引きかけの風邪を撃退する方法!

2023/01/01

 今年最初のブログです。寒いですね! 蒼野の病院の発熱外来では、コロナに加えてインフルエンザも増えてきています。どちらでもない人は普通の風邪でしょうか? 寒い季節は、免疫力が下がりやすく、どうしても風邪引きが多くなります。

 風邪引きが1日で治るか、長引いて寝込むかは大きな違いです。そこで今日は引きかけの風邪を1日で元に戻す方法について、書いてみたいと思います。一度ウイルスに対して劣勢になって、完全に風邪を引いてしまうと1日で治すことは出来なくなります。

 風邪のウイルスと免疫力が綱引きの状態になっているのが、風邪の1日目です。この時に免疫力に有利になることを畳み掛ければ、ウイルスは撃退され、風邪を引かずにすみます。その方法を知っている事が重要なのです。

 風邪を引きかけたら無理をせずに、栄養を摂って、暖かくして、しっかり休み、睡眠を取るというのが王道です。少し喉が痛い程度でこれが出来れば、風邪は1日で終わります。でも忙しく、責任もある現代人は、少し喉が痛いくらいで、休めない人は多いのかなと思います。

 少し風邪気味かなと思う時に、市販の風邪薬を飲む人は多いと思います。しかし残念ながら総合感冒薬は風邪を早く治すとか、風邪を引かないようにする薬ではありません。総合感冒薬は、鼻水を止め、咳を止め、熱を下げて、喉の痛みを抑える対症療法のための薬だからです。

 症状が軽くなることで治った気になるかも知れませんが、実はそうではありません。ウイルスを排出するための鼻水や咳を止め、ウイルスを殺すために体温が上昇して免疫力が上昇するのを邪魔をすれば、ウイルスが勢いづきて、かえって風邪は長引く事が多くなります。

 また喉が痛くなったら、いまだに抗生剤を希望される患者様も居られますが、抗生剤はウイルスを殺せないため、風邪に使っても意味はありません。いやむしろ腸内細菌叢が死んでしまい、免疫力に大きな影響のある善玉菌がいなくなれば、風邪を引きやすくなったり、重症化したりにつながりかねないのです。

 そこで蒼野がお勧めするのは、薬ならば漢方です。漢方薬は初期免疫に介入することにより、免疫系を迅速に立ち上げるとともに、過剰な炎症を抑制します。また微小循環を改善することで、組織の隅々にまで、栄養を届け、不要なものを排出させることができます。また局所で生じている水分代謝異常に作用し、水が溢れていれば排出し、不足していれば補います。

 漢方薬も最初の1日目に、間髪入れずに使うのがコツです。喉が痛い時には『桔梗湯』(ツムラ138番)が有効ですが、今コロナのために生薬が不足しているようで、手に入りにくくなっています。水と一緒に口に含んで、うがいしてからそのまま飲み込む『含み飲み』が特に有効です。

 喉も含めて少し風邪を引きかけかなと思った時には『葛根湯』(ツムラ1番)を試しましょう。日本の漢方薬の1回量は少なめですので、1回に2包使ったり、調子を見ながら2時間ごとに飲んだりするのは、引き始めの1日目の使い方としておすすめです。

 以前お薦めした、コロナのひきかけの時に使って欲しい『柴葛解肌湯』は『葛根湯』+『小柴胡湯加桔梗石膏』です。クリニックの処方では『小柴胡湯加桔梗石膏』も品薄で処方ができない医院も多いと思います。しかし小柴胡湯と桔梗石膏はそれぞれまだ買えたりするので、用意しておくのは良いと思います。この処方も1日目に2時間おきに畳みかけるように飲むのがオススメです。

 風邪の罹患期間を短くするとという研究成果があるサプリメントもいくつかあるので紹介したいと思います。まずは亜鉛です。亜鉛はインターフェロンの産生を増やします、また細胞膜を保護し、安定化することで、ウイルスの細胞への侵入を阻害するのです。コロナでもRNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスの複製を防ぐ働きがあります。

 亜鉛は肥満や糖尿病、高齢者などで不足しやすく、これはコロナの重症者リスクとも重なります。風邪に対する亜鉛サプリメント投与の研究レビュー/メタ解析では、成人における風邪の罹病期間が33%短縮し、小児5,193 人では肺炎の罹患率が13%低下し、成人2,216 人での重度の肺炎の死亡率が低下していました。

 アメリカではCOVID-19の引き始めに、高容量23mgのトローチ投与を繰り返し行うことで、24時間以内に、症状が軽減することも報告されています。1日75mg以上の用量で風邪の期間が大幅に短縮されます。亜鉛により院内死亡率が24%低下することも報告されています。風邪やインフルエンザの初期に、短期間高用量の亜鉛を取る治療が一般的に行われているようです。症状の発症から 24時間以内に亜鉛を投与すると、健康な人の一般的な風邪の症状の期間が短縮されます1)。

 風邪予防と免疫細胞の分化・調整に関する研究82件の結果、ビタミンCとD、亜鉛、エキナセアに免疫システムのバリア効果がありました。エキナセア抽出物2,400mgの4ヶ月間以上の摂取は、風邪の予防と治療に効果がありました2)。

 エキナセアは欧米で伝統生薬製剤として古くから使われてきたハーブです。免疫賦活作用や抗菌、抗ウイルス作用、それに創傷治癒作用を有するため、適応としてはかぜやインフルエンザなどの上気道感染症に使われていました。

 またエルダーベリーも、欧米やオーストラリアで使われてきたハーブで、インフルエンザに罹患した患者に48時間以内に投与すると、プラセボと比較して症状の緩和が有意に早かったという論文があります。3)

 日頃から熟成ニンニク抽出物2.56gとプラセボを120人に投与した実験では、ニンニク群でリンパ球とNK細胞の増殖が促されており、風邪とインフルエンザの症状数、罹患日数、発生率が減少しました。4)

 ビタミンDも免疫力には絶対に必要です5)。免疫の機能強化についての論文が多く、ビタミンDに関する論文も、Pubmed検索で約8万件もヒットします。日光に当たることは大事ですので、毎日散歩することや、日焼け止めを常用しないことなどは重要です。食品に含まれるビタミンDは微量のため、食事だけでは必要量が確保しにくいのです。

 カナダの病院では、インフルエンザ患者に、ビタミンDを50000IU の1回投与または10000IUを1 日3回、2~3日間投与すると、症状は48~72時間で完全に抑えられるとされています。冬はビタミンDが不足しやすい季節ですので、風邪症状を感じたら、補給したいビタミンです。

 ということで、風邪かなっと感じたら、漢方とビタミンDと亜鉛のサプリメントを多めに補給し、使いたければ黒ニンニクや古くからのハーブも追加して、しっかり睡眠時間を確保すれば、風邪を引かない確率が上がると思います。

 今年は本格的なウィズコロナの年になると思います。ウイルスは何処にでもいるので、自分なりの風邪の対処法を身に付けて、元気に過ごしましょうね! 漢方薬とビタミンD、亜鉛、エキナシアまで準備万端の蒼野家でした。黒ニンニクも買っとこうかな?

参照ページ:日本生活習慣病予防協会 新型コロナウイルス対策ー亜鉛の有用性に関するエビデンス  https://seikatsusyukanbyo.com/main/opinion/011.php

参照論文:
1)Zinc for the common cold. ; Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun 18;(6):

2)Self-Care for Common Colds. ; Evid Based Complement Alternat Med. 2018 Apr 29;2018:5813095.

3)Randomized study of the efficacy and safety of oral elderberry extract in the treatment of influenza A and B virus infections. ;  J Int Med Res. 2004;32(2):132-40.

4)Supplementation with aged garlic extract improves both NK and γδ-T cell function and reduces the severity of cold and flu symptoms: a randomized, double-blind, placebo-controlled nutrition intervention. ; Clin Nutr. 2012 Jun;31(3):337-44.

5)ビタミン D の健康効果   人間環境論集 19(2)75-101  2019

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