コロナ後遺症の対処法!

2022/11/04

 今日は昨日の続きで、コロナ後遺症に対する、現在行われている治療について解説したいと思います。まずは昨日のおさらいです。海外の3ヶ月以上続くコロナ後遺症の確率は6%台で1年後にも続いている人は1%程度であること。女性が2倍程度多いということ。軽症であっても、感染後時間が経ってから出現することがあることが分かってきています。

 時間が経って後遺症が出てくることがあるというのは、厄介ですよね! これは蒼野も不思議に感じる部分で、ウイルスによって壊れたことだけが後遺症になる訳では無いということだと思います。後遺症のメカニズムを調べていて出てきたのは、免疫システムの不調でした。

 京都大学免疫細胞生物学の上野英樹教授は、およそ2500人の後遺症患者の血液を調べていて、免疫細胞の数が普通で無くなっていることに気づきました。ウイルス感染が起こると、身体はT細胞が、感染した細胞を攻撃して排除します。同時に免疫が暴走しないようにTレグ細胞という免疫抑制の役割のあるT細胞も出てきてバランスを取ります。

 強い倦怠感が続く女性の場合は、ウイルスを排除するT細胞と、その働きを抑えるTレグ細胞の両方が過剰に作られることで免疫が暴走しています。アクセルとブレーキの両方を踏んでいるような状態となり、うまく体内に残ったウイルスのカケラが排除できない状態になっていることが分かりました。

 また嗅覚や味覚障害だけが残る患者については、ウイルスを排除するT細胞が極端に少ないことが発見されています。免疫反応が乱れることによって、身体に残るウイルスの爪痕が、なかなか取り除けないことが後遺症の原因になっている可能性が示唆されているということです。蒼野はこれを読んで、ウイルスのカケラの中には、先日書いたウイルス感染後のゾンビ細胞も関与しているのだろうと思いました。

 また男性の場合は、ウイルスに感染しても、ウイルスを排除するT細胞があまり作られない人がいます。その場合感染後もウイルスのカケラが排除できずに、不調が続く可能性があることも分りました。一般的に男性は他の風邪のコロナウイルスでもT細胞の反応が弱いようです。

 女性は関節リウマチが多いなど、自己免疫疾患が多いことが知られており、免疫反応が男性とは異なることが、コロナ後遺症が出やすい原因では無いかと推測されています。しかし一旦後遺症が出れば、男性のほうが全身に散らばったウイルスのカケラを排除しにくいために、症状の回復が遅い可能性があるとのことです。

 新型コロナの株の違いでは、弱毒化したオミクロン株後遺症患者は、初期の病原性が強い株に感染後の患者に比べて、ウイルスを排除する免疫細胞が極端に少ないことが分かりました。身体に残るウイルスのカケラの排除が進まないために、後遺症が長引く可能性があると推測されているのです。第7波が大きかっただけに、今後の患者数の増加が心配ですね!

 イギリス保健安全局は2022年2月15日に、ワクチンの接種によって後遺症が軽く、短期間で済む可能性があるという報告をしています。後遺症の発症が半分になると見られています。また女性の場合は後遺症が出た状態でワクチン接種を行うと、改善する症例が有るそうです。女性の嗅覚・味覚障害や息苦しさ・動悸といった症状は、接種によって免疫のバランスが整うため早く改善に向かう可能性があるのです。男性では改善は見られないとの事ですので、副反応が酷くなければ、特に女性は、ワクチンを打ち続けておくほうが安心かもしれません。

 新型コロナの後遺症は、様々な病態が関与している可能性があるため、治療は一筋縄には行きません。後遺症外来での訴えは、多い順に倦怠感、気分の落ち込み、思考力の低下、頭痛、息苦しさ、不眠、身体の痛み、などと続きます。

 10歳以下の子どもについては、「立ち上がるだけで脈拍が30~40くらい上がる」「10分と立っていられない」といった「体位性頻脈症候群(POTS)」と考えられる症状が特徴的です。そのほか腹痛や下痢なども多く見られます。

 こういう原因が分からないけど、症状は似ているといった病態に使える薬は、漢方以外にはありません。特に倦怠感とか気分の落ち込みなどは、身体の疲労や脳疲労というエネルギーの不足から起きやすいのです。漢方的には『気虚』という病態となり、人参と黄耆が主な生薬となります。

 人参は身体の中にエネルギーを増やす生薬です。黄耆は身体から抜けやすいエネルギーを身体に留めてくれる作用があり、これを組み合わせた薬が参耆剤です。コロナ後遺症でもよく使われれます。西洋病名としてはうつ病やうつ状態に適合する薬でもあります

 具体的には軽い倦怠の場合はOTCでも売られている補中益気湯から使いましょう。本に書いてある適応は、「消化機能が衰え、四肢倦怠感が著しい虚弱体質者とあります。疲れたなと思うときに気軽に飲める薬でもあり、蒼野も時々服用します。免疫を整える作用も報告されています。

 倦怠が強い場合、寝込んでしまうような場合には人参養栄湯を使います。この薬は気虚だけでなく、血虚と津(水)虚、つまり貧血や筋力低下、体内水分バランスの悪化といった、より広範囲に調子が悪くなった状態に対応します。加齢によるフレイルなどにも対応可能な、気血水全虚に効く、ある意味万能薬です。

 コロナ後遺症は職場や周囲の理解が得られにくく、働けなくなったり、学校に行けなくなったりと、自分のやりたい事が全てできなくなったりするため、メンタルヘルスに重大な影響を及ぼします。精神的なサポートが、より必要な場合には、先日オキシトシンを出す薬として紹介した、加味帰脾湯が適応になります。抑うつに使うと、3~4週間目くらいから、徐々に気分が晴れてくる薬です。

 嗅覚障害には、参耆剤ではありませんが、当帰芍薬散が著効する場合があります。3ヶ月の服用で3割、1年続ければ約8割に改善が見られたとの報告があります。高齢者では、匂いがなくなると、食欲低下からフレイルにも繋がりますので、ぜひ改善したい後遺症になります。

 小児の体位性頻脈症候群に関しては、気虚+血虚による自律神経失調から生じていることが多く、まず使いたいのは苓桂朮甘湯です。心を安定させ、水分のバランスを整え、起立性調節障害にも有効です。補中益気湯も合わせて使うのも有効です。

 免疫と自律神経を整えるという意味で、コロナ後の上咽頭炎の治療も重要です。上咽頭擦過療法(EAT あるいは Bスポット療法)はかなり有効な方法です。海外では行われていませんが、日本では50年前から行われており、安価で安全な方法です。過去ブログご参照ください。

 自宅でできる方法としては、鼻うがいです。1日2~3回、体温程度の温かい食塩水(濃度0.9~2%の食塩水)を使った鼻の中を洗浄します。市販のキットを使っても良いです。これも上咽頭炎の改善に有効ですので、コロナ後はしばらく行っていただきたい方法です。

 ブレイフォグに関しては、字や道路標識を見ても意味がわからないなどの症状が出て、生活に大きな支障が出てしまうのですが、研究で後頭葉の血流が実際に低下しているのが確認されています。保険適応ではなく、治療施設も限られていますが、特殊な磁気を使うrTMS治療を試すのも方法です。ブレインフォグに対して60名治療を行なった施設では、何らかの改善が見られた人が8割おられます。しかしそのうち2割はまた再発したとのことで、まだ検討の余地があるようです。

 後遺症が長く続く人の生活を支える政策は緊急で整える必要があると思います。後遺症で死んだ人はいませんが、追い詰められて自殺する人はおられるようなのです。患者数は今後もどんどん多くなると思います。現時点では、身体の免疫システムが改善するまで、できる治療を地道に行う方法しかないようです。

 感染するのは仕方ない部分があると思います。後遺症に繋がらないように、日頃から強い免疫システムを作るべく、皆様にも腸活を含めた生活習慣に十分留意していただきたい蒼野でした。

過去ブログ:
https://blue-zone-life.com/ゾンビ細胞がコロナ後遺症を起こしている!?/
https://blue-zone-life.com/コロナに殺されないために必要な事!/
https://blue-zone-life.com/慢性上咽頭炎!/

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