未来を決める、想像を超えた食事の影響!

2023/08/01

 最近蒼野がとても面白いと思ったことをシェアしたいと思います。皆様は星座占いとかお好きでしょうか? 生まれた月で性格が分かるって、不思議な気がします。でも結構当たるからこそ、これだけ一般的なのでしょうね! 今日はその科学的な根拠についてのお話です。

 人間の環境の中で、一番影響がある時期は、お母さんのお腹の中なのだそうです。受精卵がどんどん分裂して、さまざまな臓器ができてくる時期ですから、考えてみると納得できます。普通は生まれ月の10月10日前に受精する訳ですから、身体の基本が出来る大事な時期は、もちろん生まれ月によって異なる訳です。

 特に日本では四季がはっきりしている為、出回っている旬の食べ物も違いますし、暑さや寒さが厳しいとお母さんの運動時間が減ったりもします。そして最も影響があると言われているのが日照時間なのだそうです。太陽を浴びることで、お母さんの体内では、重要な栄養であるビタミンDが作られます。

 ビタミンDは、栄養素というよりも、ホルモンの様な働きをしています。胎児の骨、のみならず身体全部の発育に影響が出ます。身長や体重にも影響がでますし、免疫系の発達にも大きな影響があります。胎児期にビタミンDが不足していると、子供の将来の心臓病や肥満などにも影響があることも分かってきています。

 季節によって日照時間が違えば、胎児に供給されるビタミンDの量にも、それに応じた変化があるはずです。そのために全然別の遺伝子であるにも関わらず、生まれ月で似通った性格などの傾向が出るという仮説は、とても興味深いと思います。しかし日照時間は地域によっても変わりますし、お母さんによって太陽を浴びる時間や、日焼け止めの状態も様々ですから、一概には比べられないとは思いますが、今後、星座占いが科学的に分析できる様になると面白いですよね!

 胎児の時ばかりではなく生まれてからの環境も、例えば3月生まれと4月生まれでは違いますよね。生まれが1年近く違えば、4月生まれの子は背が高く、勉強なども出来やすい傾向があります。ですから一般に4月生まれは一番になりたがる傾向があるそうです。大人になるとそれが災いし、無理をしがちでストレスが溜まりやすく、血圧が上がって、心血管障害や脳卒中が多いという傾向も窺われるそうです。

 環境が我々を変えるというのは、エピジェネティックスという最近の概念です。その元になった研究は、第二次世界大戦の終わりのオランダで、飢餓を経験した妊婦の子供達が、後の統計で成人後は高い確率で肥満となり、糖尿病、高血圧、心血管疾患、微量アルブミン尿症などの病気を発症していることが判明した疫学研究です。

 1944年11月、オランダ西部では、ナチスドイツによる出入港禁止措置のため、深刻な食糧不足に見舞われ、一人当たりに配給された食料は、11月の時点で1日わずか1,000キロカロリー未満。翌年2月末には580キロカロリーまで制限されました。

 そんな中、「オランダの飢餓の冬」を経験した妊婦たちから4万人の赤ちゃんが産まれました。偶然にも、母体の栄養不足が与えうる、子どもの長期的な健康への影響を調査することができたのです。一様に低体重で生まれた赤ちゃんは、大人になると肥満し、生活習慣のリスクが明らかに高くなりました。そしてそれは孫の代にまで伝わったのです。

 これは一代の経験であっても、遺伝子の働き方が変わってしまうことを意味しています。胎児の時に飢餓を経験すると、生まれた後にも、少ししか食料が無くても生き延びれるように、自分の遺伝子を省エネモードに変化させるのです。これはエビジェネティックな変化と呼ばれています。それがそのまま飽食の現代に突入し、生活習慣病の起こしやすさに直結したと考えられています。

 少し難しい話になりますが、元々のDNA(遺伝子)は同じにも関わらず、遺伝子が読み取られて、様々なタンパク質を作る時に、環境による変化が影響します。全く同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも、よく似てはいますが、全く同じ人にはならないですよね! いろいろな環境や体験によって、遺伝子の発現が変化するのです。

 DNA情報はRNAに読み取られ、不要な部分を切り取り、必要な部分がつなぎ合わされることでタンパク質が作られます。それをスプライシングと呼びます。エピジェネティックスは、具体的には、遺伝子にメチル基がくっつくDNAメチル化や、DNAの構造を変えるヒストン修飾などが知られています。

 スプライシングの仕方を変えることで、同じ遺伝子から異なるタンパク質をつくることができます。ヒトの遺伝子は22,000個ほどですが、作られるタ ンパク質は10 万種類以上に及ぶのはこのためです。簡単に言えば、同じDNAでも環境や体験が異なれば、その発現が変化するということです。無限の可能性がありますが、同時にどんどん病気になるように遺伝子発現が変わってしまうこともあるのです。

 特に胎児の時のエピジェネティックな変化は、遺伝子の記憶として残りやすいのです。受精に近いタイミングであるほど、生じた変化は修正されにくく、オランダの例の様に、孫の代まで影響が出ることになります。そう考えると、妊娠前から妊娠中のお母さんの生活習慣は、本当に重大ですよね。

 最近の学説では、『生活習慣病胎児期発症説』(Developmental Origins of Health and Disease(DOHaD説)という説が提唱されています1)。胎生期や生後早期は環境変化によって、遺伝子が修飾されやすい時期です。その時期の環境に適応するように、遺伝子の発現が変えられ、それが続くことで、出生後の環境が合わないと、生活習慣病を起こしやすくなるという物です。

 関係があるものとしては、妊娠前の母親のBMIが15-22kg/m²の範囲内の場合、子供と正の相関関係があること2)や、妊娠中に糖質制限をすると、子供が肥満になりやすいこと3)、妊娠中の喫煙は、平均で出生体重が200g以上少ないこと4)、などが分かってきています。妊娠前~妊娠中のお母さんの影響は本当に大きいのですね!

 また、オランダの研究で、476人の赤ちゃんを6ヶ月間、普通の食事(ミルクや離乳食)と減塩の食事を行った二つのグループに分けて観察しています。6ヶ月後の平均収縮期血圧が2.1mmHg有意に低いのは分かりますが、15年後の平均血圧でも3.6/2.2mmHg、減塩グループの方が低かったという結果には蒼野はビックリしました。出生後早期に塩分の影響で、遺伝子の発現が変わって起こる現象の様です。身体は塩の記憶を何年も残しているという事になります5)。

 子育ては妊娠する前から始まっているとも言うことができます。シンデレラ体重を追い求めることが、子供さんの生活習慣病リスクを増加させることに繋がるという事は、みんなが知っておくべき知識だと感じました。胎生期に変化したエピゲノムは、孫の代まで続いてゆきます。

 蒼野は今まで、若い頃は少し無茶をしても、中年期から気をつければ健康が挽回できる様な気がしていましたが、特に幼少期と妊娠可能な時期には、おかしなものを摂取しないよう、アドバイスする必要があることに気づきました。

 加工食品は出来るだけ減らし、昔ながらの食材を、おうちで薄味に料理する事が、世の中の病気を減らす方法である事を、改めて認識した蒼野でした!

参考文献:
1)Living with the past: evolution, development, and patterns of disease. Science 2004 305, 1733-6.

2)Maternal weight prior and during pregnancy and offspring’s BMI and adiposity at 5-6 years in the EDEN mother-child cohort. Pediatr Obes 2017 12, 320-9.

3)Epigenetic gene promoter methylation at birth is associated with child’s later adiposity. Diabetes 2011 60, 1528-34.

4)Impact on birth weight of maternal smoking throughout pregnancy mediated by DNA methylation. BMC Genomics 2018 19, 290.

5)Long-term Effects of Neonatal Sodium Restriction on Blood Pressure. ; Hypertension. 1997 ; 29 : 913–917

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