ケトン体が人類を救う!

2022/01/16

 今日は蒼野が6年前に、糖質制限にハマったきっかけとなった本について紹介したいと思います。医学部で教えてもらったことには全く無かった内容で、当時の世の中の常識も、糖尿病になったら、脂肪を控えて、低カロリーの和食にするべきとの治療が一般的でしたので、衝撃的な内容でした。

 著者の宗田哲男氏は、現役の産婦人科医です。著者自身が、60代で糖尿病を発症されました。当時の治療であった、“決められた摂取カロリー以内の食生活に切り替え、運動し、血糖値を下げるインスリンを投与する” という従来の治療法では、どんどん体重も増えて、糖尿病が悪くなるため、“糖質をとらなければ血糖値は上がらず、糖尿病にならない”という考えを知り、糖質制限を実践した結果、半年後には15キロの減量に成功し、血糖値をはじめとする数値も正常になりました。

 妊娠中は、ブドウ糖の処理能力が下がるため、妊婦の12%が妊娠糖尿病と診断されます。当時推奨されていた、妊娠糖尿病の治療法では、やはり改善が見られないことから、理論を理解され、希望された患者様と一緒に妊婦の糖質制限を試みました。そして今までは堕胎を勧められていた、1型糖尿病の妊娠さえも、安全に出産出来ることがわかったのです。

 研究を進めると、赤ちゃんや胎児の臍帯血や絨毛のケトン体(体内の脂肪の分解によって生まれる物質)の濃度を多数測定した結果、基準値の20~30倍になることを世界で初めて明らかにしました。これはヒトが本来、ブドウ糖ではなく、脂肪から作られるケトン体をエネルギー源としていたことを示していると推測されました。

 1万年前に農耕が始まるまでは、人類は狩猟・採取が中心の低糖質・高タンパク、高繊維の食事を続けていました。飢餓の時には、身体に保存した脂肪をエネルギーに生きてきたのです。人類が誕生してから99.9%の時間は、精製した糖はほとんど取らずに生きてきました。人類のメインエネルギーは脂肪から作られていることを、胎児が証明しているのではないかと考えたのです。

 古典的な教科書にも、 脳細胞は通常でも20%はケトン体を使用しており(ハーバー生化学)、 完全脂肪食(エスキモー)の脳は、50~75%のエネルギーを脂質(ケトン体)から得る事ができる(ガイトン臨床生理学)と書かれています。エスキモーに虚血性心疾患や糖尿病や癌はほとんど見られません。

 本来人類の身体は、糖をたくさん取ることに対応できません。肥満や糖尿病、動脈硬化、癌、認知症など、さまざまなトラブルが生じることになります。人間本来のメインエネルギーに戻せば、より健康に、スリムに、一生過ごせる可能性が高くなるのです。シュガーバーニングから、ファットバーニングへの転換が重要です。

 宗田哲男氏が、結果を学会で発表された当時は、学会全体から、ものすごい批判とバッシングを受けたようで、本当に気の毒に思いました。糖尿病学会の重鎮たちは、学会で認められた、日本人が平均的に食べていると言われる、科学的根拠はない、炭水化物を60%、蛋白質、脂肪はそれぞれ20%になるカロリー比以外の食事は認めず、糖質制限などもってのほかだったのです。

 古典的な食事療法では、糖尿病患者様は更に太り、糖尿病が悪化し、沢山の薬が必要になり、合併症を防ぐためにインスリン治療が始まり、更に体重が増加してゆくというのが、糖尿病の典型的な経過です。医師も人間ですから、資本主義社会では、製薬会社と学会トップの癒着は普通にありますし、製薬会社がお金を出して得られた研究結果しか知らない医師は、それが唯一の方法だと信じてしまうのです。

 しかし真実は、少しずつ浸透していっており、世の中の糖質制限に対する考え方は変わってきています。2014年に発売された、糖尿病治療薬、SGLT2阻害薬は、ブドウ糖を尿から再吸収するSGLT2の働きを阻害し、尿にブドウ糖を排出する、つまり薬を使って糖質制限を行う薬です。この薬で、心血管死亡が38%減少、心不全による入院が35%減少しました。この薬は糖尿病ではないホリエモンが、予防で飲んでいることでも有名です。

 糖尿病を専門分野とする医師のための専門誌「プラクティス」でケトン体についての特集が組まれ、国立国際医療研究センター・糖尿病研究センターの植木浩二郎氏が「ケトン体は効率のいいエネルギー基質であり、多面的な採用を持つ機能分子であることが明らかになってきた」と述べられています。

 日本糖尿病学会理事長で東京大学大学院医学系研究科教授の門脇孝氏は、「総摂取カロリーのうち、糖質の量を4割程度に抑える、緩やかな糖質制限は推奨できる。糖尿病の治療としてだけではなく、健常者の減量法としても短期間で高い効果が期待できる」と述べ、東大病院でも糖質40%のメニューの提供が開始されました。

 医師全体の教科書とも言える「今日の治療指針」でも、糖尿病の食事指導について、2014年版からカロリー制限食に加えて、糖質制限食が併記されるようになりました。ファットバーニングでケトン体体質になると、ダイエットや糖尿病だけに効果があるわけではありません。

 癌は糖を栄養として増殖します。ミトコンドリアを持たない癌細胞はケトン体を使うことができません、1931年にノーベル賞生理学・医学賞を受賞したワールブルク博士が証明しています。癌を予防し、増殖させないためには糖質制限が有効なのです。糖質制限で癌を兵糧攻めにしましょう。

 リコード法のブログで書いたように、アルツハイマー病にも、糖質制限はとても有効です。糖が使えなくなった脳細胞が、ケトン体で甦るからです。てんかんにも有効なことは古くからわかっていて、厚生労働省は2016年4月に、ケトン食(てんかん食)に保険を適応するよう規則を改正しました。ケトン体は人類を救う可能性が高いのです!

 古くからの栄養学では、糖質摂取量の目安は、2000kcalを1日に摂るとすれば、そのうちの50~60%を炭水化物で摂ることになるため、1000~1200kcal、つまり炭水化物1gを4kcalとすれば、250~300gの糖質を摂ることが推奨されていました。そして日本人の平均は300gです。でもそれは摂り過ぎです。ロカボ、1日60~120g位に抑えるのが健康的で、全員が目指す数値になると思います。病気の治療に使う場合には、より厳しい糖質制限が必要になります。

 注意点としては、主食の量を減らしたら、その分のカロリーを別に取る必要があります。おかずをたっぷりと取るというイメージです。脂肪やコレステロールは悪いものという思い込みによって油などを避けてしまうと、エネルギー不足で体がボロボロになってしまうので気をつけてくださいね。

 もう一つ、糖質制限で陥りやすいのは、肉や魚、卵、チーズなどばかり食べる生活です。食物繊維をたっぷり摂らないと、腸内細菌叢が悪化し、老化や様々な慢性病の原因になります。あくまで野菜を主食に、必要量のタンパク質(健康長寿のためには、体重×0.8~1g程度)を摂り、身体に良い脂質たっぷりの食生活がお勧めです。

 蒼野がピンときて、糖質制限を始めた6年前と比べると、現在の状況は隔世の感があります。しかしまだまだ、昔ながらの栄養学や考え方を勧める人も多く、糖質制限を否定する人もおられます。逆にスーパー糖質制限で、エスキモーのように、一生ケトジェニックに出来るなら、それも良いと思うのですが、現代生活の中で、極端なケトジェニックな状態をキープするのは、かなり難しく、栄養が偏るリスクもあるのではないか、と蒼野は考えています。

 一人一人が、ずっと続けられる良い食事パターンを見つけてゆくことが大切ですね! 蒼野はまたいろんなデータが出てきて、考えが変わるまでは、16時間ファスティング+ロカボ+脂質多めの食事を続けたいと思っています。

参考書籍: ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか  宗田 哲男

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