今日は栄養不足で代謝が低下している状態について解説してみたいと思います。昨日は友人からの相談、今日は外来でそんな中年女性の悩みを聞きました。2人とも細くて生活習慣病とは無縁な印象ですが、少食で、貧血があります。1人は腎機能がやや低下しており糖尿病治療中です。
2人とも意思が強い方で、若い時から太りたくないのもあって、小食を通してきています。人間誰しも年齢と共に代謝は落ちてゆきます。代謝とは、我々の体の中の様々な反応です。生命を維持するために、食べ物と酸素からエネルギーを生み出して、細胞を新しくする新陳代謝や、体温や免疫力の維持、内臓や筋肉の活動を支えるものです。
つまり代謝が悪くなると、エネルギーが使えなくなり、身体の機能も低下しやすくなってしまうのです。冷え性になったり、風邪や病気になりやすく、暑さ寒さに弱くなり、身体がだるくなります。普通の量の食事で太りやすかったりもします。水を飲んでも太るというのは、代謝が相当低下した状態です。
つまり車の燃費のような物です。代謝が良く、どんどんエネルギーを生み出して、バンバン走る車は活動的に過ごせます。しかし代謝が悪く、エネルギー不足の車は、全て省エネモードで、走り回らずにじっとしていることで、エンジンを止めずに過ごすことができるのです。
食べないダイエットは、代謝を落とします。人類の飢餓の歴史の中では、獲物が取れない間も、命を繋ぐために、代謝を落とす必要がありました。エネルギーを節約して細々と生き延びてきたのです。太りたくなくて、若い頃から少食でいたりすると、中年期になって、生理的に基礎代謝が落ちてくると、食べた物がエネルギーに変えられず、脂肪に変わってしまうのです。
食事量が少ないと、必要な栄養素も摂れません。今日外来でみた方は、鉄欠乏性の貧血でした。水分摂取も少なく、食事は夜だけご飯を食べますが、朝は飲み物で昼はサラダでした。中性脂肪は少なく、血糖も低いのですが、2年前から血圧が高くなり、診察室でも142/120mmHでした。果物も食べないとの事ですので、タンパク質とビタミンCの不足で血管のコラーゲンが不足して、血管が硬くなり、下の血圧が高いのではないかと思いました。
幸い脳MRIには全く異常は無く、薬はまだ飲みたくないとの事なので、栄養指導、飲水指導、運動指導、入浴指導、睡眠指導を行なって、様子を見ることになりました。デスクワークの座りっぱなしで、仕事上のストレスも強くなっているとのことで、特に運動習慣をつけて、3食栄養のあるものを食べるようお話ししました。
昨日相談を受けた方は、直接診察していないので、おそらくということにはなるのですが、仕事熱心で、食事も抜きがち、全身の冷え性で、貧血があり、下痢気味、少し食べるとすぐに太るそうです。細身でBMIは19程度、糖尿があり、腎機能も軽度低下が見られるようです。主な食事はコンビニで調達しておられ、すぐに全身のあちこちが痛くなり、このままでは大きな病気で動けなくなるのではと心配されているようです。
こうしてみると2人とも、代謝が低下していて、エネルギー不足、特に後者の方は、慢性下痢があり、ほとんど栄養が吸収されていないように感じます。こちらの方は、漢方的には、気虚+瘀血の状態と考えられるので、血流改善、貧血改善、下痢改善のために、ベースで当帰芍薬散を飲んでみるようお話ししました。
それでは、代謝が低下している状態の対処法を、生活習慣の点から説明したいと思います。まずは身体を温めましょう。身体が冷えたままだと、さらに血流が悪くなり、代謝が下がる悪循環となります。湯船には浸かるようにしましょう。もちろん温泉や岩盤浴も有効です。
冷たい飲み物は少量にとどめ、白湯や温かいお茶を飲みましょう。水分はしっかり摂ることが重要です。特にお茶のカテキンやコーヒーのカフェインは、代謝改善効果もあるためお勧めです。水分不足は循環を悪くします。1日に必要な水分量は、体重×35ml程度を目安に考えましょう。
次はお腹の調子、腸の状態を改善しながら、十分な栄養を摂ることです。下痢や便秘の状態では、栄養が吸収できないばかりか、老廃物や毒を再吸収してしまいます。リーキーガットにならないように、加工食品や小麦、牛乳や砂糖は控えめにしましょう。野菜中心に、食物繊維と発酵食品の多い和食をよく噛んで食べましょう。運動でストレス発散することも、大きなポイントです。
エネルギー不足を解消し、代謝を上げるには、朝食を摂るのは大事です。バランスよく、少量からで良いので、3食食べるのがお勧めです。たんぱく質は食べるだけで熱を作ってくれます。筋肉をつけてゆくためにも、体重×1.5g位摂れるのが理想です。少食の人は、最初は食べれないと思いますが、徐々に近づけていきましょう。
胃腸の調子が上がってきたら、代謝を上げる生姜や唐辛子、ターメリックやシナモンなども取り入れましょう。料理としては、鍋料理や、毎食具沢山の味噌汁、野菜スープなど暖かい汁物が鉄板です。たんぱく質豊富な食材、鉄分を含む食材を意識しましょう。甲状腺機能を上げて代謝を改善する、海藻や魚などのヨウ素を含む食材も必要です。
睡眠も本当に重要です。個人差や年齢差はありますが、6時間半から7時間くらいの睡眠時間は必要な人が多いです。毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることで、ホルモン周期が整い、自律神経が切り替わりやすくなって、昼間の代謝が上がります。朝しっかり朝日を浴びるのも、とても重要です。
最後は運動です。代謝が低いうちは、ストレッチだけでも行いましょう。朝軽く体操して、関節を動かしやすくする習慣は、歳を取っても動ける身体でいるために、必要不可欠です。運動習慣が無い人は、椅子に座ったままの腿上げ、立って踵あげ、片足立ちなどから始めましょう。時間を見つけて歩いたりすれば、身体が暖かくなり、代謝が上がってきます。
座りっぱなしはいけません。ちょこちょこ立ったり、家事で身体を使ったりすることを意識しましょう。最終的には筋肉をつける運動で、代謝は上がります。徐々に疲れにくくなり、風邪もひきにくくなり、冷え性が治ってきます。食べても太りにくくなり、食事も楽しめるようになるのです。運動習慣をつけるのには、時間がかかりますが、良い人生を送るための必須事項ですので、身につけてしまいましょう。
くれぐれも、自分の基礎代謝よりも食べないようなダイエットは行わないでください。例えば40歳女性であれば、基礎代謝の1140kcal/日よりも食べない日が続けば、代謝は低下してゆき、悪循環にハマります。若い女性のシンデレラ体重がもてはやされますが、蒼野としてはとても心配です。
特に妊娠した時に食べないと、赤ちゃんの遺伝子スイッチが、エネルギー節約にシフトし、肥満や生活習慣病に罹りやすくなるからです。また代謝が悪いまま生活している人は、今日の2人のように、不調を抱えながら、生活することになります。
生活習慣を一度に変えるのは難しいですが、ひとつづつ取り入れて、パワフルな人生を手に入れ、仕事や、遊びを思いっきり楽しみましょう。事故以来、生活習慣が徐々に整い、元気な毎日に幸せを感じている蒼野でした。
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