健康長寿を支える和食とは!?

2022/12/28

年の瀬も押し迫ってきましたね! 大晦日には年越し蕎麦、お正月にはお雑煮におせち料理、1月7日には七草がゆなど、これから伝統的な和食を食べる機会が増えます。日本人の健康長寿と食事について調べてきて、和食の良さを知っておくのは大事なことだと思ったので、今日は和食について調べてみます。

 日本人の伝統的な食文化は、日本人の長寿の秘密とも関係していると考えられており、世界でも注目を集めています。2013年にはユネスコ無形文化遺産に登録されたのも、世代を超えて受け継がれてきた『和食』は後世に伝えられるべき文化であることが認められたということです。

 余談ですが、ユネスコの食文化の登録としては、和食以外に、「フランスの美食術」「地中海料理」「メキシコの伝統料理」、トルコの「ケシケキ=麦粥」や「コーヒー文化と伝統」、韓国の「キムジャン=キムチの製造と分配」、グルジアの「クヴェヴリ=壺で作るワイン」などが認定されています。

 地中海食と健康に関する調査、論文は多いのですが、和食まるごとの健康効果に関する論文は、それほど数は出ていません。また一言で和食と言っても、年代によって刻々と変化してきており、現在の高齢者の長寿を支えている食事は、我々が現在食べている食事とは異なっている可能性が高いのです。

 東北大学の研究で、2005 年、1990 年、1975 年、1960 年の一般的に食べられていた食事献立を、マウスに自由に食べさせて身体に対する影響を見たものがあります。日本で食べられている食事は、徐々に欧米化が進んでおり、食事と共に生活習慣病の有病率は増加していることから、どの時代の和食が健康効果が高いのかを判断しようというものです。

 その結果としては、1975年の日本食を与えたマウスでは、他の年代 の日本食と比較して、内臓脂肪蓄積、肝臓脂肪蓄積および高血糖が抑制され、学習記憶能力の維持、寿命の延伸が認められることが判明しました。そこで1975年の日本食が、ヒトにおいても有益なのかを、2015年の食事と比較検討しています1)。

 1975年の日本食の特徴としては、
1、使用する食材の数が多く、日々違う食材を少しずつ食べるため多様性に富んでいる事。

2、煮る、蒸す、生の調理法が多く、揚げたり、炒めたりする高温調理が少ない事。

3、大豆製品、魚介類、野菜 (漬物)、果物、海藻、きのこ、緑茶を食べる回数が多い事

4、調味料は昔ながらの出汁と発酵系調味料 (醤油、味噌、酢、みりん、酒) が多い事

5、米と味噌汁を中心に、おかずの種類が多く、一汁三菜という形式が多い事 でした。

 これらを考慮した食事の献立を作り、20歳以上30歳以下の健康な男女32名の被験者を二重盲検で2群に分け、4週間それぞれの食事を摂取してもらい、試験前と試験後で体組成測定と血液生化学検査を行い評価しました。

 成分で言うと、1975年食は脂質が少なく、炭水化物が多い食事でした。しかし、現代食と比べると、食材数は1.14倍、煮る、蒸す、生の調理法は1.26倍、大豆製品、魚介類、野菜 (漬物)、果物、海藻、きのこ、緑茶は1.30 倍、昔ながらの調味料は1.43 倍、一汁三菜の頻度は1.42 倍でした。

 体組成測定の変化は、摂取エネルギーが変わらないにも関わらず、1975年食で試験前に比べて体重、体脂肪率、体脂肪量、BMIが有意に減少し、骨格筋量が有意に増加していました。試験後の状態を群間で比較すると、現代食群では体脂肪量が有意に高くなっていました。

 血液データでは、1975年食群では現代食群と比較して、試験後に有意に下がったものが、中性脂肪とLDL(悪玉)コレステロールで、HDL(善玉)コレステロールは上昇していました。マグネシウムの減少が抑えられ、インスリン濃度が少ない傾向が認められました。

 1975年食と現代食の栄養内容を比べると、自然に食欲と内臓脂肪を減少させるヒスチジンを多く含んでいたり、脂質代謝を促進するナリンギンが多かったりします。代謝障害、 インスリン抵抗性、脂肪組織炎症などを改善するピリドキサミン、メタボリックシンドロームを予防するカテキンやイソロイシン、コレステロールを改善するクロムやホウ素など、和食の食材に多く含まれる栄養が、試験後の状態に影響したと推測されました。

 さらに食事が精神健康度と睡眠状態にも影響があるのかについて、同様の試験で検討しています。結果としては、試験後に1975年食群では精神健康度が有意に改善し、睡眠状態についても、改善傾向があることが判明しました。運動能力についても同様の試験で検討されています。1975年食群では有意にシャトルランが速くなり、立ち三段跳びの距離が伸びていました。本当に和食恐るべしです!

 和食と一言でまとめると、健康に良い食事がハッキリしなくなります。江戸時代から戦前にかけての日本食は、塩分と白米による炭水化物過多が目立ち、良質の脂肪とタンパク質が不足していました。この時代には、脳卒中、特に脳出血が多かったですし、胃癌や結核も多く、体格も小さかったのです。

 戦後、食事にタンパク質や脂質が増えるにつれて、体格が良くなり、血管も強くなり、免疫力も上がりました。さらに食事の欧米化が進み、食材の少ないワンプレートの食事や、パン、お菓子などが多くなると、メタボリックシンドロームを始めとする慢性病の増加が止まらなくなっています。

 ちょうどバランスが取れていたのが1975年時代の和食なのでしょう! 地中海食も良いとは思いますが、日本人が先祖から受け継がれた腸内細菌に合う食事は和食です。食事に含まれる栄養だけではなく、腸内細菌が作る有益な物質が健康に関与する可能性はとても高いのではないかと蒼野は思います。

 飽食の時代になり、一人暮らしが多くなり、時間がなくなって食事が作れない人も多くなっています。しかし、この研究を見ると、健康のためには超加工食品や外食はなるべく少なくして、大豆製品、魚介類、野菜 (漬物)、果物、海藻、きのこ、緑茶などを増やし、昔ながらの作り方で作られた添加物の入っていない調味料を使って、煮る、蒸す、生で食べる回数を増やすことが大事です。

 偏りなく多種類の食材を食べれば、多種類の腸内細菌が日本人の身体に良い物質を作ってくれます。これは病気にならないだけでなく、メンタルも安定させ、運動能力も上げてくれる食事になる可能性が高いのです。年末年始、手間は掛かりますが、手作りの和食で元気が取り戻せると良いですね! 

 高齢になるにつれて、炭水化物の必要性は低下するので、年齢に合わせて野菜を増やし、ご飯の量は調節してくださいね! 蒼野も1975年の和食(15歳の時に何食べてたかなあ….)を思い出しながら、それに近い食事の回数を多くしたいなあと思いました。

1)健康的特徴を強化した日本食の機能性に関する研究 東北大学学位論文 菅原 沙恵子        http://hdl.handle.net/10097/00122672

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