昆虫食は未来の食べ物!

2022/01/22

 今日はちょっと趣向を変えて、これからの私たちの食糧について考えてみたいと思います。我が日本の食料自給率は、カロリーベースの食料自給率で38%です。

 具体的な食料自給率は、昔から食べている、米97%、野菜79%、魚介類52%、は比較的高く、牛肉35%、豚肉49%、鶏肉64%、鶏卵96%、牛乳・乳製品59%も、思ったより高いイメージです。しかし畜産の飼料の自給率は、畜産物全体で25%。輸入に頼っている食材は、小麦16%、大豆6%、菜種などの油脂類13%と、かなり低い状況です。

 穀物がなければ、現在の畜産は成り立ちません。しかし穀物を畜産に使うことはとてもエネルギー効率が悪く、贅沢なのです。仮に地球上すべての人類が穀物のみを食べ、生産した穀物を、全てヒトの食料とし、一日の摂取カロリーを2000キロカロリーに制限する、という少食の条件にしたとしても、地球上で生存できる人間の数は、112億人なのです。

 2021年時点での世界総人口は78億7500万人、最も早いペースで増え続けた場合、2050年に108億人、2100年に112億人になると試算されています。本当にそうなるのであれば、輸入に頼っている日本の台所が心配になってきます。卵や乳製品(飼料は穀物のため)も含めて、肉や大豆などのタンパク質が、かなり不足するのではないでしょうか?食糧危機はすぐ目の前に迫っているかもしれません。

 そこで有望視されているのが、昆虫食です。一般に、牛肉1kg、豚肉1kg、鶏肉1kgを生産するには、穀物はそれぞれ11kg、7kg、4kgが必要だといわれています。これはエネルギーの変換としては、とても効率が悪いのです。恒温動物では体温維持のために、基礎代謝の7割が使用されるため、餌のエネルギーが熱として消えてしまうからです。

 その点変温動物は、エネルギー効率が良く、特に昆虫は、飼育の容易さと、餌がヒトと競合しない点で、次世代の食糧として注目を集めているのです。昆虫の体はタンパク質と脂質に富んでおり、計算の上では数十億~100億人分のタンパク質が昆虫で賄えると言われています。

 近未来にあり得る「これまでに経験したことがない」食糧危機に向けて、国連も「世界の食糧危機を救う食材」として、昆虫食を推奨しているのです。実際にアメリカ西海岸では、2015年頃から食用コオロギがスタミナ食としてヒットして、アメリカ各地でコオロギの養殖農場が作られています。

 牛肉1kgに対して穀物が11kg必要な牛肉と比べて、コオロギは1kgに対して飼料は2kgで済むのです。しかも身体全体を食べることができますが、牛の可食部位は40%程度にとどまります。飼育に必要な水も、牛では肉1kgあたり、20000L必要ですが、コオロギは8Lで済むのです。

 牛や羊などの反芻動物は、温室効果ガスであるメタンを多量に排出していますが、コオロギは、反芻動物の100分の1しか排出しません。地球温暖化を少しでも遅らせるためにも、転換を進めてゆく意義があるようです。

 食肉用の牛が出荷できるのが2年4ヶ月後で、食肉部分288kgが得られます。一方、コオロギは50×44×20.5cmの空間に50対の成虫を入れて飼育し、32日後から毎日6,000匹出荷できるため、2年4ヶ月で484kgが食べられる計算になります。牛の1.7倍です。

 コオロギの栄養価は高く、タンパク質は牛肉の2倍、アミノ酸やカルシウムは、牛乳より多く、B12、オメガ3も豊富です。さらに繊維、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、亜鉛などの微量栄養素も多く含まれています。

 日本でも、貧しかった大正時代には、ハチ、カミキリムシ、カイコなど50種類以上の昆虫が日常的に食べられていたという記録があります。現在でもイナゴの佃煮などが生産、販売されている地域もあります。

 昆虫は、安価に入手できる食材の一つとして、すでにアジアやアフリカ、ラテンアメリカを中心とした約20億の人々の食事の一部となっています。今後私たちが環境面でも、健康面でも、そして経済面でも、地球上で生き残っていくための持続可能な栄養源であると考えられます。

 蒼野が住む福岡でも、街中で昆虫食の店や、コオロギうどんと書いてあるのぼりなども見かけるようになりました。少し覗いてみましたが、まだまだ値段が高いようです。蒼野自身は、まだ食べたことがない事もあり、先入観からも、あまり食べたいとは思わない状態です。

 これは、雑食動物である私たち人間には、これまで口にしたことがない食材を警戒する「食物新奇性恐怖」という習性があるそうです。昆虫を食べる機会がほとんどない現代では、昆虫という食材は未知そのものであり、食物新奇性恐怖の本能によって「食べたくない」という拒絶反応が出るのは当たり前かもしれません。

 不飽和脂肪酸を豊富に含む昆虫は、魚介類と同じで酸化が進みやすいため、長期的な熟成には向きません。また、締めた昆虫は、時間が経過すると変色して見た目が悪くなります。また昆虫にはトロポミオシン(えび、カニなど甲殻類に含まれる)と呼ばれるアレルゲンが含まれているため、エビカニアレルギーの人は食べられないと思います。

 しかし人間の順応性には、驚くべきものがありますし、必要に迫られれば、美味しく、見た目も問題ない、新たな食品が出てきて、ブームになる可能性があると思います。昆虫食は、生産時の環境負荷が小さいことが、今後の新たな食材としての一番のメリットです。自然破壊や温暖化を進めずに、小さな空間で、生活廃棄物(食材、人間廃棄物、動物廃棄物、堆肥)をエサにして、短期間で出荷できるのです。

 需要が高まれば、大量に供給が可能となり、値段も下がってくるものと思われます。綺麗な環境で育てれば、生態系による毒物の蓄積も少ないため、安全で栄養価の高い食べ物になると思われます。食糧事情が厳しくなれば、あっという間に変わるかもしれませんよ!

 2020年には、無印良品から「コオロギせんべい」が発売され、話題になりました。味と価格とイメージという、3つの課題をクリアしないと、まだ現時点では、食材の主流になるのは厳しいかもしれません。人類を救う食材になる可能性を秘めた昆虫食を、今後も注目してゆきたいと思っています。

 まだイナゴも蜂の子も、口に入れたことのない蒼野でした。

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