今日はアルコールのエンプティカロリー理論について、書いておきたいと思います。皆様は『糖質の入っていないアルコールだったら、太らない!』という話を聞いたことはないでしょうか? アルコールのエタノールは1gあたり7.1kcalあります。
サンドウィッチマンさんではあるまいし、カロリーゼロ理論はあり得ないと蒼野は思っていましたが、自分が毎日のように飲んでいた時には、その説を信じることにして、ウイスキーや焼酎のハイボールを晩酌にして、毎晩ストレス発散していました。
エンプティカロリーの本当の意味は、栄養素が含まれていないことから、栄養がないという意味合いで使われ出したことのようで、カロリーが空という意味ではないようです。お酒を飲むと身体が熱くなり、熱の産生が増えているのは事実です。
確かにアルコールのカロリーは真っ先に消費されますので、身体に脂肪として蓄積されることはないと言われています。糖質や脂質で同じ7kcalを摂った時と比べると、熱として70%程度が消費されるため、お酒だけでは、太りにくいのは確かなようです。でもお酒と一緒に肴は食べますよね!
今まで熱の発生に使われていた、お酒以外の食べ物からのカロリーは確実に温存されてしまいます。飢餓の時代を生き残った人類が、折角摂取できたカロリーを無駄にすることは考えられず、余分なエネルギーは、しっかりと脂肪に変えて貯蔵しておくのは、自然の摂理です。
アルコールが分解される過程で、中性脂肪の合成が高まることもわかっています。アルコール性の脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が過剰に溜まることを意味しています。大量飲酒はカロリー過多で太ることに加えて、耐糖能異常の悪化・高血圧・中性脂肪の上昇をきたし、メタボリックシンドロームの増悪要因となります。
それでは、どれぐらいの量を飲めば肥満につながるのでしょうか? 世界各国のさまざまな肥満に関する研究結果をまとめた論文では、過量の飲酒は体重増加につながるとされています。しかし2020年の論文では少量の飲酒でも体重増加につながることが報告されました。
韓国の20歳以上の約2700万人のデータを解析した、この研究によると、1日当たり缶ビール(355mL)半分以上のアルコール摂取で、肥満やメタボリックシンドロームのリスクが高まりました。飲む量が多くなるほど肥満リスクは高くなったのです。
お酒が糖質のあるビールだから太ったのだと思われるかもしれません。糖質ゼロの缶ビールなら太りにくいのでしょうか? ビールはホップの苦味がなければ、かなり甘いお酒です。人工甘味料の甘さでも、その甘みを脳が感じると、インスリンが分泌されるため、血糖値が下がります。血糖値を上げるために、食欲が増してしまうため、糖質ゼロビールが太らないというのは幻想です。
アルコール自体にも、摂食中枢を刺激するために、空腹でもないのに食欲が高まる作用があるのです。飲み過ぎた翌日に、空腹感が強くなって、ハイカロリーなものが食べたくなるのも、その影響ではないかと言われています。
それでは太らないための飲み方はあるのでしょうか? 厚生労働省が示す、1日の節度ある飲酒の適量は純アルコール20g程度なので、焼酎なら110ml、ウイスキーなら60ml、ビールなら500ml程度です。アルコール20g=135kcalくらい! お酒に強い人なら3~5杯くらいは当たり前でしょうか? 5杯飲んだとして、コンビニのおにぎりを4個、余計に食べる計算になります。
太らないためには、出来るだけお酒の摂取量を減らすという、当たり前の結論しかないようです。それでも飲みたい時には、つまみには魚や豆腐、大根やきゅうりなどで、糖質や脂質など、カロリーになるものはなるべく控えること、翌日も抑え気味にすることなどが重要です。
お酒を飲んだ日の睡眠は質が下がるため、翌日に疲れが残りやすいのです。疲れを癒したいと思う気持ちが、報酬系が簡単に刺激される、アルコールに向かってしまい、また飲みたくなるという悪循環に陥らないよう、注意が必要です。
以前も書いたので、繰り返しになります。心疾患や脳梗塞に関しては、「適量を飲む分には死亡率が下がる」というデータがあるのですが、高血圧や脂質異常症、脳出血、乳がんなどでは少量の飲酒でもリスクが上昇し、飲む量に比例してリスクが高まることがわかっています。
WHOでもタバコの次は、健康を害する薬物であるアルコールを減らしてゆくということが次の目標になっています。海外ではアルコール規制が厳しくなっていて、常夏のハワイでも、ビーチや公園など公共の場での飲酒は禁止で、違反したら罰金が科せられるようになりました。
2018年のランセットで発表されたケンブリッジ大学の論文には、死亡リスクを高めない飲酒量は、『純アルコールに換算して週に100gが上限』とされています。また同じ年に、ランセットに『195の国と地域で23のリスクを検証した結果、健康への悪影響を最小化するなら飲酒量はゼロがいい』という論文も発表されています。
昨日の依存症のところでも、書いたように、脳の報酬系は毎日飲んでいると、同じ量では満足できなくなり、徐々に増えてくることが普通です。酒量が増えてきて、まず健康診断で指摘されるのは、γ-GTPが高くなる脂肪肝です。アルコールによって肝臓に中性脂肪が溜まってくるのです。
肝臓は沈黙の臓器と言われ、限界を迎えるまでは痛くも痒くもありませんが、ダメージが続くと肝臓の炎症が続くために、じわじわと肝硬変や肝臓がんのリスクが近づいてきます。また、飲酒は膵臓にも負担がかかるため、インスリン分泌が低下すると、糖尿病を発症します。飲酒後の翌朝は早朝高血圧にもなります。血中中性脂肪も上昇し、動脈硬化が進行します。
もう一度まとめておきます。過量の飲酒は、カロリーオーバーになりやすく、太りやすくなります、高血圧、糖尿病、高中性脂肪血症などのリスクとなり、メタボリックシンドロームの大きな原因となります。病気が出てくれば、断酒が必要になり飲めなくなってしまうのです。
お酒を減らすための、蒼野の必殺技はチェイサーです。健康のためには飲酒時に、同量の水を飲むことは重要です。脱水を防ぎ、アルコールの弊害を緩和してくれるのです。お酒を飲む時は、お酒と炭酸水やレモン水を交互に飲むようにすると、お腹いっぱいまで飲んでも、単純にお酒は半分になります。
美味しい料理と一緒に飲めば、ノンアルコールでも満足感は変わらない印象です。二日酔いすることもなく、飲み過ぎての失敗も無くなりました。飲まない日は気持ちよく眠れて、疲れも取れやすいため、慣れてくれば、毎晩レモン炭酸で晩酌するのも悪くないと思えるようになりました。
お酒の魅力は、蒼野もよくわかっているつもりです。しかし健康で、天寿を全うしたいのであれば、『リスクを知った上で気をつけて飲む』ということが求められていると思います。1日20gまでで、飲んでも週5日、週100gを超えて飲まないよう、少しずつ楽しんでいきたいと思っています。
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