皆様はセロトニンについてご存知でしょうか? 幸福物質の一つであり、尊敬する樺沢先生によれば、今ここにある幸せを感じられる物質です。他の脳内伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンとの相互作用で、我々の精神をコントロールしています、セロトニンが豊富であれば、心が落ち着き、安心して、気持ちよく過ごすことができます。
うつ病との関係は有名です。うつ病になると脳内のセロトニン濃度が下がることが判明しています。ドパミンやノルアドレナリンのコントロールが不安定になると、ストレスが受け流せなくなり、イライラしたり、攻撃的になったり、不安が押し寄せたり、パニックになったりしやすく、精神が鬱々となって、病みやすくなるのです。
我々の健康を支えている物質の一つがセロトニンです。今日はセロトニンについて、深掘りしてみたいと思います。幸せになりたい皆様であれば、セロトニンを沢山出したいはずです。まずはセロトニンを増やす方法を箇条書きにしてみます。
1、日光を浴びる
2、良い睡眠を十分に取り、規則正しい生活を送る
3、ストレスコントロールを行う
4、運動をする
5、腸を整え、セロトニンの生成を邪魔する体内炎症を抑える
それでは一つ一つ、そのメカニズムについて解説してみます。
1、日光を浴びるとセロトニンが増えるメカニズムは二つあります。一つ目はビタミンDです。ビタミンDは、セロトニンの材料であるトリプトファンがセロトニンに変換される反応を促進します。またビタミンDは、細胞内のビタミンD受容体と結合し、遺伝子の発現を調節し、セロトニンの合成を促進します。もちろんビタミンDは内服で増やすことも有効です。
冬には日照時間が減り、セロトニンの分泌が低下しやすくなります。これが「季節性情動障害」(SAD)という疾患(別名:冬季うつ病)につながります。また日光が目に入ることによって、脳の視床下部にある視交叉上核に到達し、体内時計の調節やメラトニン分泌の抑制を行います。太陽の光は、脳内のセロトニン生成を直接的に刺激する作用もあるのです。
2、視床下部は体内時計の中枢でもあります。朝作られたセロトニンは、夕方になるとメラトニンに変わり始め、眠気につながります。充分な睡眠をとることで、朝になるとメラトニンの分泌が減少し、セロトニンの生成が再び増加します。眠ることで、昼間消耗したセロトニンを再充填することができるのです。規則正しい生活を送ることが、セロトニンの分泌のカギでもあります。
3、また良質な睡眠は、コルチゾールを減らす効果があります。ストレスホルモンであるコルチゾールの短時間の分泌は、エネルギー供給や免疫応答の調整を行い、健康に必要な反応を起こしますため必要な反応です。
しかし慢性的なストレスでは、コルチゾール濃度が高い状態が続き、身体がコルチゾールの免疫抑制作用に反応しなくなるのです。すると体内炎症が続きやすくなります。炎症性サイトカインが分泌され、トリプトファンがセロトニンに変わるのを邪魔します。十分で良質な睡眠によって、コルチゾールが下がり、セロトニンの生成と機能が改善します。
4、ストレスコントロールには、十分な良い睡眠以外には、やはり運動が有効です。運動は軽いストレスです。定期的な運動は、心身の耐ストレス能力を向上させます。運動を続けていると、ストレスに対してコルチゾールが上昇しにくくなります。運動で自律神経バランスが改善することでも、コルチゾールは出にくくなります。
運動すると、脂肪が分解され、血液中のフリー脂肪酸濃度が上昇します。体内でトリプトファンはアルブミンと結合して運ばれているのですが、フリー脂肪酸もアルブミンと結合するため、トリプトファンの結合が外れてフリートリプトファンになりやすくなります。アルブミンと結合した形では、脳血液関門(BBB)を通れませんが、フリートリプトファンは通れるのです。これが脳内セロトニンの材料となるため、セロトニンが増加します。
またトリプトファンが、BBBを通過するためには、LAT1と呼ばれる輸送体(アミノ酸トランスポーター)が必要です。これはトリプトファンだけではなく、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、バリンなどのアミノ酸を、脳内に届ける輸送体でもあります。運動をするとこれらのアミノ酸が、筋肉に取り込まれ血中濃度が下がるため、トリプトファンが脳内に輸送される確率が上昇します。
体内のセロトニンの約90-95%は腸に存在し、消化器系の働きや血管の収縮に関与しています。しかしこれが直接、脳内のセロトニンにはならないのです。運動をすると、トリプトファンが脳で利用される効率が向上し、幸せで爽やかな気分になるということなのです。
5、最後は体内炎症です。炎症の原因は多岐に渡ります。細菌、ウイルス、寄生虫などの病原体が体内に侵入したり、怪我をしたりすると、免疫システムが活性化し、炎症が引き起こされます。これは必要な炎症です。先ほど述べたようにストレスは慢性炎症の原因になります。
そして改善可能な炎症は、生活習慣による炎症です。現代では喫煙、過剰なアルコール摂取、不健康な食生活が大きな慢性炎症の原因です。中でも砂糖やグルテン、カゼイン、食品添加物(超加工食品)や、悪い油などの食生活は、毎日食べている物だけに、最も気付きにくく、セロトニンを低下させて、メンタルが悪くなる原因になっています。
2017年にSMILES研究というランダム化比較試験が行われています。中等度から重度のうつ病患者さん67人を一般的なうつ病の治療をしながら、食事介入群と対照群に無作為に分けて12週間観察研究を行いました。12週後のうつ病スケールでは、食事介入群で有意に改善していました。介入群は32.3%がうつ病ではなくなっており、対照群は8.0%の改善でした1)。
食事でうつ病が治りやすくなるということが証明された研究になります。食事の内容としては、地中海食をベースに、新鮮な野菜と果物、ナッツ、卵、オリーブオイル、魚、グラスフェッドビーフなどで組み立てた料理です。腸の炎症を抑え、腸内環境を整える食材をふんだんに使い、現代の西洋食の要素の少ない食事です。
腸内環境が悪化すると、腸の粘膜上皮の結合が緩み、腸内細菌やペプチド蛋白が、体内に流入しやすくなります。細菌の細胞膜にある毒素である、LPSが血中に入ると、全身をめぐり慢性炎症の原因となります。血液脳関門も緩んでしまい、炎症性サイトカインが脳内セロトニンの合成を邪魔することになります。
こうしてみると、脳内セロトニンを増やす方法がわかりますよね。食物繊維と良質な油、トリプトファンを多く含む鶏や魚、豆やナッツ、卵やバナナ、アボカドなどを食べ、規則正しい生活をして、しっかり睡眠を取り、朝日を浴びて運動すると、メンタルの不調も改善し、毎日幸せを感じながら過ごせるはずです。
蒼野は、よくお腹を壊す子供でした。野菜が嫌いで、肉が大好き。お菓子やパンも大好きでした。その頃は時々癇癪を起こしていたことを思い出しました。野菜好きの妻と結婚してから、癇癪で自分を見失う事もお腹を壊すこともなくなりました。大人になったからだと思っていましたが、きっと腸内細菌が乱れていて、メンタルが安定していなかったのだなあ、と今はわかります。
健康ブログを書きながら、自分でも色々実践してみると、本当に毎日穏やかに、気持ちよく過ごせています。研究でも3ヶ月でメンタルは変わるのです。『睡眠!運動!朝散歩!』はメンタル改善の大前提ですね! 皆様にも出来ることから、セロトニンを増やす生活を送っていただきたいなあと願う蒼野でした!
参考文献:
1)A randomised controlled trial of dietary improvement for adults with major depression (the ‘SMILES’ trial). ; BMC Medicine15 (23) 2017
参考書籍: 精神科医が見つけた 3つの幸福 樺沢 紫苑
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