年収と肥満の切ない関係!

2023/10/24

 今日は肥満に大きく関係する、解決が難しい要素について書いてみたいと思います。それはズバリ年収です。このところの物価上昇は、厳しいですよね。普段の食料品の買い物は、妻にしてもらう蒼野ですが、外食する時の支払いとか、お土産を買うときに、値段が上がっているなあと実感します。

 バブル崩壊以降、日本では長く経済が低迷しています。ずっとデフレが続いていたため、気づけませんでしたが、どんどん税金が上がり、給与水準は低迷しているため、実質賃金は下がり続けています。貧富の格差が拡大する一方で、貧困層は増加傾向です。

 厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、平均所得金額は、2001年の616.9万円に対して、2021年が564.3万円です。200万円未満の低所得層世帯は、2001年は16.2%、2021年では18.5%に増えています。年収はライフスタイルに大きな影響をもたらします。

 一番大きなものは食事内容です。年収が低いとどうしても食事は「出来るだけ安く、おいしくて、お腹を満たす」ことに主眼が置かれます。栄養の事を考える余裕は無いのです。低所得層世帯では、ご飯やパン、うどんやラーメン、豚肉、お菓子、日本酒やビール、マヨネーズなどの登場が多くなりやすいです。

 安い食べ物は、工場で大量生産できて、長持ちする超加工食品が主流です。沢山消費されるように、脳の報酬系を刺激し、依存しやすい様にできています。糖分や塩分、脂肪を多く含み、食品添加物も豊富に含む食べ物です。この食の貧困化は、病気に直結しています。

 不健康だと知っていても、安価な加工食品を食べる機会がどうしても増えてしまいます。美味しいお肉や魚、野菜や果物といった健康で栄養価の高い食事は登場する回数が減ってしまうのです。その結果、タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維が不足し、高カロリー、高脂肪、高塩分で、添加物だらけの食事になりがちです。

 これは肥満の統計や、糖尿病率でもはっきりと出ています。滋賀医科大学アジア疫学研究センターの2010年の調査では、世帯年収600万円以上と比較して、世帯年収200~600万円未満では肥満リスクは女性1.70倍、男性1.03倍。さらに200万円未満に絞ると女性2.09倍、男性1.46倍に増加しています1)。

 年収別の炭水化物のエネルギー摂取比率のデータを見ると、世帯年収600万円以上では女性56.8%、男性58.6%。世帯年収200~600万円未満では女性58.6%、男性59.5%。さらに200万円未満では女性59.7%、男性61.1%と有意に増加してゆきます1)。この調査から13年が経過しており、さらに所得格差が広がっていることを考えると、さらに進んでいると考えます。

 さらに若い人の糖尿病については、全国の医療機関96施設(53病院、43診療所)において、40歳以下の2型糖尿病患者の782人の実態調査を行った2013年の全日本民主医療機関連合会の調査があります。驚くことに、糖尿病患者の57.4%が、年収200万円未満だったのです。しかし世帯年収600万円以上の糖尿病患者は、10.6%しかいませんでした2)。

 もちろん相関関係の証明であり、因果関係ではありませんが、年収が少ないと、太りやすく、糖尿病になりやすいライフスタイルになってしまうというのは、当たり前の様に思われます。 年収が少ない人は、非正規雇用者が多くなります。長時間労働を強いられ、食事の時間も不規則になりがちで、料理にかける時間の余裕もありません。

 睡眠時間を削るのは辛く、健康悪化にも直結するため、自炊を諦めて、価格の安い外食やコンビニ弁当、パンやおにぎりや麺類の比率が高くなりやすいと思われます。炭水化物を主体とした食事になり、野菜や肉類をとれないことが多くなるのです。タンパク質が不足すると食欲が出てしまう上、糖質中毒になると、もっともっと糖質が食べたくなるのです。

 これは世界中で見られる現象です。炭水化物の塊であるピザやタコスが安く大量に買える、アメリカやメキシコでも、低所得層がでっぷりと太っています。スナック菓子も安く、炭水化物に脂肪をたっぷりまぶしたジャンクフードが安いのです。一緒に砂糖まみれの炭酸飲料をガブ飲みするのがお決まりの食事です。太らない訳がありません。

 人口世界一になったインドでも、スラム街は肥満者が溢れています。インドも米や小麦が大量に安く流通しており、安いスナック菓子が溢れています。現代は、世界中で低所得層が炭水化物を大量に食べる時代であり、低所得層になればなるほど炭水化物が過剰になり、肥満になり、健康が維持できなくなるのです。

 蒼野の外来でも、不調を訴える方の中に、生活保護を受けている方を沢山見かけます。もちろん医療費が無料であることもあるかも知れませんが、メタボ率も高い印象です。食事を聞いてみると、3食安いお弁当とインスタント味噌汁だったり、スーパーのお惣菜にご飯だったり、めんどくさがりの人では、パンかおにぎりだけで済ませている人までいます。

 食事が悪くなると、体調が悪くなり、メンタルも悪くなり、意欲もなくなるのだと思います。自炊なんてめんどくさくて出来ません。お金が無くても、食材を買って、無駄なく自炊すれば、弁当を買うより安くなったりもすると思いますが、その意欲が無くなる様です。牛丼やラーメンが大好きな人が多いのです。

 家から出る機会も少なく、運動不足の人も多いです。歩数の平均値についても厚労省のデータがありますが、男女とも、世帯の所得が600万円以上の世帯に対して、200万円未満の世帯の方が歩数が少ないことがわかっています。不健康の悪循環にハマってしまい、なるべくして病気になっている人に、蒼野がしてあげられる事は多くはありません。

 体調が悪いのがデフォルトになっている人の中には、健康に全く関心がない人も多く居られます。一生懸命生活指導しても、少しも響かないことは、沢山経験してきました。少子高齢化が進む現代の日本で、お金と健康の格差が開いてゆくのを見ているのは、本当に歯痒いです。前回書いた痩せる糖尿病薬は、確かにこういう人には良いのかも知れません。

 ただ高い薬ですので、生活保護の人でなければ、金銭的に治療は難しいです。かと言ってどんどん使えば、若い人の負担がさらに増えてゆくと思います。生活が苦しくなると、結婚も出来ず、子供も増えず、健康も悪くなります。日本がダメになる前に、既得権益の言いなりにならず、みんなが豊かになるような政治をしてくれる人が現れることを、心から期待してしまう蒼野でした!

参考文献:
1)社会的要因を含む生活習慣病リスク要因の解明を目指した国民代表集団の大規模コホート研究 : NIPPON DATA80/90/2010 
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2017/172031/201709030A_upload/201709030A0003.pdf

2)暮らし、仕事と40歳以下2型糖尿病についての研究. ; Diabetes Frontier Vol.26 No.6, 757-760, 2015

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