昨日はカロリーゼロの人工甘味料で太る理由について書いたのですが、それでは人工甘味料なし、糖質ゼロの蒸留酒ではどうなのか、調べてみることにしました。皆様も「ビールは太る、ハイボールなら大丈夫!」と言う言葉は聞いたことがあるかも知れませんね。本当にそうなのかどうかについて、論文も調べてみたので読んでみて下さい。
アルコールは代謝で直接脂肪に変わることはありません。体に蓄えらえないエネルギーと言う意味で、エンプティカロリーと言われています。お酒だけ飲むアルコール依存症末期の人になると、ガリガリに痩せていたりするのを、蒼野も診たことがあります。
しかしカロリーは1gにつき7.1Kcalと、炭水化物やタンパク質よりも高カロリーなのです。アルコールは、飲むと1~2時間のうちに小腸などで吸収され、肝臓などで分解され、アセトアルデヒドを経て、酢酸に変わります。酢酸は筋肉などで使われやすく、最終的に水とCO2に分解されますが、その際にエネルギーを放出するのです。
多くの国でさまざまな民族や年齢層にわたって、小規模および大規模なコホートにわたって調査された、飲酒と肥満の関係についてレヴューした研究では、それぞれ習慣や一緒に食べるものなども異なることもあって、少量から中程度の飲酒では結果がまちまちでした。しかし過度の飲酒では体重増加につながると言う結果が出ています1)。
2022年のアルコールとメタボリックシンドロームの関係を、信頼できる前向き研究だけで検討すると、少量から中程度の飲酒でも、メタボと脂肪肝との相関が見られています2)。また欧州国際肥満学会の報告でも、2700万人のデータからみて、少量の飲酒(アルコール7g/日)でも体重増加につながる可能性が指摘されています。
分かりやすくビールで考えると、飲まない人と比べると、1日ビール半缶超~1缶飲まないくらいのアルコールでも、肥満率は1.1倍。1缶超~2缶で1.22倍、2缶を超えると1.34倍太りやすいと言う結果が出ています。ビールだから糖質が入っているだろうと言われそうなのですが、無糖の蒸留酒でも同じでした。
お酒が好きな方は、脂肪にならないエネルギーなのにどうして?と思われると思います。これにはアルコール自体が、食欲を増してしまうという性質があるためです。全てのメカニズムはまだ解明されていませんが、現在わかっていることを説明してみます。
アルコールは有毒であるため,生体はアルコール代謝を糖代謝より優先して行います。そのため食事で摂った炭水化物がグルコースに分解されるのが遅れるのです。しかも肝臓はアルコール分解にかかりっきりなので、グリコーゲンを糖質に変える糖新生も滞ってしまいます。アルコールを飲むと血糖が下がりやすくなるということです。
たくさんお酒を飲むと締めにラーメンとかうどんなどが食べたくなったことはないでしょうか? 蒼野は広島なのでそば入りお好み焼きです。女性でしたら甘いスイーツが欲しくなるかも知れません。血糖が下がるとカロリーのあるものが食べたくなります。夜遅く食べれば太るというのは、皆様もご存知のことと思います。
糖尿病治療中の人にとっては、飲酒後の低血糖発作はとても危険です。インスリンや血糖降下剤の代謝も遅れていますので、さらに低血糖になりやすくなっています3)。低血糖で意識が無くなって倒れても、酔っているためだと放って置かれたら取り返しのつかない事になりかねません。酔っていれば自分でも低血糖症状に気付きにくくなるので、睡眠中に低血糖が進行してしまうこともあります。
またアルコールはインスリン抵抗性を増加させるという動物実験もあります。ラットに3日間3g/kg(70kgなら210g、日本酒一升)の泥酔するほどの量を投与したところ、アルコールが脳の視床下部領域に炎症を引き起こし、インスリン受容体シグナル伝達が混乱しました。インスリン抵抗性が高まり、血中インスリン濃度が高まっていることが確認されています4)。
インスリン抵抗性は2型糖尿病の最初の段階です。高インスリン状態で、低血糖補正のための糖質や炭水化物を食べれば、あっという間に体脂肪に変わってしまいます。食べただけで太りやすい体質になるのです。これもメタボリスクが高まる原因の一つなのだと思います。
それではお酒を飲みながら痩せるという事は出来ないのでしょうか? 蒼野の実体験から考えると、可能だとは思うけど、沢山気をつける点があるという事になるでしょうか? 蒼野は肥満は、食べる物の種類や食欲が大きく関係するため、カロリーだけの問題では無いと考えていますが、カロリー過多になれば、余分なエネルギーが脂肪になるのは事実だと思います。
夕食の時に炭酸水を飲むのと、ハイボールを飲むのでは、アルコールのカロリーはプラスになるはずです。ハイボール200ml(ウイスキー40ml/アルコール40度=純アルコール16g)で113.6kcal。軽ーく1杯飲むと、おにぎり半分強のエネルギーを余分に食べる事になります。でも200mlで済む人はあまりいない気がします。
アルコールのエネルギーは先に使われるので、確かに脂肪にはなりません。しかし一緒に食べた物は、アルコール分のエネルギーが余ってしまうため、脂肪に変化してしまいます。しかも、低血糖でお腹が空く、インスリン抵抗性でお腹が空く、肝臓のアルコール代謝でビタミンやミネラルも使われてお腹が空く事になるため、いつもよりも食べる事になりがちです。
飲みながら痩せるためにはそのエネルギー収支を合わせる必要があります。1杯飲むごとに、その日に食べる物のエネルギーを減らす必要があります。それが酔った頭で考え、我慢できるかについては、蒼野自身は不可能だと思っています。
お祝いの会とか、たまにハメを外す日が無いと息苦しくなりますので、その日は飲んで食べたとしましょう。エネルギーは3日で調整すると体重は大きく変動しにくいと言われています。しかし飲んだ翌日も、毒を代謝したことで、身体は栄養を必要としています。つまりお腹が空いているのです。人間、本能に逆らう意思力を持ち続けられる人は稀だと思います。
蒼野もお酒は大好きでした。今でも何か機会があれば少量飲むことはあります。健康長寿を意識すると、やはり太りたくはありません。お酒は飲んだ分、空腹を紛らわせながら低カロリーの物で調整するか、運動量を増やす必要があります。お酒を飲み続けながら痩せる、もしくは太らないというのは結構厳しいなあと蒼野は感じてしまいます。
アルコールは癌を増やしますし、1滴でも飲まない方が良いという研究は既に確立しています5)。休肝日が無いという人は、既に軽いアルコール依存状態です。依存から抜けるためには週に1回48時間飲まない時間を作る必要があります。できれば72時間以上飲まなければ、依存にはならないので、是非トライして下さい。
最後に太りにくい飲み方のポイントです。
1、アルコール後の低血糖予防と食べ過ぎ防止のために、飲む前に玄米おにぎりを食べる。
2、出来るだけ水を飲む(アルコールの害を減らすため)。
3、朝、昼、夕に減らすエネルギー分のアルコール以上飲まないよう、最初に飲む量を決めておく。
4、寝る前にハチミツを舐めて栄養補給と低血糖予防をする。
5、翌日の食事は野菜とタンパク質中心で低カロリーに!
「飲みながら痩せる」と言うのは、魅力的な言葉ですが、実体験から言えば、飲まないで痩せる方がはるかに簡単だなあと思う蒼野でした。
参考文献:
1)Alcohol Consumption and Obesity: An Update. ; Curr Obes Rep. 2015 Mar;4(1):122-30.
2)Alcohol consumption and metabolic syndrome: Clinical and epidemiological impact on liver disease. ; Journal of Hepatology Vol.78 (1) 2023, 191-206
3)Nursing care for diabetic patients with alcohol-induced hypoglycemia. J Emerg Nurs, 24(2):165-168, 1998
4)Binge Drinking Induces Whole-Body Insulin Resistance by Impairing Hypothalamic Insulin Action. ; Sci Transl Med. 2013 Jan 30; 5(170): 170ra14.
5)Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990–2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016;Lancet. 2018 ; 392:1015-1035.
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