足の浮腫の対処法!

2023/07/22

 蒼野の外来にも、高齢の女性患者様は多くいらっしゃいます。脳外科ではありますが、よく相談を受けるのは、足の浮腫です。入院患者様で足が腫れている方は多くいらっしゃいます。うちの母親も、夕方になると結構腫れていることが多いです。ということで今日は足の浮腫とその対策について書いてみたいと思います。

 2007年度の厚生労働省の調査によると、日本人全体の32%が、足のむくみやだるさを感じているそうです。女性に多く、高齢になるにつれて頻度は上昇します。女性では65歳を過ぎると過半数に下腿浮腫が見られ、65~69歳の57%、70~74歳の70%、75~79歳の83%、80~84歳の90%、85歳以上では95%と、足が腫れていない人の方が珍しい状態です1)。

 22歳から54歳の働く女性へのアンケート調査でも、時に浮腫む人が50%、よく浮腫む人が24%、非常に浮腫みやすい人が9%、浮腫まない人は17%で、8割以上が日常生活での下腿浮腫を経験しています。場所としては下腿59%、足関節23%、足10%、大腿8%でした。他覚的な浮腫の診断としては5秒間強めに押さえて、明らかに圧痕ができるものを浮腫と判定します。

 動けない車椅子の人では特に高頻度に、浮腫が見られます。足関節や足が腫れて、靴が履けない入院患者様は、蒼野もしばしば目にします。心不全や腎不全、肝硬変、低栄養、甲状腺機能低下などが無い、両足の浮腫の場合には、もっぱらリハビリと下肢挙上、弾性ストッキングでの対応となります。

 片足だけの場合には、下肢静脈瘤や深部静脈血栓症、脳卒中後の麻痺側の浮腫やリンパ浮腫などが鑑別にあげられます。足の傷から菌が入って、蜂窩織炎になっている場合には、痛みや発赤や熱感があるので鑑別できます。しかし大部分の両足の浮腫の場合には、生活習慣と加齢が原因になっていることが多いのです。

 二本足歩行をしている人間の場合、心臓から送り出された血液は、重力の影響を受けて足に溜まりやすいのは宿命です。重力に逆らって肺や心臓まで戻すのは大変です。そのポンプは足の筋肉です。そして足の静脈には弁がついていて逆流しない様になっています。歩行して筋肉が収縮すると、一緒に静脈も圧迫されます。弁があるために、心臓に向かって血液が戻ってゆくのです。

 しかし加齢と共に動かなくなる人は多いです。また静脈の弁も経年劣化によって、弁機能が低下してきます。ポンプを使う頻度が減った上に、静脈の逆流が起こる様になれば、下肢に血流が滞ってしまうのです。筋肉の衰えは特に高齢女性で顕著になりやすいこともあり、下腿浮腫は高齢女性には必発というくらい起こるのでしょうね!

 加齢に伴う浮腫=老人性浮腫の中で、いつも足が腫れている状態を、慢性下腿浮腫と呼びます。ある意味生活習慣による物ですので、調べても異常が見つからないことが多いのです。やはりまず行うべき対策は生活習慣改善です。一つ目は運動です。

 長時間座り続けていると足は浮腫みます。車椅子の人は特に顕著です。ポンプが止まっているのですから、血液の戻りが悪いのは当たり前です。立つだけでも違います。できれば踵上げ運動が良いですね。うちの母親にも毎日やるよう電話をかけています。歩ける人は、毎日歩くことが重要です。休みながらでも良いので、こまめに近くの買い物などに出かけましょう。

 逆に長時間、足を動かさずに立っているのも良く無いです。重力の影響が大きくなってしまうからです。静脈の弁が逆流する人では、静脈をポンプの様に圧迫しなければ、血液は心臓に戻りません。高齢になって動作が遅くなり、作業に時間がかかる様になると立ちっぱなしの時間が長くなってしまう場合があるのです。立ちっぱなしだなと感じたら、休んで足を上げたり、屈伸運動や踵上げ、アキレス腱伸ばしなどを行うと良いのです。

 歩行が小刻みな人や、すり足になっている人も、筋肉のポンプ作用が効きにくくなっています。ふくらはぎの筋肉が十分に収縮しないためです。時々のストレッチや、手すりを持って、足を上げる足踏みや、足首回しなどを心がけましょう。

 塩分の過剰摂取は、体内の塩分が多くなることで、適正濃度に希釈するために、体内の水分量も多くなります。ホメオスタシスのために、塩分濃度は常に0.9%に保たれる必要があるからです。食事の塩分摂取と、カリウム摂取に気をつけましょう。野菜果物などでカリウムをしっかり摂っていれば、塩分の排出は促進されます。

 マッサージも有用です。足首を回す。足を下から上にさする。アキレス腱を摘んで揉んだり、膝裏のリンパを押したりするのも良いです。蒼野のお勧めは、横になって膝を立て、反対の下腿を膝に乗せて上下に動かすことです。足の重みで、自分で調整しながらマッサージが出来ます。同時に腹筋などのトレーニングにもなります。

 確実に効果があるのは、弾性ストッキングなどの着圧ソックスです。ひどい浮腫の場合は、薬局や病院で購入し、医療用の物を使う方が良いと思いますが、キツすぎではいらないという人もいます。手軽に購入できるメディキュットなどでも効果はあるので、TPOに合わせて試してみるのをお勧めします。

 椅子に座る時にも、出来ればオットマンなどを使って床と並行、またはそれ以上に足が上げれると良いです。低い台だと効果は無いため、長時間座る場合には、お尻と同じくらいまで上げておくのが良いです。椅子で足と背中が直角だと難しい人もいるため、ソファやリクライニングのできる椅子に座ることも大事です。寝る時の足枕もお勧めです。

 浮腫を放置すると、身体は冷えやすくなり、特に高齢者では血流の悪化から、筋肉がこわばってさらに動きにくくなったりするため、フレイルやサルコペニアのリスクになります。血流が悪いとちょっとした傷から蜂窩織炎も出来やすくなります。浮腫で足首や膝の動きが悪くなることで、転倒リスクも上がり、骨折から寝たきりの原因になる可能性さえあるのです。

 基礎疾患からの浮腫でなければ、直接死亡に関わる病態では無いことが多いですが、早めに自分なりの対策を立てておき、予防する生活を送ることが重要だと思います。漢方薬では、軽度浮腫に対しては、五苓散や柴苓湯(4週間投与でやや有効以上は62~65%)2)、膝が痛い高齢女性の、水太りに伴う硬い浮腫に対しては防已黄耆湯が有効です。膝の水が溜まるのを有意に押さえてくれます3)。

 蒼野の今までの経験からは、やはり物理的に足の血液やリンパ液を心臓に戻すのが最も効果的です。漢方だけでは中々改善しないことは多いからです。毎晩湯船に浸かるのも、水圧と血流改善の作用があるため、足を上げながらゆっくり浸かると良いと思います。

 今日の勉強で、いつも足が腫れているおばあちゃんに、アドバイスする項目が増えてしまった蒼野でした。

参考文献:

1)下肢浮腫の疫学と弾性ストッキング ―とくに足部の浮腫について 静脈学,22(1):39-45,2011

2)漢方の臨床. 1997; 44: 1091-5

3)Effect of the Japanese herbal medicine, Boiogito, on the osteoarthritis of the knee with joint effusion. ; Sports Medicine Arthroscopy Rehabilitation Therapy Technology. 2012; 4: 1-6

参照ページ: メディキュット8種類をガチ検証!足のむくみを撃退できたのはコレ
       https://ar-mag.jp/articles/-/11818?display=full

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