夕食を早く食べれば寿命が延びます!

2023/02/04

 今日は抗老化について判明してきている新しい知見について、紹介したいと思います。蒼野は健康について考えることが多いのですが、日本人の死因になっているような病気は、いずれも加齢で増え、また加齢で全身の機能が低下することによって重症化します。ですから健康長寿=加齢による変化をいかに遅らせるかと言うことが命題だと思うようになりました。

 抗老化についてのメカニズムは色々と分かってきており、その中でも注目を集めているのがオートファジーです。オートファジーは細胞のリサイクルシステムで、古くなったり壊れたりした細胞内小器官(オルガネラ)を新しく作り替えることを意味します。常に細胞が新しくなれば、ちゃんと働いてくれるため、健康が保てるという事になります。

 抗老化のためにはオートファジーを活性化するような生活習慣をおくり続けることが重要です。オートファジーを邪魔する生活が続いてゆくと、細胞が修復されず、機能が低下し、健康を保つために必要な反応が起こせなくなり、臓器が機能低下することで、様々な病気が起こります。

 オートファジーを活性化する方法は既にいくつも分かっています。1、カロリー制限やファスティング 2、寒冷刺激 3、オートファジーを活性化する食べ物を食べる 4、適度な運動を行う などです。逆にオートファジーを邪魔する生活習慣を避けることも重要になります。ここまでは何度か紹介したのでご存じの方も多いかもしれませんね!

 今回紹介する論文は、オートファジーと概日リズム、睡眠との関係についての論文です。2021年のNatureに、キイロショウジョウバエに時間制限給餌の摂取のタイミングを変えることで、寿命に差が出るかどうかについての実験結果が報告されました1)。

 それによると1日の総カロリーは同じでも、長時間の夜間絶食になるようにプログラムされた群での寿命延長効果が報告されています。オートファジーは夜間の睡眠中に促進されています。この時間帯が満腹状態で、血中にアミノ酸が沢山ある状態ではオートファジーは働きにくくなります。これがハエの実験で寿命延長に関与することが証明されたという事になるのです。

 もちろん人間の実験では無いため、そのまま人間に当てはまる訳では無いかもしれません。しかしリコード法で、アミロイドβを溜めないためには、寝る前3時間は食べずに、朝食までの間を12時間空けることが推奨されています。その結果、認知症の回復や、発症の予防効果が上がるという報告があり、蒼野はそのメカニズムが、オートファジーが活性化することで、アミロイドβが処理されてゆくことなのだろうと推測します。

 16時間ファスティングがオートファジーを同義に考えられやすいのですが、マウスの実験では6時間食べなければオートファジーは活性化してきます。病原体などの有害物に対しても、食事に関係なくオートファジーは活性化したりするため、断食が難しいという人も、腹八分目のカロリー制限が難しい人も、食事を摂るタイミングを変えるだけで、若返る可能性があるという事です。

 1日1回、12時間の絶食さえ守れば、3食食べるのも良いと思います。基本はお腹が空いてから食べるということだと思います。ルビコンが増え、オートファジーが一気に低下するのは60代以降の様です。個人差はありますが、この年代からオートファジーを意識して生活することが健康長寿にとっての鍵になりそうです。

 夜遅く食べること、食べてすぐに寝ることはオートファジーの活性化を邪魔する事になります。眠りの質も下がりますし、朝までの絶食時間も短くなります。夕食を早めに食べ、寝るまでの時間を十分に摂ることが重要です。高脂肪食は肝臓でルビコンを作り、オートファジーを妨げますので、寝る前の揚げ物やラーメン、ケーキなどは老化の原因になるという事です。

 昔から『食べてすぐに寝ると牛になるよ』と言われますが、先人の知恵はこんなところにも生きているように思います。また西洋の諺に、『朝は王様のように、昼は貴族のように、夜は貧者のように食べよ』というのもありますが、これもオートファジーを活性化する健康習慣を指しているように感じます。

 それではオートファジーを活性化する理想的な方法について、ここでおさらいしておきます。規則正しい生活習慣を守り、概日リズムを守ることで夜間、睡眠中のオートファジーはより活性化します。毎朝同じ時間に起きて、日光を浴びるのがリズムを守る秘訣です。

 朝散歩で適度な運動を入れ、しっかり噛んで朝食を摂ります。可能であれば王様のように、一番豪華な食事を朝食にするのが理想的です。そして腹八分で抑えられれば完璧です。オートファジーを活性化する食材を増やしてゆきましょう。脂っこい食事や過度のアルコール、糖質過多は、脂肪肝を誘発し、ルビコンを増やすため、頻度を減らしましょう。

 納豆に最も含まれるスペルミジンは老化した細胞を若返らせる作用があります。味噌やチーズにも含まれています。野菜いっぱいの具沢山の味噌汁は毎日飲むのが良いと思います。ブドウや赤ワインに含まれるレスベラトロール、鮭やイクラのアスタキサンチン、ザクロやベリー類、ナッツなどに含まれるエラグ酸(腸内でウロリチンに変化)は動物実験で明らかな寿命延長効果が認められています。

 昼間は座りっぱなしは避けて、家事や時間ごとの体操、ストレッチ、移動などでこまめに動きましょう。マウスの実験では、運動によりオートファジーが上昇することがわかっています。極端な運動不足はオートファジーを阻害します。

 夕食は早めに、少量だけ摂りましょう。16時間断食ができる人は、夕食を抜くのが一番効果的なようです。寒冷刺激もオートファジーを活性化するため、湯船で温まったら、浴室を出る前に冷水を浴びましょう!高血圧の人や心臓が悪い人は、下腿だけでも良いと思います。夜遅くにはブルーライトは目に入れずに、ゆっくり過ごし、ぐっすりと眠りましょう。

 蒼野も全ては出来ていませんが、なるべく取り入れる様にしています。目に見えて若返るということはないので、効果ははっきりとはわかりませんが、中年時期と同じように毎日快調に暮らせているのは事実です。レスベラトロール、アスタキサンチン、ウロリチンなどは時々サプリも飲んでいます。

 睡眠とオートファジーの関係の詳しいメカニズムは、まだあまり分かっていません。睡眠は健康にとって重要であることは誰もが知っています。オートファジー研究の先進国である我が国では、オートファジーと睡眠の共同研究も始まるようです。今後さらに新しいことがわかってくるのがとても楽しみな蒼野でした。

参考文献: 
1)Evidence that overnight fasting could extend healthy lifespan. ; Nature. 2021 598(7880) : 265-266.

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