜のメラトニン合成を促しましょう。

 体内の慢性炎症の原因も様々です。感染によるものも報告されており、特にコロナにおいては、後遺症の一つにブレインフォグや、認知機能の低下が見られます。慢性副鼻腔炎や、慢性上咽頭炎、歯周病による虫歯菌(P.ジンジバリス)の菌血症などは、アルツハイマー患者の脳内でも菌が見つかることから、BBBを破綻させてしまうものと認識されています。

 腸内のカンジダ(真菌)の増殖は、リーキーガットを引き起こすことから、腸内の異種蛋白やペプチド、毒物が血液中に入って慢性炎症を起こし、その結果リーキーブレインも引き起こします。砂糖はカンジダの大好物なので、過剰摂取ではカンジダを増殖させやすくなります。

 慢性炎症を引き起こす食べ物は、BBBを破綻させ、認知症を起こしやすくします。脂質で一番悪いのはトランス脂肪酸です。BBBの内皮細胞の細胞膜に取り込まれれば、機能不全を起こしてしまうのです。次はオメガ6です。全身の炎症を引き起こします。現代の食生活では非常に多く摂取しているため、なるべく減らす努力が必要です。

 小麦のグルテンと乳製品のカゼインは、リーキーガットのところでも出てきましたね! グルテンが増やすゾヌリンは脳の毛細血管のタイトジャンクションも開きます。腸漏れで炎症物質が体内を循環するだけでなく、グルテンやカゼインはグルタミン酸を含むため、脳のNMDA受容体にも作用して、神経細胞を傷害しやすくなるのです。

 蒼野自身も、小麦と乳製品をなるべく避ける生活にしてから、物忘れが減った経験があるため、食べるにしても時々のご褒美や楽しみに留めておくことが大事だと信じています。もしこれらの影響を知りたい場合には、2~3週、食べないようにしてから、一気に食べてみてください。身体は正直ですので、その声をよく聞くと、影響が分かると思います。

 砂糖や果糖、特にブドウ糖加糖液糖などは、炎症の元となる血糖スパイクを作り、インスリン分泌を促し、体脂肪を蓄えます。内臓脂肪が多くなってくると、脂肪細胞から炎症性サイトカインが放出されるので、体内炎症は続いてゆくので、こちらも要注意です。

 最後に栄養素不足でも、BBBは破綻しやすくなります。葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12などが不足すると、体内のホモシステインが増加し、血管と脳を傷つけます。ビタミンDは日本人では不足が指摘されていますし、マグネシウムも不足気味です。ナイアシン、CoQ10、鉄などの不足も、ミトコンドリアからエネルギーが作れなくなるため、ブレインフォグにつながります。

 アルコールや糖質の過剰摂取からの、ビタミンB1不足も、エネルギー不足となります。甲状腺ホルモン不足も代謝が悪くなるため、BBBの機能低下と同時に、認知機能低下をきたします。こういったことに気を付けて、加齢と共に低下してしまうBBBの機能を保つことが、認知症を防ぐ方法となるのです。

 要素が多すぎて、頭に入らない人は多いと思いますが、体に悪いものは避けて、良いものを摂り、適度な運動をして、よく眠る事が重要ということを確認頂ければ十分です。BBBを守り、脳細胞を守ってゆくことが、加齢と共に、増加してゆく認知症を防ぐ方法ですので、40代になったら、予防を意識してゆきましょうね。

 死ぬまでクリアな頭を維持したいので、自身の脳細胞の老廃物を消し去りたいと願う蒼野でした!

https://blue-zone-life.com/リーキーガット症候群!/

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