今日の話題は慢性炎症です。古代人と同じDNAを持つ我々は、現代生活で大きく変化した、食事、運動、睡眠、ストレスなどの影響により、常に体内に炎症を起こしている人が増えています。生活習慣病にも密接に関わり合っている慢性炎症について今日は解説したいと思います。
20年以上、百寿者研究をおこなっている慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの論文によると、通常高齢になるにつれて高くなる体内炎症のマーカーは、元気で、介護が必要ない百寿者では十分の1程度のごく低値におさまっており、死亡のリスク、認知機能の喪失、介護度の増加と密接に関わっていることが判明したと報告されています1)。
また糖尿病や心臓病、肥満、腸疾患、がんやアトピー、花粉症や喘息など、近年増加している多くの疾患も炎症が高い状態であることが指摘されているのです。うつ病やアルツハイマー型認知症などは脳内の炎症に関連していると報告されています。
体内の慢性炎症があると、老化スピードが早くなり、動脈硬化(血管壁の慢性炎症)も促進するため、あらゆる疾病リスクが上昇します。動脈硬化で血流が悪くなれば、細胞への酸素や栄養が届かず、老廃物も排除しにくくなるため、老化が進んでゆくのは当たり前です。
炎症反応が高いと、脳の老化が進み、認知症リスクが上昇する上、メンタルの悪化にもつながります。疾病に限らず、はっきりしない謎の体調不良の原因にもなります。体内の自律神経や摂食ホルモンも乱してしまうため、肥満も炎症によって引き起こされるのです。
健康長寿のためには、体内炎症を抑えることが、基本的な健康法になる事は理解できますよね。炎症には酸化や糖化が関与しています。活性酸素を多く発生させるタバコやアルコールは炎症を引き起こします。血糖スパイクや睡眠不足も慢性炎症の原因です。ストレスの関与も大きく、イラッとしたり、カッとしたりすると、交感神経が興奮し、自律神経は3時間くらい乱れっぱなしになります。これはタバコ3本分の炎症を引き起こすそうなので、アンガーマネージメントはとても重要です。
心のレジリエンスが大切になります。闘牛士が暴れ牛を受け流すイメージで、イライラや怒りを受け流しましょう。悲しみも炎症を引き起こすため、ある程度悲しんだら、気持ちを切り替えましょう。身体を動かし、運動で発散するのが一番手っ取り早い方法です。
2001年に報告された「修道女研究」では、平均22歳の修道女180人の手記に「喜び」や「感謝」といったポジティブ感情を表記していた修道女の方が,ネガティブ感情を記していた修道女よりも 60年後の健康状態が良く,最長で10年も長生きしたとされています。気持ち以外の生活は同じように送っていたはずですので、ストレスに対する反応が、これほど健康や長寿に関係しているというのは、とても参考になります2)。
ネガティブ感情が、炎症性マーカーを高くする、慢性炎症と関連するという論文は何本も認められます。同時に血管疾患や動脈硬化、痛みなども、ストレスに対する受け止め方で、大きく変化することも多くの論文で報告されています。何かあっても、「まあ良いか」とスルー出来る人は、炎症が低くなりやすく、健康で居られる可能性が高まるのです。
心の問題は置いておくと、体内炎症を常に生み出すものは何かご存じでしょうか? それは内臓脂肪や脂肪肝などの異所性脂肪です。脂肪細胞は単なるエネルギーの貯蔵庫ではありません。脂肪細胞から大切なホルモンである様々なアディポサイトカインが分泌されています。メタボリックシンドロームが疾病の大きな原因であるというのは常識になってきています。
リンゴ型肥満のぽっこりお腹からは、体内炎症を引き起こす悪玉のアディポサイトカイン(TNFα、PAI-1、レプチンなど)が、多く分泌されています。一方痩せている場合には、体内炎症を抑え、血糖を下げ、血管を広げて血圧を下げ、細胞壁を修復して動脈硬化リスクを下げる善玉のアディポネクチンが多く分泌されています。
内臓脂肪が増えて、満腹ホルモンであるレプチンが常に分泌されていると、視床下部はレプチンに反応しなくなります。レプチン抵抗性です。いくら食べても満腹にならなくなるため、食欲が大いに増進し、さらに内臓脂肪が溜まっていくという悪循環に入ってしまいます。体内は炎症で燃え続ける状態が続いてしまうのです。メタボが健康に悪いというのはこのためです。
内臓脂肪は、ダイエットによって皮下脂肪よりも簡単に落とすことができます。食事では、低脂肪ダイエットよりも、低糖質ダイエットの方が有効であるという報告が多いです。最大心拍数の60%程度になるような、ちょっとしんどい程度の有酸素運動を組み合わせると、効率的に落とすことができます。週3回20~30分程度でOKです。
具体的な脈拍は1分間に、20歳で120、30歳で114、40歳で108、50歳102、60歳で96です。筋トレをしてから有酸素運動を行うと、成長ホルモンが分泌されるので、内臓脂肪から中性脂肪が血中に出てきやすくなり、それが有酸素運動で燃えてゆくため、ガンガン減らすことができます。蒼野は96/分で良いので嬉しいです。
16時間断食もとても有効です。まずは12時間からで良いので、食事の間の時間を少し長くしてみましょう。内臓脂肪がついているような肥満状態では、インスリン抵抗性も上昇しており、脂肪が溜まりやすい状態になっています。空腹時間が長くなると、インスリンが低値になるため、抵抗性が解消します。インスリン抵抗性で高インスリン血症になっていると、脂肪は減りにくいので、週1回の短時間からで良いので、取り入れてみると良いと思います。
健康効果のあるダイエットの原則は、一生続けられるということです。ストレスを溜めながら行うダイエットは、効果は低いですし、ずっと続けることが出来ません。特にメンタルがダウンしているような人では、きちんと3食バランス良く食べた方が良いです。1日の体内リズムを作る食べ方が、健全なメンタルをサポートします。短期間での結果を求めないダイエットの方が良いのです。
糖質制限にしても、1日の糖質を130g以下、1食の糖質を40g以下として、血糖スパイクを作らない程度に抑えると、長続きしやすいです。蒼野自身の経験でも、糖質をゼロに近づけてゆくと、無性に甘いものが食べたくなりますし、筋肉まで落ちやすかったので、リバウンドリスクが高くなることが分かりました。
最後は腸内フローラを健全化することです。体内の慢性炎症は腸から始まることが多いです。炎症を起こす食べ物はほどほどにしておく必要があります。具体的には砂糖、特に清涼飲料水などに入っているブドウ糖果糖液糖などの異性化糖はNGです。甘い飲み物は駆逐してください。血糖スパイクを作らない量で食べるのがポイントです。
それから乳製品や小麦のグルテンは、減らすのが重要です。腸に穴を開けるリーキーガットを起こしやすく、遺物が血管に入って炎症を起こします。主食は玄米やもち麦ご飯、五穀米などを選択し、パンや麺類は時々にしておくのが良いと思います。
摂って欲しいものとしては、野菜、梅干し、青魚、良質の脂肪、発酵食品や酢の物です。色々なものを楽しんで食べれば、多種多様の、健全な腸内フローラが出来やすくなります。炎症を抑える短鎖脂肪酸も沢山出来るようになるため、体内炎症が抑えられます。歯周病は直接歯茎から血管内に炎症を起こすため、お口のメンテナンスは欠かせません。
今日は体内の慢性炎症にアプローチして、健康長寿を達成しようというお話でした。蒼野が毎日心がけていることが満載です。いっぺんには難しいとは思いますが、続けられることを、少しずつ増やしてみてくださいね! たまにはめをはずして楽しむのはOKです。毎日楽しみながら続けて行ける方法を探していきましょうね!
参考文献:
1)Inflammation, But Not Telomere Length, Predicts Successful Ageing at Extreme Old Age: A Longitudinal Study of Semi-supercentenarians. ; eBioMedicine 2(10) 2015 1566-1558
2)Positive emotions in early life and longevity: Findings from the nun study. ; Journal of Personality and Social Psychology, 80(5), 804–813. 2001
参考書籍:ガン、動脈硬化、糖尿病、老化の根本原因 「慢性炎症」を抑えなさい 熊沢 義雄
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