よく見かける長期投与が気になる薬!

2023/09/02

 先日年上の脳外科の先生が、病院を辞められて、外来患者様を大量に引き継いで、毎日が忙しくなっている蒼野です。高齢で何年も通院されている方が多いのですが、出されている薬が、例に漏れずとても多い人が多いです。良い機会ですので、少し薬が減らせないかを、症状を聞きながらトライしています。

 今日は何度か書いている多剤併用の中で、気をつけてほしい薬について、2種類ほど解説したいと思います。高齢になると、あちこちの不調が出てくるのは普通です。長く使ってきた身体ですから、使い方が悪かったり、使い過ぎたりすると老化が進んでしまうのです。真面目な方、心配症の方ほどそれを病院で相談します。西洋医学ではその症状を抑える薬で対応するのが常識となっています。

 薬にも色々ありますが、都合よくその症状だけに効いてくれて、全く他には影響が出ないという薬はほとんどありません。薬の作用のメリットが、副作用のメリットを上回る場合に、使用するのが適切な使用法なのです。しかし自分の反省も含めて、短い外来時間で注目するのは、その効果についてであることが多いです。

 つまり副作用については、患者様が訴えなければそのままになることが多いのです。素人の患者様が、もらっている薬の副作用まで、全て読んで理解している方が居ないのは当然です。薬のせいとは夢にも思わず、飲み続けて不調が出て、その不調を担当と思う科で相談すると、その不調に対する検査や薬が出されるという場合も多いのです。

 2009年のオーストラリアの調査では、 2002年から2008年に報告されたオーストラリアの入院患者の約2%~3%が薬物関連であると報告されています。高齢者では、薬の代謝が悪くなることで、さらに副作用は出やすくなるため、その比率は15~20%に跳ね上がります1)。薬の飲み過ぎで入院するのでは本末転倒ですよね!

 これは医療費を自分で払っているオーストラリアでの調査です。日本は国民皆保険で、高齢者の医療費負担は1割の人が多いですし、外来で見ていると生活保護で、医療費ゼロの人も多いのです。医師は不調を訴えて受診された患者様に対して、何もしない医師は少なく、薬を処方する事が多いです。良かれと思って生活指導だけにしたりすると、「わざわざ受診したのに、薬もくれなかった」という患者様の評価を受けたりするのです。

 日本の医療は専門化が進んでいます。同じ内科でも、全部を診れる人は少なく、呼吸器内科、内分泌器内科、消化器内科、循環器内科といった具合に、臓器別、疾患別に診療科が異なっているのです。もちろん総合診療科という科目もありますが、2018年に専門医制度ができたばかりで、2021年から専門医がデビューし始めたばかりなのです。

 いわゆる専門バカというと、言葉が悪いのですが、薬を処方して他科での副作用が起こっても、分からないことも多いということになります。オーストラリアよりも、圧倒的に多剤併用が普通の日本では、オーストラリア以上に薬害による被害が出ていると思われます。出来るだけ必要ない薬は減らすということは、とても重要だと思うのです。

 うちの母を見ていて思うのは、もらってきた薬が山の様に余っている現実もあります。確かにお腹がいっぱいになるほどの種類の薬は、現実的には飲めません。でも薬が余っていても、定期受診した際は「お医者さんに悪い」と思って薬をもらってくるのです。脳卒中の再発で入院した患者さんに聞くと、本当に必要な薬を飲まずに、イベントが起こってしまう人も多い様に思います。

 それでは、蒼野が減らしたい薬を2つ紹介したいと思います。一つ目は痛み止め(NSAIDs)です。毎日1日3回のロキソニンを、2ヶ月分処方されている患者様がいます。聞いてみると痛いところは無いとのことです。やめてみて、痛い時だけ飲む様にお話ししました。

 加齢と共に、老廃物の排出と、必要な栄養の再吸収という激務をこなしてきた腎臓は、徐々に機能が低下してきます。NSAIDsは腎臓の血管を狭め、腎臓の血流が悪くなります。脱水も高齢者の腎機能低下の大きな原因ですが、同様にNSAIDsも腎臓に負担になるのです。薬剤性腎障害の原因としては、抗菌薬とNSAIDsが最多で、合わせると60~70%を占めるという報告が多いのです2)。

 漫然と痛み止めが処方されていることについては、蒼野はとても気になります。今回は自分の外来患者への移行ですので、減薬をお勧めできるのですが、NSAIDsが一番処方されているのは整形外科です。もし外来で見かけても、勝手には減らせません。基本的に痛み止めは飲んでいる間しか効きませんし、頭痛で言えば飲みすぎると、薬剤乱用頭痛と言って頭痛が酷くなります。本当に長期的には飲んで欲しくない薬です。

 次に気になるのはPPI(プロトンポンプ阻害剤)です。近年増えている逆流性食道炎にはよく効く薬です。ピロリ菌感染率が低くなり、また除去治療が進んだ事で胃酸分泌が亢進しやすくなっています。肥満によって胃が下から押され、横隔膜が緩んで、胃の上部が横隔膜より上に入り込む食道裂孔ヘルニアによっても、胃酸が食道にびらんを作ります。

 胸焼けや、酸っぱいものが上がる、喉が詰まったり違和感がある、咳が続くなど、胃酸が食道に逆流することで症状が出ます。PPIは、胃の壁細胞から胃酸が分泌される際に働くプロトンポンプを阻害し、胃酸が出てこなくなるため、ビランや胃潰瘍が治りやすくなるのです。先ほどのNSAIDsは胃腸障害の副作用もあるため、合わせて投与されていることも多いです。

 腰痛などでロキソニンが手放せない人は、PPIも手放せなかったりもするのです。PPIに関する長期投与の副作用の研究では、1万7000人以上を対象に、PPI開始後3年間調べた研究で、有意なものは腸管感染症だけでした。これは胃酸低下で口から入ってくる細菌が死ななくなり、腸内細菌叢が変わったり、小腸で細菌が増えたりすることを意味しています。

 腸は免疫の中心であり、腸の状態が老化や全身の慢性炎症に関わっていることを考えると、これだけでも、十分に危険で、様々な病気に繋がるのではと、蒼野は心配になるのです。それ以外にも、カルシウムやビタミンB12の吸収が悪くなるため、骨粗鬆症が進んだり、貧血が起こったりするのも気になります。

 しかし外来でずっとNSAIDsやPPIが出されているお年寄りは結構多いのです。症状がない場合には一旦やめてみる様、説得しています。しかしこれらを止めると、痛いので出して欲しいと言われる方も確かに居られます。痛みがある人を問診すると、自宅でじっとしていて、ほとんど動いておられない方が多いです。薬を止めるためには、運動から指導するべきなのでしょうね。

 日本の投薬事情は根深い問題があります。患者様の方から止めたいと言われれば、薬は減らしてもらえるので、自分が飲んでいる薬に関しては、医師に質問したり、自分で調べたりして欲しいと思います。そして飲んでいて調子が悪いと思ったら、疑ってみることが重要です。これは自分を守ることに繋がりますので、是非意識しておいて欲しいと思います。

 最後に、不調を訴えても取り合ってくれないお医者さんは、変えた方が良いかもしれません。蒼野自身、全身の健康に興味が湧くまでは、脳外科の事しか分かっていませんでした。医者選びも本当に難しいと思います。いろんな症状に対しての最低限の知識は身に付けたいと勉強している蒼野でした!

参考文献:
1)Medication safety in acute care in Australia: where are we now? Part 1: a review of the extent and causes of medication problems 2002–2008. ; Australia and New Zealand Health Policy 2009, 6:18 doi:10.1186/1743-8462-6-18

2)薬剤性腎障害と薬物の適正使用  日腎会誌 2012;5(4 7):999-1005.

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