笑って過ごせば不調は良くなる!?

2023/04/12

 今日は笑う事で、病気が治りやすくなることがある、という事について書いてみたいと思います。一般的な西洋医学の考え方では、「そんなバカな」と言われがちな事ですよね。でも笑うことで遺伝子の発現を変化させることができればあり得ることなのだ、と思われる症例は、稀ながら、あるようなのです。

 この事象についての有名な記録は、「難病を笑い飛ばした男」ノーマン・カズンズのストーリーです。ニューヨークタイムズの記者だったノーマン・カズンズは、1964年、55歳の時に膠原病の一種で、日本でも難病に指定されている強直性脊椎炎を発症しました。

 この病気は、脊椎・骨盤(仙腸関節)及び四肢の大関節を侵す慢性進行性の炎症性疾患です。多くが30代で発症し、明らかな原因は不明なものの、HLA-B27遺伝子との強い関連性が指摘されています。全身の関節に炎症が起こって痛み、動かなくなり、固まってしまう難病です。未だに治療法は見つかっていません。寿命も短くなることが知られています。

 ノーマン・カズンズも、1週間しないうちに歩けなくなり、医師からは、全快するのは500人に一人くらいだと説明されたそうです。当時の検査で、炎症の程度を表す血沈検査では、正常が1~10mmのところノーマンは115mmまで亢進していました。蒼野からみても、かなりの炎症が起こっているものと推測されます。

 今まで行われて来た治療ではダメだと考えたノーマンは、病院からの薬を全てやめて、人生の明るい面だけに注目する事にしました。笑うと痛みが少し和らいだからです。コメディ映画やコミックお笑い番組などを見ては、意識的に笑うようにしました。1分間思い切り笑うと、少なくとも2時間くらいは、痛みを感じないで眠れるようになりました。

 測ってみると血沈の値は、笑った後に下がっていました。疲弊した副腎皮質に対して、ビタミンCの服用も併用し、笑い続けていると、絶望的な予後を宣告されたにも関わらず、2週間後には歩いて退院する事が出来ました。そして数ヶ月後には職場復帰を果たし、後年、この闘病体験記を、学会誌に発表しました。

 ノーマンはさらに医学を勉強して、カリフォルニア大学医学部の大脳研究所の教授となり、『笑いと治癒力』という書籍を著し1)、1990年、75歳で寿命を全うされたとのことです。ある意味、とても不思議な話ですよね! 難病を患っている人にとっては、大いに参考になる話だと感じます。

 その後もいくつか、笑いに関する研究が出てきています。2001年の論文では、笑いがストレスホルモンを減らし、免疫細胞の活動を向上させることが観察されています2)。また2007年の論文では、糖尿病患者が映画を見て笑った後、血糖値の上昇が抑制されることが示されています3)。興味深い現象ですよね!

 面白いことや、楽しいことを、毎日行うことで、ストレスホルモンが減り、幸せを感じる脳内伝達物質が分泌される事は、もう周知の事実です。その反応を司るホルモンや酵素などは、タンパク質で出来ています。そのタンパク質を、いつ、どこに、どれだけ作るかを決めているのが遺伝子の発現なのです。我々の細胞の中にある設計図に書いてあるからこそ、可能な現象です。

 メンタルと遺伝子の発現の関係は、まだその因果関係が完全に証明はされていません。今までの研究も相関があるということを示しているだけです。笑いは脳内のメラトニン分泌を促し、抗酸化作用を増し、ストレスを減らし、良い睡眠をもたらします。またノルアドレナリンの分泌を減少させ、血圧を下げ、心臓病の予防に寄与します。

 面白いのは作り笑いでも効果がある事です。自然に出てくる大笑いや微笑みでなくても、口角を上げて微笑む、思い出し笑いをするだけでも効果があります。またユーモアがあって、いつも人を笑わせている人の唾液中のIgA (免疫系が作る抗体の一種)や、笑いに敏感で、いつも笑っている人のIgAは高値を示すのです4)。 

 笑いって不思議ですね。抑制されていた感情を吐き出して、ストレスを発散するその効果は、古くから注目されており、プラトンやアリストテレス、カント、ショーペンハウエル、ベルグゾン、フロイトからダーウィンに至るまで、名だたる哲学者や心理学者、科学者が考察を発表しています。

 蒼野は38年間、西洋医学を中心に勉強してきて、治せない病気が星の数ほどあることを痛感して来ました。身近では風邪一つとっても、治す薬はありません。医師の役割は、あくまでも患者様の自然治癒力のヘルプです。様々な原因で、治癒力が低下して発症した状態を、研究によって有意差が出ている、薬や手術などの治療によって、我々の細胞一つ一つの遺伝子の発現を変化させる事によって、治しやすくするという役割です。

 笑いというアプローチで、遺伝子の発現が変化しても、何ら不思議は無いと感じます。心の状態が客観的には把握しにくいため、これまでの西洋医学では、心の部分がほとんど無視されてきただけだと思います。昨日も書いたように、心の動きは、遺伝子の発現を変える作用があるのです。

 笑顔を見ると嬉しくなりますし、ストレスが緩和されます。笑いヨガという方法もありますね。血流も良くなるので、心血管系の病気の予防にも良い影響を与えます。みんなで行う事で、社会的なつながりも広がりますね! 蒼野はいつもニコニコしている人に惹かれます。

 このところのコロナ禍や戦争、労働環境の変化、経済状況、少子高齢化、都市化、インターネットやSNSの普及などが、ストレスや孤独感の増加につながり、日本人の笑顔が減っているという考察もあります。作り笑いで良いという事なので、毎日笑顔を作る習慣をつけたいものですね!

 天気が良いとか、春が来たとか、散歩が気持ち良いなど、何かしら、毎日楽しいことを見つけた時に、すかさず笑おうと思っている蒼野でした。

参考書籍: 
1)Anatomy of an Illness as Perceived by the Patient   Norman Cousins 

命(いのち)のバカ力(ぢから)  村上和雄

参照文献:

2)Modulation of neuroimmune parameters during the eustress of humor-associated mirthful laughter. Alternative Therapies in Health and Medicine, 7(2), 62-76. 2001

3)Laughter lowered the increase in postprandial blood glucose. Diabetes Care, 30(5), 1299-1301. 2007

4)The effect of mirthful laughter on stress and natural killer cell activity. ; Alternative Therapies in Health and Medicine, 9(2), 38-45. 2003 

もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。