不快な耳鳴りの対処法!

2023/05/12

 高気圧酸素治療の関係で、突発性難聴を診るようになって、蒼野も耳鳴りの相談を受けることが増えてきました。適切にアドバイスできるように、改めて耳鳴りの対処法について調べ、書いておこうと思います。

 まずは音が聞こえるメカニズムです。音は耳から入って、鼓膜から内耳へと伝わり、蝸牛の中のリンパ液に波動が伝わります。それを有毛細胞がキャッチして、聴神経を介して脳に伝え、音を認識できるのです。蝸牛の有毛細胞はとてもデリケートで、一度傷害されてしまうと再生されません。

 突発性難聴や加齢による難聴、メニエール病、騒音性難聴、音響外傷など、聴力低下の原因は様々です。耳鳴りがある人は、「うるさい音がするので聞こえにくくなった」と思われている方が多いのですが、聞こえなくなる事で、脳がそれを補完しようとして、耳鳴りにつながる場合が多いと言われています。いくつかの仮説があり、まだ完全には解明されていないようです。

 脳はどの音域も、同じ状態で感知しようとする働きがあります。聞こえが悪くなると、その音域のボリューム(感度)を上げて、聞き取ろうとするのです。圧倒的に多い加齢による耳鳴りは、高音域から聞こえが悪くなります。、難聴を自覚するのは平均50代からで、患者層が一番多いのが70代で、75歳を超えると、半数以上が難聴になります。高音域を聞き取ろうとする脳の働きのために、キーンとかピーといった高音の耳鳴りを感じやすくなるのです。

 突発性難聴では低音域が聞こえにくくなることもあり、ザーとかジーとか蝉が鳴くなどの低音域の耳鳴りの訴えも聞かれます。若い人では大音量の音楽をヘッドフォン聴いてしまったり、コンサート会場で、スピーカーの前の席だったり、爆発などの衝撃音などによる音響外傷の場合もありますし、工場やブルドーザーの運転などの大きな音がする環境で長年過ごすことによる騒音性難聴などが原因になることもあります。

 内耳が障害されると、聴神経が過敏になることがあり、これが耳鳴りにつながる可能性もあります。音は最終的には脳で感じているため、耳鳴りの程度には、感情や注意が関係していることも指摘されています。同じように聞こえが悪い人でも、気にならない人もいれば、気になって仕方がない人もいるのです。

 耳鳴りに注目してしまう人は、注意が集中してしまうことから、余計にうるさく感じてしまいやすいと言うことです。人は今までできていた事が出来なくなったりすると、反射的にそこに注意が向かうように出来ています。そういえば蒼野の複視も、最初は辛かったです。2年も経つと、二重に見えるのに慣れてしまい、気にならなくなりました。

 耳鳴りを苦痛に感じてしまう人にとっては、注意はずっと耳鳴りにフォーカスしたままになってしまいます。「今日の耳鳴りはどうだろう」と注意を向けてしまうと、余計にひどく感じてしまいやすいのです。これは脳の病気や悪い病気ではないのだろうかなどと、不安が強くなると、耳鳴りは余計に苦痛になります。

 苦痛を感じると、自律神経が乱れます。そのために不安や不眠、動悸や緊張などを伴うようになると、苦痛→注目→ストレス→苦痛というネットワークが脳内にできてしまう為、耳鳴りの悪循環から抜けられなくなり、どんどん耳鳴りはひどくなり、治りにくくなってしまいます。

 『病は気から』とも言いますが、加齢によるものも含めて、聴力障害自体は治りにくいため、耳鳴りの対処法にはカウンセリングが重要です。お年寄りに耳鳴りの訴えは、蒼野もよく耳にしましたが、今までは「お年だから仕方ないですね、気にしないのが一番です」とお話ししていました。もう一歩踏み込んで対応しなければなりませんでした。

 大きな病気の前触れかもとか、この苦痛が一生続くのではないか、という不安を、耳鳴りのメカニズムをちゃんと説明して、気にしなければ慣れてしまうことをお話しするべきですね! ずっと不安を抱えていると、気分が落ち込み、やる気がなくなり、うつ状態へと悪化する事があります。耳鳴りに抗うつ剤が有効な理由もわかりますね!抗不安薬、睡眠薬などが効くことも多いようです。

 カウンセリングで、耳鳴りの発生のメカニズムを理解してもらい、耳鳴りが将来の病気につながらないことが分かれば、それだけで治療が必要なくなる人も多いようです。ただ「年のせいだからあきらめましょう」「治らないから一生付き合っていくしかありません」などという説明だけではダメですね! 耳鳴りに注意を向けなければ、慣れてしまうので、苦痛を感じることがなくなります。

 現時点では耳鳴りの特効薬はありません。今行われている治療としては、生活空間にホワイトノイズなどを流し続けて、耳鳴りの他にも他の音が聞こえ続ける環境にすることは効果があります。川のせせらぎや、波、雨などの自然音がオススメです。脳が慣れてくるので、半年~1年間くらいで、耳鳴りの音が小さくなります。

 補聴器を使って、聞こえ自体を改善してやれば、聞こえない部分を補っていた脳の興奮が治り、耳鳴りが軽減します。起きている時は常時補聴器をつけて、徐々に音量を上げて慣らします。最初はうるさく感じる事が多いようですが、3ヶ月くらいで脳が適応し、耳鳴りが気にならなくなるのです。この方法は専門医や補聴器の取り扱いを熟知する言語聴覚士のいる専門機関でないと難しいようです。

 耳鳴りの治療は、0ー100思考では上手くいきません。完全に治そうとは思わず、日々の耳鳴りの増減に注目せず、鳴っていても大した事ないので気にしない、というのが、最も良い対処法のようなのです。耳鳴りに注目せずに、それ以外の事に目を向けて、毎日楽しむのが最善の治療になります。

 突発性難聴になって、高気圧酸素治療をされている人が、胃がもたれると言われたので、今日胃カメラを撮ってもらいました。多発性の胃潰瘍が見つかって薬を出しました。やはり急に聞こえなくなって、うるさいのを気にしておられます。相当なストレスを感じておられるのかもしれません。

 聴力自体を治してあげられれば良いのですが、なかなか難しい疾患です。次回にしっかりカウンセリングを行おうと思った蒼野でした!

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