HIITのすごい効果!

2022/07/28

 今日は時間がない人にぴったりのトレーニング法 HIITについて書きたいと思います。短時間なのにめちゃくちゃ効果がある素晴らしい運動です。高齢になっても、工夫して慣らしてゆけば様々な健康効果が享受できるので、是非皆様に取り組んで欲しい運動になります。

 健康長寿、認知症予防のためには運動が最重要項目の一つであることは、皆様もご存じのことと思います。でも忙しかったり、億劫だったりすると、なかなか生活習慣に取り入れることは難しいですよね! そういう時はこのHIITです。有酸素運動と筋トレが一度にできて、しかも数分で終わるからです。

 これは自宅で簡単にできる運動です。高強度(High Intensity)の負荷のかかる運動と休憩を短い間隔(Interval)で繰り返すトレーニング(Training)で、略してHIITです。YouTubeにも動画が沢山あるので、それを見ながらマネをするだけで大丈夫です。

 例えばスクワットやバービーなどの運動を自分の全力で、30秒行い、10秒休むのを繰り返すというような運動です。6回繰り返せば4分で終わります。この運動は実質1分程度行っても、軽めの運動45分程度に相当する運動効果が認められることが分かってきたのです。

 ヒトの体力の基準は色々あるのですが、その一つが最大酸素摂取量(VO2max)です。単位時間当たりに、どれだけの酸素をエネルギーに変えられるかを示すものです。すなわちVO2maxが高いほど持久運動をより高強度で続けられると言うことなのです

 例えれば、車の排気量のような感じです。エンジンが大きければ、高速でも余裕で走り続けられます。また全身持久力が低い人の死亡率は、高い人の3~4倍も高いですし、誰もが加齢と共に落ちる最大酸素摂取量が高いというのは、それだけ肉体的にも若いとも言うことができます。

 VO2maxを決定づけている要因としては、肺の酸素取り込みと、心臓の拍出、血液と赤血球の酸素運搬能力、骨格筋のミトコンドリア、末梢の毛細血管の発達などが関与しています。主には心臓と血液の影響が大きいと言われています。これがHIITを行うと鍛えられるのです。

 この最大酸素摂取量がトレーニングによってどう変化するのかの比較実験が行われています。18~30歳の若者グループと65~80歳の高齢者グループに分けて比較しています。

1、HIIT群:週3日(月、水、金)自転車エルゴメーターで、最大酸素摂取量90%以上で4分漕いで3分休むのを4回繰り返す+週2回(火、木)トレッドミルで傾斜をつけて最大酸素摂取量が70%を超えないレベルで45分歩く群

2、筋トレ群:週4回の筋トレを行った群、月、木 は下半身筋トレ、火、金は上半身で徐々に負荷を上げてゆく群、

3、有酸素+筋トレ群:週5日、30分最大酸素摂取量70%以下のサイクリングを30分行い、週4日は引き続き30分筋トレを行う群

4、特に運動しない群 の4群で12週間行い最大酸素摂取量の変化を比較しました。

 12週後の最大酸素摂取量はHIIT群で若者は28%アップ、高齢者も17%アップしていました。有酸素+筋トレ群でも若者は17%アップ、高齢者は21%アップしていました。運動しない群では、高齢者は変化なし、若者は開始前よりも低下が見られました。筋トレグループは運動したにもかかわらず有意な増加が見られず、持久力は筋トレではアップしにくいことがわかりました1)。

 もう一つの実験は糖尿病患者の血糖値が、どんな運動で改善するかを比較したものです。HIIT群は負荷のかかったペダルを20秒全力で漕ぎ、2分の休憩を挟みながら20秒×3回繰り返します。通常の運動群は最大心拍数の70%以下で45分ペダルを漕ぎます。そして運動を行わない群と比べました。

 12週後のインスリン感受性は、HIIT群で1.5倍高まり、通常の運動群が1.3倍強、運動しない群は変わりませんでした2)。1回5分の運動が、45分の運動よりも、血糖コントロールを良くすると言うのは素晴らしいと思います。最近の研究では糖尿病の改善にHIITが取り上げられることがとても増えてきました。

 HIITが筋肉にもたらす変化としては、1 筋肉の運動能力の増加(筋小胞体内へのカルシウムイオンの取り込み促進)。2 最大酸素摂取量の増加(ミトコンドリアの量と質の改善)。3 細胞へのグルコース(ブトウ糖)の取り込み促進(GLUT4の増加)の3つが挙げられ、特に2と3が血糖コントロールを改善すると考えられています。

 またHIITは、飲酒者の肝機能の改善にも大きな効果が認められています。12週間HIITを行うと、行わなかったグループに比べて39%の肝脂肪が減っていました。12人中4人の脂肪肝は消失していたのです。治りにくいとされる脂肪肝も、HIITを続ければ治せると思われます。

 HIITは脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子)を最も分泌させる運動でもあります。たった1回のHIIT後でも、血液中のBDNFは増加しており、BDNFが分泌されると、海馬や前頭葉の神経細胞が実際に増えてゆくことも証明されています。認知機能について調べた研究でも、HIITが認知機能の向上に役立つ可能性が多く報告されてきています。

 HIITは激しい運動で誰でもはできないのではと、思われる方もおられるかもしれませんが、最初は、最大心拍数(220ー年齢)の7~8割位の運動強度で始めることができます。ややキツい程度のレベルからで大丈夫なのです。そのレベルでも十分な効果が期待できます。蒼野も時々やってみますが、本当に短時間で済むトレーニングなので気軽に始めることができます。

 短時間なのにダイエット効果が出るのは不思議に思う人がいるかもしれませんね! これはHIITが持つアフターバーン効果が続くことによります。これは最大酸素摂取量の50~60%以上の運動強度以上で見られる現象で、やればやるほど増加し、運動後3~14時間、場合によっては24時間もエネルギーとして脂肪が優先的に使われ、脂肪が燃え続けるのです。

 18~35歳の男性の実験でも、全力20秒のトレッドミルでの全力ダッシュ+10秒休憩を8セット、計180秒の運動を、最大心拍数90~95%、30分のトレッドミルランニングと比べても、運動後のエネルギー消費はHIITの方が高かったのです。

 脂肪減少の点から見ても、HIITはランニングに優っており、HIITを続けてゆくと、内臓脂肪も皮下脂肪も減少し、筋肉がついてきて、太りにくい体質となります。脂肪を落としながら、筋肉がつけられるという理想的な運動と言うことができます。

 またHIITを行うことで食欲が抑えられる効果もあることがわかっています。激しい運動をすると血中乳酸値と血糖値が上昇して、食欲が低下しますが、それに加えてHIITを行うと、食欲を刺激するグレリンという、胃で産生されるホルモンの濃度が下がり、ダイエットが楽になるのです。

 運動も食事も続けなければ、スリムで健康な身体をキープすることはできません。モチベーションが高い時にだけ取り組める、一時的なダイエットではなく、忙しくても日々の生活習慣の一部にすることができるHIIT! 身体が若返り、糖尿病や脂肪肝が治るHIITに、皆様も取り組んでみませんか?

 書きながら週2回の休みの日の筋トレと、週4回のHIIT、そして毎日の散歩を習慣にしようと決意した蒼野でした。

参考文献:
1)Enhanced Protein Translation Underlies Improved Metabolic and Physical Adaptations to Different Exercise Training Modes in Young and Old Humans: Cell Metabolism volume 25,Issue 3, 7 March 2017, Pages 581-592

2)Twelve Weeks of Sprint Interval Training Improves Indices of Cardiometabolic Health Similar to Traditional Endurance Training despite a Five-Fold Lower Exercise Volume and Time Commitment: Plus one,  April 26, 2016  https://doi.org/10.1371/journal.pone.0154075

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