世界の長寿食と短命食!

2022/02/17

 人間の健康長寿に興味のある蒼野は、世界の長寿地域の生活スタイル、食事などにもとても興味があります。今日は、WHOの協力を得て、20年にわたり世界25カ国61地域を、主に50代を中心に調査し、長寿の因子について科学的な解明をしてきた、京都大学名誉教授の家森幸男先生の記事をご紹介したいと思います。

 人種が近い民族でも、住んでいる場所によって、超短命の地域も、長寿地域もあると言うのは、興味深いことです。現在、習近平のジェノサイドで問題になっている新疆ウイグル自治区にも、短命地域と長寿地域があります。

 アルタイ山脈の山奥のアルタイ地方では、カザフ族が、遊牧生活を営んでいます。山奥の厳しい自然の中ですので、食事は主に羊で、脂身や肉、ミルクから作るバターや、チーズを大量に食べているのです。住む場所をつぎつぎと変える遊牧生活では、野菜の栽培はできないため、ほとんど食べられません。また「野菜は羊の食べる草であって人間の食べるものではない」と考えられているのです。

 飲み物も、一番飲まれているのは、バターや塩をたっぷり入れた「バター茶」です。食事の中の脂と塩がとても多く、50代で高血圧になります。脳卒中や虚血性心疾患を発症して亡くなることも多く、60代まで生きられる人は稀な、超短命地域なのです。食事でナトリウムと脂肪の摂取が多く、カリウムが少ないことが特徴です。

 一方、トルファンやホータンなどの、砂漠の中のオアシス都市に住む人々は長寿です。オアシスの豊富な水を利用して、野菜や果物を栽培する人々です。ウリやスイカ、アンズ、ブドウなど多種多様の野菜や果物が市場に並んでおり、さまざまな野菜料理が食卓に並びます。野菜と羊の肉を入れた炊き込みご飯がよく食べられており、炭水化物、たんぱく質、食物繊維、カロテンなどの抗酸化栄養素がこの1品で全て摂れるものです。

 有名な羊料理「シシカバブ」も、肉の脂を落とす焼き方で、味付けはカレー味の香辛料を使うため塩分は少な目です。飲み物は塩やバター入れず、ヨーグルトの摂取が多いのです。50代でも、人々の高血圧、高脂血症、肥満は少なく、100歳以上の高齢者が、元気はつらつと暮らしています。

 地図で見ると、アルタイとトルファンは600kmくらいしか離れていません。民族的にも近く、遺伝子の違いというよりも、やはり環境と食べ物が、長寿に大きな影響を与えていることが、感じられます。

 アルタイの人々は塩辛い羊の肉を大量に摂取し、野菜や果物を食べず、塩入りのバター茶を大量に飲む生活。一方トルファン、ホータンの人々は、野菜や果物を豊富に摂り、肉は脂を落として、香辛料で食べ、ヨーグルトを摂って、普通のお茶を飲むという違いです。

 家森先生は、このほかにも世界の様々な、長寿地域と短命地域を訪れて、研究をされています。特徴的な地域を挙げてみると、世界の長寿地域と言われるグルジアのコーカサス地方では、カスピ海ヨーグルト、全粒粉のパン、プルーン、葡萄などの果物や野菜、煮豚、フレッシュチーズなどを食べます。

 中国の貴陽では大豆ととうもろこしで作る餅が主食で、蒸した魚とたっぷりの野菜を食べます。塩分摂取が少なく、中国の調査の中でも血圧が低く、大豆が長寿の原因になっているようです。大豆の中に含まれるイソフラボンは、様々な健康効果があるのですが、貴陽の人のイソフラボン値は高く、コレステロール値も低かったのです。心臓病や脳卒中、癌の罹患率も低いことで、長寿地域になっているようです。

 地中海に面したの長寿地域は、全粒粉やライ麦のパン、オリーブオイルをかけた山ほどの野菜サラダ、葡萄やベリーなどの果物が多く、肉と魚は週に数回程度です。南米・エクアドルのビルガバンバ地方はイモとトウモロコシが主食で、果物や野菜、香草、乳製品を多く食べ、焼いたモルモットを時々食べる程度です。

 日本の長寿地域の沖縄では、大豆製品や野菜などいろいろな食材を、適量の油で炒めたチャンプルーを食べます。豚足は煮込んで油を落とし、果物、ゴーヤなどの野菜以外に、昆布などの海藻も多く食べます。島豆腐を多く食べることで、日本の全国平均の1.5倍の豆腐を食べています。沖縄の塩分摂取量は8~9g/日で、日本人平均の12gよりかなり少ないです。高血圧も、高脂血症も少なく、動脈硬化にもなりにくい食事と言えます。 

 一方短命地域のスコットランドは、土地が痩せて野菜があまり穫れず、フィッシュ・アンド・チップスのように、フライにした魚とジャガイモを多く食べます。デンマークのコペンハーゲンは、寒いので沢山塩を使います。塩辛い魚の酢漬けやスモークサーモン、加工肉やローストした豚肉にジャガイモが定番で、料理の種類が少ないようです。

 こうやって比べてゆくと、長寿のための食事が見えてきませんか? 蒼野は血液データや、血圧を見ながら、患者様に食事について質問しているのですが、データが悪い人はやはり食事が悪いことが多いです。地域ではなく環境とその人の健康意識で食事は多種多様になると思います。

 同じ日本人でも、外食が多く、脂と塩分たっぷりの、同じようなメニューを繰り返すことが多い独身男性がいます。一方、野菜好きの健康意識の高い奥様が一緒に居て、季節ごとに様々な家庭料理を中心に食べる男性もいます。その健康状態の違いは、まるで世界の長寿地域と短命地域を見ているようです。

 長寿地域の食べ物の共通点をまとめると、魚や肉のバランスが良い、大豆やナッツ類が多い、たっぷりの野菜や果物、動物性脂肪や加工肉はほどほど、ヨーグルトなどの発酵食品、そして塩分摂取が少ないことが挙げられるようです。

 伝統的な日本食には、長寿食の要素がたっぷりと詰まっています。ただ食塩摂取に関しては、現在目標値である女性7.5g、男性9.0g未満を達成している人は少ないようです。また350g以上摂った方がよい野菜に関しても、平均291gと満たしてはいません。しかし、ただ平均を見るだけでは、問題は解決しません。

 食事は人によって大きな差があります。食費の問題もあり、バブル崩壊以降、収入が上がりにくくなった現代では、豊かな食事が摂りにくくなっている人が沢山いると思います。アメリカなどでも、貧困層が多い地域には新鮮な野菜や肉などを売っているお店が少なく、ファストフード店が多いことや、肥満者や肥満ぎみの人が多いことが報告されています。

 沖縄でも若い人の食生活は、すでに長寿食ではなくなっています。食育はとても重要で、幼少期に慣れ親しんだ味は、お袋の味として、一生食べ続けることもあり、幼い頃にファーストフードやチェーン店、コンビニなどの食事を、スタンダードにしないことが、今後の日本人の健康を守る上で、とても大事なことになるように思います。

 食塩の摂取量が1日7gになれば、脳卒中の死亡率はゼロになると言われています。食塩を9gに減らしただけでも、脳卒中の死亡率は30~40%減る計算になるそうです。それにプラスして魚、大豆をたっぷり取ることによって、動脈硬化が防ぎやすくなります。

 毎日食べるものは本当に大切です。それぞれの好みもあると思いますが、ぜひ長寿食を取り入れながら、体調を整えていきましょうね!

参考書籍: 遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」  家森 幸男 

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