病気を防ぐ脂質の摂り方 その2!

2023/03/05

 昨日のブログで脂質の摂取は、オメガ6とオメガ3の摂取バランスが重要で、酸化していないものを選ぶ必要があると言うことについて書かせて頂きました。今日は昨日書ききれなかった飽和脂肪酸と、一価不飽和脂肪酸についても深掘りしたいと思います。

 戦後動脈硬化の元凶として、目の敵にされた飽和脂肪酸ですが、実は生命には欠かせない脂質です。体温では酸化しにくいため、安定しており、細胞膜の原料やホルモンの原料として必要な脂質です。主に動物の肉や、乳製品、意外なものではオリーブオイルにも15%程度含まれています。

 飽和脂肪酸は常温や体温では固体の脂であり、高コレステロール血症や動脈硬化の犯人で、たくさん摂ると心臓病や脳梗塞を起こすと思われやすいのですが、これは一部は正しく、一部は間違っています。これは一緒に食べる糖質の量に影響されるようなのです。

 糖質制限についての研究を見ると、40人の参加者に糖質制限食と低脂肪食を12週間行い、比較したところ、糖質制限群では、飽和脂肪酸を沢山摂っていたにも関わらず、体脂肪減少(-14%)中性脂肪値は51%下がり、HDL-C(善玉)は13%上昇、総コレステロール/HDL-C比も14%下がっていました1)。

 もちろん血糖値(-12%)、インスリン濃度(-50%)、インスリン感受性(-55%)、体重減少(-10%)も見られました。この研究では、今まで悪いとされていた飽和脂肪酸である長鎖脂肪酸が多く含まれる牛乳、チーズ、バターなどが推奨されています。

 しかしアメリカの国民健康栄養調査を分析した研究では、長鎖脂肪酸を多く摂っている上に、糖質の摂取も多い人において心血管疾患のリスクを高めることを示唆されています。摂取脂肪量が同等の場合、糖質が多いほど心血管病で死亡する確率が上昇していたのです。

 これらの研究から、飽和脂肪酸は炭水化物、糖質を多く摂る生活では、その悪影響をさらに助長するものであるようです。そもそも自然で採れるものに、飽和脂肪酸と糖質が同時に沢山含まれているものはありません。原始人は決して食べれなかった組み合わせということになります。

 しかし糖質も脂質も、我々の脳の報酬系に訴えかける食べ物です。飢餓の歴史を生きた人類のDNAには、糖質も脂質も、目の前に有れば出来るだけ多く摂取することが、種の保存に有利だったのです。それゆえ今日の加工食品には、糖と脂がふんだんに含まれているものが多いのです。見るだけで食べたくなる、そして一口食べたらやめられなくなるように、と願い(呪い?)が込められたものが多いという事です。

 ハンバーガーやピザ、クリーミーなパスタやアイスクリーム、バターたっぷりのクッキーやクリームたっぷりのケーキ、ふんだんにマヨネーズを使ったサンドイッチや、ガッツリ満足のコンビニ弁当など、いくらでも美味しそうな糖と脂のコンビネーションを思いつきますよね! 確かに蒼野も、いっぱい食べたくなります。

 糖質と飽和脂肪酸の組み合わせは、メタボの原因としてもよく知られています。実際に加工食品の頻度が多いほど、体重は増えやすいのです。フランスで45歳以上の44,551名の成人を8年以上フォローしています。摂取する超加工食品の割合で分析すると、割合が大きいほどBMI30以上の人が多く、低所得、低学歴、単身、低い運動レベルと関係しており、全死亡リスクが14%高くなりました3)。

 人間相手に極端な食事の研究を何年も続けることはできないため、飽和脂肪酸自体が危険な脂質かどうかを判断するのは難しいと思いますが、極端な量でなければ、古代人の時代から食べられてきた物です。糖質と脂質を同時に沢山食べることが難しい、昔ながらの食材で有れば、飽和脂肪酸を避ける必要は無いように思います。

 そして積極的に摂りたい油は一過不飽和脂肪酸、オメガ9の油です。代表はオリーブオイル! アボカドやマカダミアナッツなどにも含まれています。ビーフとポークには45%、バターにも29%のオレイン酸が入っています。グラスフェッドバターなら45%も入っています。

 地中海食と言いますが、オリーブオイルの消費の多い国や地域では、心血管病や癌の発生率が低くなり、パーキンソン病やアルツハイマー病のような、神経変性疾患も少ないのです。エクストラバージンオリーブオイル(EVO)は、オレイン酸が55%以上含まれており、多いものでは85%も含まれています。通常のオリーブオイルには、化学的な油脂や化合物が混ざっているので、摂るなら本物のEVOを選んで下さい。

 有名な研究に、スペインで55歳から80歳の7447人を、地中海食にさらにエキストラバージンオリーブオイル(EVO)を加えた群と、地中海食にオレイン酸が豊富なナッツを加えた群、低脂肪食群に分けて4.8年間追跡したものがあります。

 データ収集は2013年に終了していましたが、研究のランダム化が適切では無かったため、再度分析し直し、2019年に発表されました。結果としては経過中の心筋梗塞、脳卒中、心血管原因の死亡率はEVO追加群で3.8%、ナッツ追加群で3.4%、低脂肪食群で4.4%と、脂質の多い食事の方が疾病の発症、死亡率が少ない結果でした4)。

 驚くべきはEVO追加群は週に1LのEVOを摂取していることです。カロリーで言えば8000kcal以上ですよ! その6年後の調査では、EVO追加群とナッツ追加群の認知機能が低下どころか、向上していることも判明しました。しかし低脂肪食群では認知機能は明らかに低下していました。

 これには、EVOやナッツに含まれる多くのポリフェノールの抗酸化効果が効いているのかも知れません。脂肪の質という点では、オレイン酸には細胞膜を柔らかく保ち、流動性を増加させ、機能を改善する効果が報告されています。細胞膜を安定化する効果もあり、細胞膜の酸化も防いでくれるのです。ただし日本で手に入るEVOには偽物も多いため、注意が必要です(過去ブログ参照)。

 さて今日の復習です。
1、肉の脂はオレイン酸も多く、摂っても良い脂ですが、出来るだけ多量の糖質や炭水化物と一緒に摂らないように注意しましょう。
2、本物のエクストラバージンオリーブオイルはジャブジャブ使っても大丈夫ですので、油が欲しいと思う時には、是非いろんなものにかけて食べましょう。

 小さい時から脂好きの蒼野としては、今日の結論は嬉しいです。血糖スパイクを作らないように、ほどほどに糖質を制限しながら食べてゆきたいと思います。しかしストレスは大敵ですから、時々はジャンキーな物にも手は出すつもりですけどね….!

参考文献:
1)Carbohydrate restriction has a more favorable impact on the metabolic syndrome than a low fat diet. ; Lipids. 2009;44(4):297-309. 

2)Added Sugar Intake and Cardiovascular Diseases Mortality Among US Adults. JAMA Intern Med. 2021;181(6):840-849.

3)Association between ultraprocessed food consumption and risk of mortality among middle-aged adults in France. JAMA Intern Med. 2019;179(4):490-498. 

4)Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra-Virgin Olive Oil or Nuts. N Engl J Med. 2018; 378 (25) :e34.

参考ブログ:

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