元気でいるための正しい歩数ガイド!

2023/10/13

 涼しくなって歩きやすい季節ですね。蒼野家では1歳半の柴犬が、歩きたがって困ります。行きたいように散歩させると、先日のお休みには3時間も付き合わされて、21000歩歩きました。おかげで2~3日は、踵が痛かったです。今日は健康と歩行について考えてみたいと思います。

 普通の人にとって、歩行は最も取り組みやすい運動です。もちろん皆様には筋肉を増やすための筋トレもやって欲しいのですが、全員は難しいでしょうね。歩行は誰もが出来る運動ですから、サルコペニア(筋力低下)を防ぐためにも、歩行の習慣をつけることが重要です。

 人生100年時代、最後の10年を寝たきりで過ごさないためには、毎日歩くことが必要です。蒼野が見てきた健康長寿のお年寄りも、例外なく毎日歩いておられます。歩行は、人間活動の基本となる運動です。ただどのくらい歩けば良いのかという、目安を知って歩けると良いと思います。

 その答えを知るには、東京都健康長寿医療センター研究所の研究が参考になります。群馬県の中之条町で、65~95歳の在宅で暮らす町民、4400人を対象に、身体活動(歩行)と病気予防の関係について調べた研究があります。運動量をアンケートし、記入漏れがなかった2008人で検討しています。

 移動や運動、スポーツ、家事、仕事などの1日の身体活動の数値と、身体的なQOLと、精神的なQOLの得点を比較しました。結果としては、身体活動量が多い程、健康関連QOLは低下せず、身体活動が少ない群と比較して、QOLが高く保たれていることがわかりました1)。

 その後データを詳しく分析してみると、歩行に関しては、1日トータルで8000歩、そのうち20分くらいの早歩きをすれば、様々な病気にならなりにくいことが分かりました。もちろん加齢によっての個人差は大きく、そんなに歩けない人もいるでしょう。8000歩まで歩けなくても歩数に応じて減らせる疾患があることが分かりました。

 7000歩で15分早歩きなら、癌、動脈硬化、骨粗鬆症、骨折が減り、5000歩で7分半早歩きなら、介護が必要なく、認知症や心疾患、脳卒中が減少します。4000歩で5分早歩きなら、うつ病になりにくく、2000歩で早歩き無しでも、寝たきりは防げるという結果でした。

 歩数が多い方では、1万歩の30分早歩きで、メタボリックシンドロームが予防でき、12000歩40分で肥満になる人は少なくなります。それ以上歩いても、病気の予防効果は頭打ちとなり、疲れが増してゆくとのことでした。

 ゆっくり8000歩き、早歩きが0分の場合は、疾病予防効果は30%減ってしまうということです。早歩き、つまり中強度以上(3~6メッツ)の運動時間もプラスするのが効果的です。これはスポーツや家事、仕事などで確保しても良いのです。話はできるけれど、少し息が上がるくらいの運動を意識して行うことが重要です。

 目安としては、普通に会話ができる程度では低強度です。何とか会話が出来るくらいが中強度の運動になります。脈拍も少し上昇し、全身の循環が良くなります。階段の上り下りも良いですね。その刺激が、筋肉からのBDNFやマイオカインの分泌を促すことで、運動の健康効果を高めるようです。

 うちの91歳の母親の場合は、近くのスーパーまでの往復が2000歩です。寝たきりにならないために、生協でものを頼まず、毎日歩いて新鮮な物を買って食べるよう、いつも勧めています。しかし中々モチベーションは上がりません。一緒に居る時には、少し遠出して、広島駅のモールまで行くと、5000歩になります。後半になると息が上がり、座る必要が出てくるので、十分な運動量だと思います。

 認知症予防効果がある歩数でもあり、現時点で頑張れば可能な歩数なので、なるべく一緒に歩きたいと思っています。高齢になると、運動で息が上がるかどうかが一つの目安になりそうです。この辺は個人差が激しくなるので、個別に判断が必要ですね! もちろん毎日が無理でも、せめて二日に1回くらいは歩けると違うと思います。

 健康のための歩数の、年齢別の大まかな指標としては、6-12歳で12000歩、13-50歳で10000歩、50-70歳で8~9000歩、70歳以上で5000歩~8000歩くらいと言われています。蒼野は、平均すると12000歩くらいなので、スマートリングでも、毎日100点に近い点数が取れています。

 外来で尋ねると、働き盛りで、デスクワーク、車通勤の人では、忙しさもあって、ほとんど運動が出来ていない人が多いです。70歳以下の元気な方であれば、1日8000歩、20分の早歩きは、良い目標になります。車を売って、公共交通機関を使えば、少し時間はかかるかもしれませんが、否応なしに歩くので、家計にも健康にもプラスが大きくなります。これは事故後に運転できなくなって、車を売った蒼野の体験談でもあります。

 気候が良くなった秋に、歩数を稼ぐ生活習慣をつけてしまいましょう。暑い夏を過ごした身体は、血の巡りが良く、血液が末梢で温度を放出して、体温を下げてくれるため、あまり汗をかかずに早歩きすることが出来る季節です。スポーツクラブに行くのも良いですが、やはりコンスタントに出来る運動習慣が、健康に与える影響は計り知れません。

 歩くことで、万病は予防できます。動物は歩けなくなれば死んでしまいます。人間も動物です。人生最後の10年を寝たきりで過ごさないためにも、誰もが、元気なうちから、毎日歩く習慣がつけられると良いなあと思っている蒼野でした。

参考文献: 1)高齢者の身体活動•運動と健康関連QOLに関する前向き大規模疫学研究  デサントスポーツ科学 2007 Vol.28, 53-59

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