糖尿病かも?の対処法!

2023/01/10

 今日は昨日の続きで糖尿病の治療に踏み込んでみたいと思います。ここでは糖尿病の大半を占める2型糖尿病について調べてみます。食事や運動などの生活習慣で、インスリンが出続けるために、インスリン抵抗性が出現し、血糖が下がりにくくなった初期の状態の治療についてです。

 蒼野は脳卒中後の外来フォローで、糖尿病の人も沢山見てきたのですが、糖尿病専門医ではありません。手に負えない血糖コントロールが悪い方については、もちろん専門医の先生に紹介していました。ですから全ての糖尿病の治療が的確にできる自信はありません。ただ最近では新たなデバイスや生活習慣に関する新しい知見が出てきていますので、それを紹介したいと思います。

 糖尿病の治療で大事なことは、血糖値のコントロールです。これは薬を飲むだけでは中々改善しないことが多いです。コントロールが悪く、慢性的に血糖値が高い状態が続くと、神経や眼、腎臓などの糖尿病の恐ろしい合併症が出てきます。またアルツハイマー型認知症のリスクもとても高まります。合併症が出てからでは、本当に不自由な人生になってしまうため、治療を放棄せずに、適切な血糖値を保つことが重要なのです。

 糖尿病と人類の歴史は古く、約3500年前の紀元前1500年頃、古代エジプトのパピルスに既に糖尿病と思われる病気の記載があります。豊かな王族が本能に従って生活すると糖尿病になっています。昨日書いたように、ヒトは豊かな生活環境に置かれれば、糖尿病になってしまう人が多くなるのです。日本では藤原道長が糖尿病であったことが知られています。

 治療については1921年にインスリンが発見されてから、数々の研究が行われ、数々の血糖降下剤が出てきています。現在では糖尿病の病態も細かく分かる様になってきて、アルゴリズムに従ってまずは低血糖を起こしにくい安全性を優先した糖尿病薬を選ぶ様になっています。その上で合併症予防に必要なHbA 1c7.0%以下を目指す事になります。

 ちょっとマニアックになってしまいますが、糖尿病の病態を分類し、肥満度が低く日本人に多いインスリン分泌が弱いタイプでは、血糖値に応じたインスリン分泌促進作用を持ったDPP4阻害薬や、肝臓からの糖の放出を抑えるビグアナイド薬(メトホルミン等)から使うことが多いです。

 BMI25以上で、肥満度が高くインスリン抵抗性が想定される場合には、腎臓での糖の再吸収を抑え排出してしまうSGLT2阻害薬や、メトホルミン、血糖値に応じたインスリン分泌促進作用があり、体重減少効果が期待できるGLP-1受容体作動薬、ミトコンドリア機能を改善することで、インスリン抵抗性を改善し、分泌能を高めるイメグリミンなどが選択されます。

 良い薬が沢山できてきているとは言え、糖尿病患者数は右肩上がりであることに変わりはありません。血糖が高くても、糖尿病初期には自覚症状はほとんどありません。喉が渇きやすかったり、水分摂取が増えて、尿量が多くなったり、お腹の減りが強くなったりする程度です。

 日本人で糖尿病が強く疑われる人は12.1%、糖尿病の可能性を否定できない人も12.1%で、それぞれ1000万人ずついると言われていて、これからも増えてゆくとされています。医学の進歩もあり、糖尿病になっても寿命は伸びていますが、ずっと病院に通い続けて、薬を飲み続けるのは辛いと思います。なんとか生活習慣で対処したいものです。

 実際には、自覚症状が無いために、放置したままの人や、途中で治療をやめてしまう人も少なくありません。食事を我慢して、運動もして、薬も飲んで血糖値が良くなれば、もう治ったと思って、食事も運動も薬もやめても良さそうに感じてしまいます。しかしこれがとても危険なのです。

 糖尿病は今までの生活習慣から、血糖が上昇しやすい人に起こります。人間の本能と体質から起こる状態ですので、寛解はあっても治癒は無い疾患なのです。これは肥満とよく似ています。ダイエットを一時期頑張って痩せたので、生活習慣を元に戻すとリバウンドするのと同じです。

 もちろん気持ちは分かります。せっかく頑張ったのだから、好きな様に食べて、運動もサボりたいですよね! 糖尿病も肥満も、続けて行ける正しい生活習慣を身につけて、一生続けてゆくしかありません。自分の生活習慣の中で、辛く無い方法を探す事が何より重要です。

 最近の糖尿病治療での、一番大きな進歩は、24時間血糖値が自分で分かるようになった事です。『FreeStyleリブレ』というもので、血糖値を測る針付きのセンサーを上腕に貼り付け、スマホにアプリをダウンロードして8時間に1回かざすと、自分の血糖値の推移が分かります。

 何を食べたら、どのくらい上がるのか、どれだけ運動したら下がるのかと言うのが分かると、自分で生活を工夫することができます。ストレスの影響で血糖が上がることも自覚できます。これはダイエットで毎日体重を測るのと同じです。現実が直視できると生活は改善できるものなのです。

 糖尿病食事指導を受けても、それを我慢しながら一生続けて行ける人は、非常に少ないです。糖質制限は有効ですが、これも一生続けられる人はほとんどいません。また続けることがストレスになって血糖値が上がってしまう場合さえあるのです。どのくらいなら食べて良いのか、自分が把握することが重要です。

 計りながらやって欲しいことは、食事の順番と食事時間です。ベジファースト、食物繊維や脂質が多いものなどから食べ始めることで、血糖の上昇はゆっくりになり、血糖スパイクのピークが下がる事が分かるはずです。まだ血糖が高ければ、次に食材や糖質の量も変えてみましょう

 夜遅く食べる人は、体重も減りにくいですし、朝の空腹時血糖も下がりにくいです。22時以降に食べる生活は本当に良く無いことも分かってきます。最低1日1回12時間以上食事時間を空ければ、インスリン抵抗性が改善してきます。薬を飲んでいる場合には、医師との相談が必要ですが、飲んでいなければ16時間断食は、糖尿病改善にも威力を発揮します。

 運動もタイミングがとても重要です。血糖値を下げるのに効果的な運動が、自分に効果がある事が分かれば、続けて行けるのでは無いかと思います。2017年の論文で、2型糖尿病患者64人を32人ずつに分け、毎食後15分ずつ早歩き(1500~2000歩)するグループと、1日1回食事前に45分歩くグループに分け60日続けました。

 すると毎食後15分グループでは、空腹時血糖は130→112に下がりHbA1cは7.9→7.0%に下がっていました。しかし45分グループでは、空腹時血糖は112→130に上がりHbA1c7.6→7.7%と増悪していました。せっかく歩いているのに悲しい結果です。空腹時に歩くことで食欲が増して食べてしまう事や、食後30分以内に運動しないと血糖を下げる効果がなくなってしまうことが判明しました1)。

 これはダイエットにも応用できますよね! 余分な高血糖が脂肪に変わってゆくので、沢山食べる夕食後だけでも、億劫がらずに食後30分以内に歩く習慣はおすすめです。夕食を20時までに食べる事も含めて取り入れれば、睡眠が良くなる事もあり、大きく健康に寄与すると思います。

 続けてゆくメンタルとしては、100%を目指さないことはとても重要です。血糖値をモニターして自分の血糖がどんな時に上がるのか知った上で、時には羽目を外すことも良いと思います。レコーティングダイエットならぬ、レコーティング血糖値ですね! センサーは保険で使えますので、糖尿病の方は是非使ってみて欲しいと思います。

 『FreeStyleリブレ』のセンサーは通販でも買えるようです。14日間で7000円弱。自分でも一度測定してみたいなあと思っている蒼野でした。

参考文献: 

1)Impact of Post-meal and one-time daily exercise in patient with type 2 diabetes mellitus: a randomized crossover study. ; Diabetol Metab Syndr. 9: 64. 2017

参考ページ: 糖尿病情報センター  https://dmic.ncgm.go.jp/index.html

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