暑い夏の処方箋!

2023/08/10

 暑い日が続きますね! 7月も十分暑かったですが、暑さは今からが本番です。環境省のページを見ると、日本の夏の平均気温はここ100年で、約1.5℃上昇しており、特に都心部では、約3℃も上昇しているのだそうです。今日は暑さに負けずに、元気に過ごすために必要な知識を、まとめてみたいと思います。

 昔から夏の暑さは、健康の大敵です。「夏バテ」「夏負け」「暑気あたり」など、夏の不調を表す言葉は沢山あります。「バテる」というのは、競走馬が疲れて足がもつれ、「バタバタになる」が縮まったという説や、「疲れ果てる」の「果てる」が「バテる」になったという説があるようです。

 西洋医学では「夏バテ」という概念はありません。胃腸機能低下や自律神経失調症などと分類されるだけです。しかし東洋医学では、約800年前の中国の医学書に「注夏病」という病気が記載されています。夏は水分を摂りすぎて、体に余分な水分が溜まる「湿邪」が生じ、体に熱がこもって「暑邪」も生じるとされています。

 日本漢方でも、貝原益軒は『養生訓』で、「夏は人の肌膚が大いに開くため、外邪が入りやすく、涼風にあたるべからず。」「夏は温かいものを食べて脾胃をあたため、冷水のむべからず」と述べています。身体を冷やそうとして、冷たい風で身体を冷やしたり、夏は冷たいものや水分の摂取が多くなることが不調の原因であると、見抜いていたのです。

 西洋医学的に考えても、夏バテの本質は胃腸障害と自律神経失調です。冷たいものを胃腸に入れると、37℃で働く酵素が働かなくなります。酵素活性が落ちれば、食べ物の消化も悪くなりますし、肝臓の代謝も悪くなります。せっかく食べたものも、栄養として活用できにくくなると、エネルギー不足が生じ、だるくなるのです。

 最近の暑さは殺人的で、体温を越えるような気温もしばしば経験します。そんな時も、我々は自律神経を目一杯使って、体内の環境を一定に保とうとします。外気温が体温を超えた場合には、体温を下げるには、汗をかいて蒸発させ、熱を奪ってもらうしかありません。風に当たれば、蒸発は促進されますが、湿度が高い状態では、蒸発も進まなくなります。

 先日も何年も住んだヨーロッパから帰ってきたおばあさんが、夏バテによる頭痛で外来を受診されました。「同じ温度でも、カラッとしたヨーロッパは過ごしやすかった」と、しきりに言っておられました。蒼野も毎日部屋の湿度計を見ていますが、クーラーを同じ温度にしていても、湿度が70%に近くなってくると、寝苦しいことに気づきました。

 発汗を促す自律神経は交感神経です。夏は交感神経が優位になる時間が増えやすいのです。消化管を動かすのは、副交感神経ですから、エアコンを嫌って、汗をかきながら寝ていると、夕食の消化が滞ります。そんな日が続けば、エネルギー不足になり、自律神経失調が起こって様々な症状が出てくるのです。

 疲れやすくなり、消化管が食べ物を受け付けにくくなり、食欲不振や下痢や軟便になります。エネルギー不足で眠くなり、冷たいもので血流も悪くなることから、コリや頭痛や眩暈も起こります。脳の働きも悪くなり、仕事も捗らず、イライラしたり、さらにストレスが溜まったりと、悪循環にもなりやすくなるのです。

 対策としては、貝原益軒先生が言われている通り、まずは冷たいものを避ける事からです。ビアガーデンの冷たいビールは美味しいですが、夏バテの元です。でもかき氷もアイスも食べたいですよね。ですからまず温かいお茶や、味噌汁、スープなどを飲んで温めてから、冷たいものを食べましょう。

 実は冷たいものを食べ続けると、太ります。キンキンに冷えてしまった消化管では、温度を上げるために炎症が起こるのです。消化管を取り巻く脂肪を増やして、周囲に冷えが伝わらないようにします。つまり内臓脂肪が増え、内臓脂肪からも炎症物質が放出されるのです。ビール腹は、なるべくしてなるという事です。

 またビールに合う食べ物も問題です。唐揚げや焼肉、餃子など、油っぽい食べ物が食べたくなりますよね。普段は沢山食べれなくても、アルコールによる食欲増進効果や、油っぽくても、ビールと一緒なら、重さを感じずに食べれてしまうのです。それが血液中でドロドロになると、血流が悪くなり、代謝が落ちて、老廃物を溜め込み、体重を増加させます。

 凍った食べ物も同様です。アイスやかき氷、フローズンドリンクでも、内臓脂肪がつきやすくなります。冷たいと甘さを感じにくくなるため、多量の砂糖や果糖が入っていることも問題です。低温で代謝も落ちることから、毎日食べていると、老廃物の排出も滞り、水太りにも直結します。特に下半身がむくんだり、太ったりしやすくなるのです。

 もし食べるなら温かい飲み物とセットが基本になります。それでも週1回までにとどめたいものです。ビールを沢山飲んだり、冷たいものを思い切り食べたりしたならば、次の日は消化管を休めましょう。14~16時間断食することで、炎症が治りやすくなるため、内臓脂肪は増加しにくくなります。冷たい食べ物は、肥満の始まりなのです。

 夏はざるそばや、ソーメンも美味しいですよね。もし食べるなら、身体を温めてくれる薬味を、沢山食べましょう。生姜やネギ、シソ、ミョウガ、七味などで、冷たさを緩和しましょう。もちろん温かい蕎麦湯を飲んだり、スープや味噌汁と一緒に食べるのは大事です。先日麺類は噛まずに飲み込みやすいので消化が悪いと書きましたが、よく噛むことで口の中で温度も上がり、消化も良くなるので、意識しましょう。

 夏の水分補給は重要ですが、なるべく常温の物を増やしましょう。氷入りの麦茶や水、アイスコーヒー、凍らせたスポーツドリンクなどを飲みたくなりますが、胃腸を痛めつけていることは忘れないように! 素材自体に清熱作用がある緑茶はオススメです。汗が出ている時には、梅干しも食べましょう。

 夏が旬のウリ科の野菜、スイカやきゅうりやゴーヤ、冬瓜などは、身体を冷やしてくれます。トマトやアスパラガスもいいですよ! 食物繊維をしっかり摂って、お通じを整えましょう。具沢山の味噌汁や、野菜スープなどを、薄味の素材の味で食べましょう。

 そして、睡眠が重要です。適温適湿でないと良い睡眠は取れません。真っ暗にして、長袖長ズボンの麻のパジャマを着て、薄い掛け物を使い、温度調節しましょう。蒼野も以前はエアコンが嫌いでしたが、毎年夏の疲れを感じていました。去年からエアコンを朝までつけるようになって、夏バテを感じなくなりました。

 都会では、ヒートアイランド現象もあり、どんどん夏が暑くなっているように感じます。高温多湿の日本では、エアコンは必須だと考え直しました。ここで問題になるのは、室内と室外の温度差です。7℃以上の温度差には対応出来ないため、部屋の冷やしすぎにも気をつけましょう。どうしてもエアコンで不調になる人は、首を冷やしましょう。内臓は冷やさずに体が冷やせます。

 夏でも湯船に浸かり、そこで汗を出すのは大事です。ずっとエアコンの効いた室内で過ごす人は、汗が出にくくなり、熱中症リスクが高まります。寝る前に体温を上げることで、睡眠の質も上がりますので、15分くらい浸かって、汗を出しましょう。

 甲子園の熱戦を見ていると、かつてはエースひとりが最後まで投げるのが普通だった時代を思い出します。現代の暑さでは、継投しないと無理ですね。そんなところからも地球温暖化は進んでいるのだなあと実感する蒼野でした。

参考書籍:   自然やせ力   Elly

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