ドーパミンは『ほどほど』が一番!

2023/03/21

 昨日のニュースで違法ドラッグMDMAで、逮捕された芸能人のニュースが報道されていました。また奇しくも病院の会議では、鎮痛剤ソセゴンの注射を打ってもらいに、頻繁に受診する患者様の対応についての議論が上がっていました。脳内伝達物質は、時として人間の行動を、間違った方向に向けてしまう物質でもあります。

 今日は特に、依存症に関係すると言われる脳内伝達物質、ドーパミンについて深掘りをしてみたいと思います。ドーパミンも『幸せ』の神経伝達物質です。やる気の元でもあります。何かを得たり、達成したり、「やったー」と両手を上げるような幸せの時に出てくる物質が、ドーパミンです。

 ドーパミンは脳の報酬系の主な調節因子です。ドーパミンが出ると、脳は楽しさや気持ち良さを感じます。皆様も毎日楽しく、気持ち良く過ごしたいですよね! そのためにはドーパミンを健全に分泌する方法について知っておく事が本当に重要だと思います。注意が必要なのはドーパミンに対する、報酬系の耐性です。

 何らかの行為(楽しい事)や物質(薬物やタバコ、アルコール、食べ物など)によって、脳の報酬系でドーパミンが分泌されます。それは脳にとって楽しさや気持ち良さとして記憶され、またその気持ちを味わいたい、追求したいという動機が生まれます。

 同じ事を繰り返すことによって、またドーパミンが分泌されるのですが、何度もドーパミンの濃度が高くなると、報酬系は、調節のために受容体の数を減らしてしまうのです。これがドーパミンの耐性です。同じ行為では以前よりもドーパミンの効果が感じられなくなるのです。人は回数や量を増やして、以前と同じ快感を感じたいと思うようになります。

 これを繰り返すことで、徐々に耐性は高まり、さらに大量の行為や物質が必要になります。そのために生活の質が低下し、精神的・身体的な問題が生じる場合があります。これがいわゆる依存症の状態です。快感や報酬を追求する欲求が非常に強くなり、悪循環に陥ります。場合によっては、違法だと分かっていても止められなかったり、健康を害したり、周囲に迷惑をかけても追求したりしてしまうのです

 これは誰がなってもおかしくない状態だと思います。冒頭の人たちも、なりたくてMDMA依存症になったり、ソセゴン依存症になったりしている訳ではないと思うのです。しかし一旦なってしまうと、個人の意思では、なかなか抜けることは難しいです。治療や対策としては以下が挙げられます。

 1、専門家(精神科医、心理学者、薬物依存専門家など)の治療やカウンセリングを受ける。

 2、自分の依存症について、その仕組みや症状を理解する。

 3、より健康的な行為や趣味で、ドーパミンが得られるものを見つける

 4、同じ境遇の人達のネットワークに入り、回復に向けたサポートを受ける

 5、睡眠、運動、(朝散歩)、ストレス管理などでセロトニンを増やし、ドーパミンコントロールを健全なものにする。

 6、薬物依存症や禁煙でも分かるように、再開するとすぐに同じ状態になるため、長期的に取り組み、再発リスクを回避する。

 ちなみにMDMAは、セロトニンの放出を最も強く促進し、ノルアドレナリンとドーパミンも放出させる違法ドラッグだそうです。頭が冴え渡り(覚醒作用)、気分が昂り、社交性が向上して、エネルギーが湧き出します。幸福感、愛情、親密感に包まれ、ものすごく気持ちが良い感覚に包まれるようです。しかし使用後には強い精神依存が発生し、使用を繰り返すとセロトニン神経が破壊され、心、肝、腎機能障害や記憶障害が出てきます。

 恐ろしいですね! 一回でも使うと大変なことになります。悪い人に、やせるクスリとして勧められたり、錠剤に文字・キャラクターが入っていたり,お菓子のように見えたりと、麻薬と感じさせない色や形状にしてあるそうなので、注意しましょうね。10~20代の使用者が多く、クラブやライブ、フェスで出回ることが多いそうです。使用すると懲役刑も待っています。

 他の麻薬や覚醒剤も原理は一緒です。コカインは、ドーパミンの再取り込みを阻害し、ドーパミンを増やします。覚醒剤のメタンフェタミンは、ドーパミンを大量に放出させた上で、再取り込みを阻害します。この普通では得られないドーパミンの高みを経験してしまうと、他のものでは得られないため、違法であることは承知で再犯を繰り返してしまうのでしょうね!

 話は変わって、人類は絶滅しないために、食べ物でもドーパミンが出るように作られています。飢餓の時代を生き延びるためには、何としてもカロリーのある物、身体に必要な物を、ゲットする必要がありました。そのモチベーションのご褒美として、ドーパミンが用意されていたのです。本来これは良いシステムであり、問題になることはありませんでした。

 しかし日本では、1970~90年代から、飽食の時代に突入しました。食品産業も発達し、ドーパミンを出す食材を含む食べ物は、何度でも食べたくなり、食べれば食べるほど、ドーパミン耐性が出来てもっと食べる様になります。それを見事に応用して作られているのが、超加工食品です。

 ドーパミン依存症になる可能性がある食べ物は、砂糖、脂質、塩、アルコールなどです。脂質では飽和脂肪酸とトランス脂肪酸に依存性が強い様です。どれも過剰に摂取すると健康に影響が出やすいのは、蒼野のブログの読者の皆様ならご存知なのではないでしょうか? 食べすぎるとドーパミンの耐性が出来てきます。もっともっと食べたくなるのです。

 食べ物は毎日必要な物ですから、これらの依存から抜けるキーワードは『ほどほど!』です。依存症が大きな問題になるアルコールにしても、毎日飲むと、長い年月のうちに依存症になります。週1回くらいであれば大丈夫です。晩酌ではなく機会飲酒に抑える事がポイントです。1週間空ければ、ドーパミン耐性が薄れ、少し飲めば気持ちが良くなります。

 美味しい物を、たらふく食べたい気持ちは蒼野も一緒です。時には羽目を外すのは、ストレス解放のためにも必要です。しかし毎日、毎食同じものを食べているのは危険です。特に加工食品で、ドーパミン食品のコラボばかりを食べていると病気になります。これらは腸内環境も乱し、肥満、生活習慣病のリスク満載の食べ物なのです。

 新鮮で身体に良い、健康的な食べ物に変えてゆく事が重要です。新しいことに挑戦してみるのも良いでしょう。自分のコンフォートゾーンから抜け出し、挑戦することでドーパミンは放出されます。健康的な形でドーパミンを増やすように、自分の短期、長期目標を立てて、進んでゆければ、一つの物や習慣に依存する必要は無くなります。

 我々が、快楽を求め、無意識に苦手なことを避け、楽な方法を選ぼうとするのは本能ですので、変えることは難しいと思います。しかし便利になった現代社会は、それを実現するためのモノやサービスに簡単にアクセスできる、ドーパミン経済を基盤とした社会になっています。

 スマホ依存、ゲーム依存、SNS依存というのも、最近特に増えている依存症ですよね。こちらも運動時間を減らし、考える時間を減らし、睡眠時間を減らし、身体や脳の健康に大きな影響が出てきています。いずれもドーパミン耐性が出来るほどのめり込まない『ほどほど!』が重要なのだと思います。気持ちが良くても、脳内伝達物質は出しすぎず『ほどほど』にコントロールしたい物ですね。

 老子の教えに『足るを知る!』というものがあります。2500年前にすでにある考え方ですので、ある意味、人間の性をコントロールする教えなのでしょうね! 今からますます便利で、依存の誘惑に満ち溢れた時代が来るのは確実だと思います。蒼野も『足るを知る!』を心に留めて、新しいことに挑戦してゆきたいなあと思っています。

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