昨日に引き続いて、テレビのお話です。蒼野はテレビの健康情報については、自分の職業柄もあって時々「うーん?」と思ってしまうことがあるのですが、健康に詳しく無い人であれば、そうなのかと納得してしまうことが多いのではないかと感じています。
特に健康に良い食品というテーマはおおいにバズったりします。皆様もスーパーからその食材が消えてしまった記憶は無いでしょうか? その食材だけ食べておけば、万病が治る、すぐに痩せるなど、本当であればすごく便利ですよね!
振り返ってみると、紅茶キノコ、酢大豆、ココア、カスピ海ヨーグルト、にがり、寒天、白インゲン豆や納豆など一時期商品が無くなるほど売れた食品があります。このうち寒天、白インゲン豆、納豆などは明らかに、テレビの健康情報番組が火付け役でした。
寒天は2005年の「 発 掘 ! あ る あ る 大 事 典 II 」で健康的に痩せられる食品という事で紹介されました。寒天を食べれば、体脂肪、コレステロール、血圧、血糖値の全てがぐーんと低下するという主張です。
紹介された論文では、糖尿病患者76人を食前に寒天180gを食べる寒天食群と通常食群の2群で12週間過ごしたところ、空腹時血糖値、血圧、体重、コレステロールのいずれもが低下していたという物です。皆様も「寒天食べたほうが良いかも」と思われたのでは無いでしょうか?
しかし実は通常食群でも、空腹時血糖値、血圧は寒天食群と同様に低下、体重は寒天食群で73.9kgが70.7kgに、通常食群で72.9kgが71.5kgに低下していました。コレステロールは寒天食群のみで低下していました。確かに通常食群よりも改善効果が高いものはあったのですが、被験者は実験に参加するという事だけも、無意識的に不摂生を避けていたことが、改善に最も大きく寄与したと推測されています
このようにテレビ報道ではしばしば、物事の結果の一部のみをセンセーショナルに紹介する手法が使われます。考えてみれば2020年に始まったコロナでの日本人死者は2021年4月26日に1万人を超えました。毎日毎日すごい報道でしたよね! しかし2020年の全国の総死亡者数は、コロナ死亡者も含めているのに、11年ぶりに減少していた事はほとんど報道されていません。
内訳としては、超高齢社会の日本では、毎年2万人ぐらいずつ増えていた死者数が2019年に比べて9000人も減っていました。毎年インフルエンザで亡くなる人は1万人、風邪を拗らせて亡くなる高齢者も1~2万人いましたが、感染予防策の徹底でこれらが激減していたのです。確かにコロナは怖い病気ですが、自粛、自宅待機のために、認知症やフレイルが激増してしまうのはおかしな話です。
2006年の白インゲン豆はもっと酷い話です。テレビで「下っ腹やせ炭水化物食べ放題ダイ エット! 夢の粉とは白インゲン!」という放送で紹介され、終了直後に番組の紹介どおりに調理して食べた人々に、その日の夜から嘔吐・下痢の症状が出始め、158名が食中毒になりました。
白インゲン豆には炭水化物の吸収を抑えるα-アミラーゼ阻害物質が入っているため、煎って粉にしてご飯にかければ太らないという趣旨でしたが、短時間煎っただけでは、豆に含まれるレクチン等の有害物質が無害化できずに食中毒を起こしました。十分な加熱で有害物質は無毒化するのですが、十分に加熱するとα-アミラーゼ阻害物質も失活して、効果は無くなるのです。しかもα-アミラーゼ阻害物質は1kgの豆に1gしか入っておらず、動物実験で効果が出た量は、50kgの人で2.5g以上必要だったのです。
身体に良い成分が入っていて、それが動物実験で証明されたとしても、量的な問題や調理という過程を全く考慮に入れず、そのまま放送されたことが健康被害につながりました。テレビ放送の目的は視聴率を取ることです。目を惹く結果や話題によって、番組が作られることから、我々の健康を良くする事は、ある意味二の次になりやすい性質があるのです。
蒼野が子供の頃は、テレビでタバコの宣伝がバンバンあって、カッコいい外国の俳優さんがタバコを吹かす姿に憧れていました。タバコの害が一般化し、タバコ自体の宣伝は無くなりましたが、最近では「吸う人も吸わない人も」と、ルールを守るのがカッコいいというニュアンスに置き換えられて、やはりCMは続いていたりします。
我々の健康を本当に考えているのであれば、タバコと同じくらい身体に悪いアルコールについてもCMは自粛すべきですよね! WHOは2010年に「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を採択し、欧米諸国ではアルコール飲料に関するテレビCMの規制が進みました。こんなにぐびぐび飲む姿がメディアに出てくるのは日本だけなのです。
仕事終わりの一杯とか、友人が集まったら楽しく飲みながら話す、デートでワインを味わったり、実家に帰って両親と日本酒をさしつさされつなんていうシチュエーションが当たり前で、アルコールは絶対に必要だと、我々は洗脳されていないでしょうか?
テレビのお客さんは、視聴者ではなくスポンサーです。スポンサーに都合が良いことが放送され、都合が悪いことは放送されません。視聴率を上げるのも、スポンサーのためなのです。またヒトは危険なことやネガティブな事が気になる本能=ネガティビティバイアスを持っていることから、テレビの放送もネガティブな話題も多くなります。
また分かりやすいように、全てが敵と味方の分けられる「二分割思考」で番組が作られることがほとんどです。ずっとテレビばかり見ていると、我々も知らず知らずのうちにこういう考え方に洗脳されて行きます。一度失敗したり、反社会的な行動を取ったりした過去があれば、敵と見なす考え方です。
コロナの初期でも、他県ナンバーの車を傷付けたり、開店している店に嫌がらせをしたり、はたまた不倫が報じられた芸能人が締め出されたりと、自分の正義に従わないものは全て悪であり、抹殺すべきというような、生きにくい社会を作ってしまう考え方を植え付けられてしまうのです。
このようにテレビは、我々を洗脳し、認知を歪ませ、ネガティブな方向に誘導しやすいメディアなのです。ロシアではテレビは全て国営です。我々が見ている現実は、テレビしか見ていないロシアのお年寄りとは大いに異なっているはずです。テレビは強力な洗脳マシーンだと言えます。
テレビを長時間見る害は、座りっぱなしや認知症に繋がるだけでなく、メンタルや人格にまで影響があると思います。最近の若い人ではテレビ離れが進んではいますが、ネットで正しい情報を見抜くのもかなり難しいことですよね。明確な科学的根拠の示されない私見に左右されない姿勢が重要です。
人は受け取る情報の質で、判断も行動も変わってしまいます。皆様に情報を発信する蒼野としても、心して正しい情報を集めないといけないなあと、身が引き締まる思いがしています。健康情報も研究が進めば、180度変わったりします。間違っていたらその都度直してゆきたいと思います。
自分が持っている網様体不活系の能力を駆使して、できる限り新しい情報をキャッチし、出典を明示しながら、紹介して行きたいと思っている蒼野でした。
参考文献:マスメディアや宣伝広告に惑わされない食生活教育 群馬大学教育学部紀要 芸術・技術・体育・生活科学編 第 48巻 201―216頁 2013
参考書籍:テレビを捨てて健康長寿 ボケずに80歳の壁を越える方法 和田 秀樹
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