ホルミシスを利用して強くなりましょう!

2021/11/15

 ホルミシスとは、生き物にとって厳しく有害な環境でも、死なないくらいの刺激であれば、オートファジーが活性化され、細胞が修復されて強くなる作用のことです。刺激にさらされているからこそ、身体が強くなり、若返って、病気を寄せ付けずに長生きするのです。

 世の中の長寿の生き物は、過酷な環境にありながら、ホルミシスを活用して、健康に長生きしている生物がいます。ハダカデバネズミは、アフリカ大陸東部、サバンナの地下にトンネルを作って、群れで生活しています。同じ齧歯類のマウスが、2~5年しか生きられないのに、25年くらいまでは老化の兆候も見られず、平均で30年も生きるのです。

 長寿の秘密は、巣穴の長いトンネルの中で大勢で密集して暮らしていていることです。酸素濃度が8%、二酸化炭素が10%となるような低酸素の中で生きていて、乾季には殆ど食料が取れないため、長期のカロリー制限を余儀なくされます。酸欠+飢餓に耐える厳しい環境です。

 つまり酸素が薄く、カロリーが制限された厳しい環境が、ホルミシス効果を生み、オートファジーが活性化されるのです。ハダカデバネズミは、実験的に放射線や感染、薬剤などで癌を誘発させようとしても、発症させることはできず、自然治癒させてしまうほど免疫力、細胞の修復能力を備えています。

 また地球上で最も寿命が長い哺乳類と考えられるのは、ホッキョククジラです。捕獲した北極クジラの頭部から、19 世紀に使用された古代石と象牙でできた銛がでてきたため、本種は200 年間も生きる可能性が示唆されました。

 クジラの水晶体に含まれるアミノ酸の変化を調べることで推測した年齢は、推定213歳だったそうです。暗くて寒い冬季にはほとんど食べ物が無く、極端なカロリー制限の状態に置かれます。その時期には皮下に70cmも蓄えた脂肪から、ケトン体を作って生きのびます。北極海で海中深く潜水するため、20分から1時間、呼吸を止めて、低酸素状態になることでも、ホルミシス効果が生じ、オートファジーが活性化するようです。そのため、ホッキョククジラにも癌が見つかることはありません。

 ジャンヌ=ルイーズ・カルマンは世界最高齢の女性で、122歳164日で死去したのですが、その生活は100年間、毎日タバコを1日に1本吸い、朝食はコーヒーを飲むだけというものでした。少量の喫煙によって、一酸化炭素を吸い込んで一時的な低酸素症にさらされ、朝食抜きの間欠断食を行っていたことで、オートファジーが活性化し、長寿に関与した可能性は否定できません。

 生き物は、克服しうるような生存の危機状態にさらされると、それを克服するシステムを持っています。少量の毒によって、オートファジーが活性化し、心身が強化されて病気を寄せ付けず、細胞が若返り、生まれ変わるのです。

 原始人の生活では、生きるために、獲物を求めて歩き回り、走り続けて獲物を捕え、獲れない時はカロリー不足の状態に耐えて暮らしてきました。逆に、それが死ぬまで元気に動けるための、ホルミシスになっていたとも考えられるのです。

 もし獲物が簡単に手に入るならば、動かずにエネルギーは温存したほうが効率的です。また目の前に果物が実った樹を見つけたら、食べられるだけ食べた方が、生存には有利になります。それが現在まで残っている人類の遺伝子です。我々は、必要がなければ、運動したくないし、目の前に食べ物があれば、可能な限り食べてしまうような遺伝子で生き残ってきた人類の末裔です。

 現代生活では、遺伝子の命令する通りの生き方をしていれば、運動不足で、カロリーが高いものを好む生活となり、メタボリックシンドロームに近づいていくのは必然です。苦痛は避けて生きてゆきたいので、ホルミシス効果も生まれにくいのです。健康長寿のためには、知識を武器にして、環境に流されずに、人類本来の生活に近づける必要があります。それが現代を生きる上で、病気知らずの人生にするための方法になるのです

参考書籍: 不老長寿メソッド  鈴木 祐

不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる [ 鈴木 祐 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2022/4/9時点)楽天で購入

参考書籍: SWITCH  ジェームス・W・クレメント

SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿 [ ジェームズ・W・クレメント、クリスティン・ロバーグ ]
価格:1980円(税込、送料無料) (2022/4/9時点)楽天で購入