老化ってどういう意味があるのでしょうか? 老化って個人的には嫌ですよねー! 蒼野はアンチエイジングや、リバースエイジングにも興味がありますし、どうしたら元気なまま歳が取れるのか、これからも研究してゆきたいと思っています。しかし、老化は生物が生き残っていく上で、必要なメカニズムだ、という考え方もあることを知ったので、紹介したいと思います。
ヒトの身体は37兆個の細胞で出来ていて、古い細胞は常に新しい細胞に入れ替わりながら、生きていきます。入れ替わるスパンは組織によって異なり、短いものでは腸管の内皮細胞が数日、皮膚は4週間、血液は4ヶ月、最長が骨で4年で入れ替わります。
例外もあって、心筋細胞と神経細胞は基本的には入れ替わりません。傷付いたら回復は難しいということになります。もし脳神経細胞が常に入れ替わるとしたら、例えば4年経つとそれまでの、記憶などは一切無くなって別人になってしまうということになるので、これは困ります。
新しい細胞は、組織にある幹細胞が分化することで作られます。自動車で言えば、痛んだ部品を、新しい部品を取り寄せて、どんどん取り替えてゆくイメージです。身体は最長で4年で新品に生まれ変わるので、ちゃんと取り替えられている間は、機能が保たれるという事になります。
組織を作る細胞は3種類あります。一番数の多い通常の組織細胞は、細胞分裂で増えてゆきますが、50回分裂すると、それ以上は分裂できなくなり、老化して減ってゆきます。それを補うのが幹細胞です。分裂できる新しい組織細胞を供給します。幹細胞が元気なうちは、老化は目立ちません。最後が精子と卵子の様な生殖細胞です。
ヒトが生きてゆくためにはエネルギーが必要です。細胞内のミトコンドリアで、糖質や脂質からエネルギーが造られ、その際に発生する活性酸素によって、細胞内の組織は酸化し、劣化して、老化した細胞に変化してゆきます。これは、いくら抗酸化物質があっても、全てを止める事はできません。
劣化、老化した細胞は新しい細胞に入れ替わるために、処理されてゆく必要があります。老化した細胞がどんどん溜まってゆくと、ゾンビ細胞となり( https://blue-zone-life.com/ゾンビ細胞!/ )、サイトカインを分泌して、全身の炎症反応が亢進し、周囲の細胞まで老化してしまいます。
本来であれば、老化細胞は、プログラムされた細胞死(アポトーシス)が起こって無くなってしまうか、免疫細胞によって処理され消えてしまう事になっています。しかし加齢と共に、この新陳代謝が上手くいかなくなってゆくのが、老化の本質です。
新しい細胞を作り出すのは組織の中の幹細胞です。例えば皮膚であれば、幹細胞が分裂し、皮膚の細胞と幹細胞になります。新しい細胞を作る幹細胞の数は一定に保たれるよう出来ています。しかし幹細胞自体も老化してゆくため、分裂能力が低下して、必要十分な新しい細胞が作られなくなってきます。
一番先に影響が出るのは、新しい細胞が大量に必要な血液細胞や免疫細胞です。免疫細胞が少なくなると、感染に弱くなり、がんやゾンビ細胞などの異常細胞の除去も難しくなります。除去できなくなると、体内の炎症が慢性化し、老化が進んでゆきます。
細胞が分裂してゆく過程で、DNAの複製ミスが起こる、ゲノムの変異は一定の確率で起こることがわかっています。もし細胞増殖のコントロールに関わる遺伝子が壊れると、制御不能になってどんどん細胞が増殖し、がん化するという事になります。がん細胞の処理が仕切れなくなる年代が、55歳以降です。がんによる死亡率が急に高くなってくる事になります。
生体内にある、癌化を防ぐシステムの一つが老化だという考え方があります。細胞老化には、活性酸素や変異の蓄積によって、異常になりそうな細胞を、老化させることであらかじめ排除し、新しい細胞と入れ替えるという非常に重要な働きがあり、これによって、がん化のリスクを抑えているのです。
テロメアの長さから、ヒトは120年生きれる可能性が指摘されていますが、原始時代の生活を考えると、歩き回って、食べ物をゲットし、問題なく生きて行ける想定年齢は55歳くらいだった可能性があります。こんなに平均寿命が伸びたのは本当にここ数十年のことなのです。
55年と言うのは、厳しい大自然の中で、癌にも罹らずに、自分の子供が成長するまでを見守れる期間であり、種の保存の点からも、健康が維持できる保証がある期間なのでしょう。つまり55歳以降はかなり気をつけないと、老化関連の病気で死ぬリスクが高くなるという事です。
もう一つ、老化には、動物種の長い生命のバトンリレーの上での大きな役割があります。生命の起源はバクテリアのような単細胞生物です。これがやがて多細胞生物になって、オスとメスが遺伝子を交換しながら子孫を残す様になると、遺伝子に多様性が生まれてゆきます。
隕石が衝突して、気候が激変しても、生物が生き残って来れたのは、この多様性のおかげです。言葉を変えれば進化ということもできます。新しいDNAを育みながら、みな老化して死ぬことを、延々と続けてきたことで、ヒトも進化を続け、新しい環境に適応してきました。
同じ個体がずっと長らえ、老化して死ぬことがなければ、次の世代の食糧の確保も徐々に困難になるでしょうし、生命の多様性が生まれにくくなり、種の進化が止まってしまうのです。変わりゆく世界、環境に適応できない種は、絶滅してしまいます。
死は個体にとっては終点ですが、長い生命の歴史の中では、進化の歩みを進めるための原動力となります。我々の身体の中でも、古くなった細胞は次々に死んでゆき、新しい細胞が我々の健康を支えています。我々が老化し、死んでゆくのは、可愛い子孫のためには、必要不可欠の事なのだと思います。
蒼野は小学校の頃から、理科が大好きで、中学校に上がってからは生物だけは勉強しなくても、いつも95点以上取れていました。なのでこういう生物とか生命の話は大好物です。つくづく面白いなあと感じています。
ヒトは哺乳類では稀な、生殖年齢を過ぎても非常に長く生きる動物で、この点は自然の摂理に反するのでは無いかといわれます。しかし「おばあさん仮説」と言う考え方があり、おばあさんになっても、孫の世話をすることで、種の保存に大きく貢献できるために、ヒトは長生きするという理論があるのです。
3人の娘に恵まれ、自分の子供を育てる年齢である55歳は過ぎてしまいました。まだ孫の顔は見ていません。事故に遭ったことで、明日はどうなるか分からないことは実感していますが、できることなら、健康をキープし、孫の成長まで見れたら、生まれてきて、死んでゆく意味があると実感できるかも、と思ったりする蒼野でした。
参考書籍: 生物はなぜ死ぬのか 小林 武彦
最先端サイエンスの果てに見えたのは、現代人を救う”新たな死生観”だった
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