コロナ後の軽い不調に使う漢方!

2022/12/16

 今季最大寒波に襲われている日本ですが、皆様が住んでおられる地域ではいかがですか? 福岡は週半ばから冷え込みがキツくなっています。寒くなると、体温が下がりやすく、下がると免疫力が下がるため、風邪をひきやすくなります。先日蒼野の勤める病院の発熱外来でも、インフルエンザが陽性になった方も居られ、コロナ第8波とも相まって、これから一層注意が必要かと考えています。

 今日は、インフルエンザとコロナの話題をいくつかご紹介します。世の中の風潮はアフターコロナ、ウィズコロナとなっていますが、まだコロナは、インフルと同じ感染症5類扱いにするのは時期尚早との専門家の見解が、12月14日の厚労省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで公表されています。

 感染者が増えたことと、ワクチン率の増加で、重症化率は確かにインフルエンザに近づいてきています。しかし感染力の高さが桁違いなため、医療機関への負担を考えると、今すぐに同等には扱えないと言うことの様です。後遺症に関しても明らかな違いがあります。

 オミクロン株BA.5の基本再生産数(一人の人が何人に感染させるかと言う人数)は少なくとも5人以上だろうと推計され、7~8人という推計値もよく報告されています。一方インフルエンザは、およそ2(1~3)人程度で、しかも流行期間が限定的なため、医療への負荷も限定的です。

 インフルエンザは0から15歳の感染が全体の75%であり、この年代は死亡率が低く、最も重症化しにくい年齢層です。しかし運が悪いと、1~5才の幼児には、脳炎・脳症を発症することがあります。毎年100~200人が発症し、約10~30%が死亡し、ほぼ同数の後遺症患者が出ていると推測されています。この年代のお子様がおられる方々は、特に注意してくださいね!

 働き盛りの人はインフルエンザに罹っても、滅多に死ぬことはありません。オミクロン株になっても、サイトカインストームを起こせば若い人でも死ぬことがあるのとは対照的です。高齢者ではインフルエンザの罹患率は少ないのですが、かかると重症肺炎や気管支炎に発展してしまうことも多く、二次的な病気で死亡する人が多くなるので注意が必要です。

 後遺症については、風邪やインフルエンザでも、強い倦怠感が残るME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/ 慢性疲労症候群)が稀に起こることは報告されていますが、コロナでは大きな問題になってきています。過去の例では、別のコロナウイルス感染で起こるSARS(重症呼吸器症候群)の調査で、生存者の27.1%が、感染後41か月経った時点でも、ME/CFSの基準を満たした患者がいることが確認されています。

 MERS(中東呼吸器症候群)およびSARS症例のメタ解析でも、感染後39ヶ月の時点まで19.3%に持続する疲労感を認めていました。これらのメカニズムについては、まだ分かっていないのですが、体内でウイルスが少量残存したり、体内で炎症が続いたりすることで、体内のシステムの不調が引き起こされる事などが疑われています。コロナウイルスはME/CFSを起こしやすいウイルスの様なのです。

 この10月に発表されたコロナ後遺症の割合ですが、2020~2021年のコロナ感染者のうち3か月後に症状が残っている人の割合が、ビッグデータで報告されています1)。54件の研究と2つの医療記録データベースを元に、120万人のデータを分析しています。

 3ヶ月後の時点で、継続する呼吸器系症状は3.7%、身体的痛みや気分変動を伴う持続疲労は3.2%、認知障害は2.2%でした。これらはオミクロン株以前のデータです。現在のオミクロン系列になって、後遺症の割合も少し減っているとの報告があります。イギリスの研究では、デルタ株での後遺症は10.8%でしたが、オミクロンでは4.5%と半分以下になっている様です。

 割合が減っても、全体の感染者数が多ければ、コロナ後遺症で悩む人は増えてきます。コロナ第7波は全国で1000万人が感染する大きなピークとなりましたが、ニュース報道によれば、8月の大阪府のコロナ後遺症の相談件数は3000件を超えたそうです。後遺症が残りやすい人は、高齢者と重症からの回復者、軽症例でも女性に多いことがわかっています。

 現在のオミクロン系列の後遺症で頻度が高いものは、咳と倦怠感です。中でも強い倦怠感で動けなくなる様な、ME/CSFや、集中力や思考力、記憶が低下するBrain Fogの後遺症が出ると、仕事もできなくなるので、人生が変わってしまいます。心配や不安なども相まってメンタルもやられ、患者様の苦しみは如何ばかりかと思います。

 後遺症は時間と共に減ってきますが、3ヶ月を過ぎてくると、長く遷延することが多い様です。6ヶ月以上も残ってくる症状としては、やはり極度の倦怠感と抑うつ感が主となる、ME/CSFそっくりの病態が多い様です。コロナがきっかけで、難治性の疾患であるME/CSFが、これからも増えてくる可能性があります。軽症でも後遺症が出る人もおられるのです!

 治療法はまだ確定した物が無いのが辛いのですが、蒼野としては、感染後の初期に倦怠などの症状がある場合に、まずやってもらいたいのが、鼻うがいと漢方薬の内服です。お臍の左側を軽く押してみて、大動脈の拍動を触れる様な場合には、感染後に交感神経が昂っています。こういう場合には神経を落ち着ける漢方から使い始めると良い様です。

 もともと元気なタイプであれば、柴胡加竜骨牡蛎湯、虚弱なタイプであれば桂枝加竜骨牡蛎湯、不眠が強い場合には、抑肝散、胃腸が弱いタイプであれば抑肝散加陳皮半夏が良いです。いずれも薬局や通販でも手に入るので、近くに後遺症外来が無い人は試してみる価値があると思います。

 腹部の動悸が触れない場合には、補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯などを試しましょう。補中益気湯は栄養ドリンク的な漢方で、少しだるい様なタイプに使います。十全大補湯は髪が抜けたり肌がカサカサするような人の少し重たい倦怠に使ってみましょう。集中力や思考力などが落ちているときには、遠志の入った人参養栄湯を試して欲しいです。これらも購入可能です。

 もちろん全員に効く訳では無いですし、申し訳ないのですが、蒼野が効果を保証することもできません。でもちょっと症状が残っていて気になると言う方には、自分で買って試せるので、何もしないよりも良いのではないかと思います。同時に炎症が残りやすい、上咽頭を洗い続けることも続けてゆきましょう。

 もちろん全く動けなくなるとか、脳が働かず仕事ができなくなったような場合には、後遺症外来を受診して、ちゃんと診断してもらい、仕事を休んでしっかり療養するのが重要です。自分で薬を飲むのが不安という方も、受診をお勧めします。

 感染者数がこれからも増えてゆけば、大変な思いをする後遺症の方も増えると思います。ポストコロナと言っても、やはり予防するのに越したことはありません。必要以上に恐れて、行動制限する時期は過ぎていると思います。楽しいことは行いながら、可能な予防策を心がけてゆきましょう!

 インフルエンザも含めて、予防は体温を保つこと、室内の湿度は50~60%、睡眠を十分とって、無理をして疲れすぎないこと、手洗い、うがい(鼻うがい)、顔洗い、そして人混みでのマスク着用です。運動や食事、生活リズムが大事です。皆様ご存知のことばかりですよね!

 今年は3年ぶりに実家に帰る予定の蒼野一家です。親世代にうつさないためにも、感染予防は怠らないように気をつけます。これから冬本番、皆様も十分気をつけてくださいね!

参考文献:
1)Estimated Global Proportions of Individuals With Persistent Fatigue, Cognitive, and Respiratory Symptom Clusters Following Symptomatic COVID-19 in 2020 and 2021. ; JAMA 2022-10-10. https://doi.org/10.1001/jama.2022.18931

参考ページ:
2) 新型コロナウイルス感染症 診療の手引き  罹患後症状のマネジメント
   https://www.mhlw.go.jp/content/000952747.pdf

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