睡眠中の記憶定着と自律神経!

2023/06/11

 梅雨になって寝苦しい夜がありますね! 還暦過ぎてから飲酒をしなくなり、毎晩寝てから4.5時間または6時間くらいの時に一度目が覚めることが多い蒼野です。最近夜中に目が覚めると、すごく暑い感じがしたり、朧げな夢の余韻が残っていたりするのが気になりだしました。自分自身の素朴な疑問として、今日はそのことについて調べてみたいと思います。

 目覚める時間から言っても、これはREM睡眠中の目覚めのようです。健康な人の睡眠は90分で1サイクル、徐々に睡眠が深くなり、脳波が徐波になる深睡眠を経て、眼球が活発に動くREM睡眠の終わりまでがおおよそ90分かかるということです。時間的に言っても、夢を少し覚えていることを考えても、目が覚めた時点はREM睡眠だった可能性が高いと考えます。

 調べてみるとREM睡眠中は、脈拍、呼吸、血圧など自律神経機能が不規則に変化し、時には性器の勃起が起こるため、自律神経系の嵐とも呼ばれているらしいのです。またREM睡眠中に起こすと、8割以上の人が夢を見ています。一昔前には浅い睡眠と言われ、深い睡眠が大事と言われていた時期がありましたが、REM睡眠には別の役割があり、こちらもとても重要であるという研究が増えてきています。

 蒼野は睡眠サイクルの、生理的な区切りで目が覚め、自律神経の働きで体温が上がっているようなのです。その時の部屋の温度は、寝る前よりもむしろ下がっていることも多いので、熱がこもって目が覚めたとは考えにくいです。一旦目が覚めると、、蒼野は一度トイレに行ってから、また横になり、ゆっくり深い呼吸を心がけて、吸気:呼気が1:2になる様にします。この時に新しいアイデアを思いつくことも結構あったりします。

 少し眠れないなあと思っていても、前日にアルコールを飲んだり、ストレスを感じたりしていない日であれば、そのまま眠りに落ちます。90分サイクルを、計4回(6時間)~5回(7.5時間)繰り返せれば、疲れが取れ、また新しい1日を元気に過ごせます。これを休みの日も含めて、同じリズムで繰り返せれば、昼間眠いこともないので、良い睡眠習慣になっているのかなあと思っています。

 睡眠について調べていて、蒼野が知らなかった知見をいくつか紹介したいと思います。nonREM睡眠=深睡眠(徐波睡眠)中は、脈拍、血圧、呼吸が安定し、成長ホルモンが増え、免疫が強くなり、脳が縮んでスペースが出来たところに、髄液が入り込んで、アミロイドβなどの脳の老廃物を除去します。また海馬に一時的にストックされた記憶が、大脳皮質での記憶に変わるのもこの睡眠中です。筋肉の緊張は保たれています。

 一方REM睡眠中は、活発な脳波が見られ、眼球の急速運動が見られます。全身が金縛りのように脱力し、深睡眠と同様、刺激でもなかなか目覚めません。浅い睡眠では無いのです。自律神経は不規則に変化し、夢を見ています。夢で起こったことに反応して、身体がいきなり動き出さないように、筋肉の弛緩が起こっているものと理解されています。

 REM睡眠は新生児の時には、睡眠の50%を占めています。加齢と共に少なくなり、成人で睡眠の20%程度になります。また確定はしていないのですが、昼間に多く学習するとREM睡眠は増加する傾向があり、REM睡眠中に、特に感情を伴う記憶の情報処理や整理が行われています。子供で長いことから、脳の発達にも、必要なものであろうと推測されています。

 筑波大学の最新の研究によると、マウスにおいて、REM睡眠中の脳の微小血流はかなり増加していることが確認され1)、これは脳の老廃物の除去にも関与している様です。実際に高齢者でREM睡眠の割合が少ない人ほど、脳の老廃物が溜まって起こるアルツハイマー病を始めとする神経変性疾患が多くなることも報告されています。血流が増えることによって、老廃物の活発な除去が促進されている可能性が示唆されています。

 これには脳の毛細血管のアデノシン受容体(A2a receptor)が関与しており、これはカフェインによって阻害されるため、睡眠中にもカフェインが残っている様な状態では、脳血流の増加が起こりにくく、睡眠中の老廃物の除去に影響が出る可能性があるとされています。蒼野は午後のコーヒーを控えようと改めて思いました。

 また同じくマウスの実験において、大人になってからも海馬で生まれる新生ニューロンの働きをREM睡眠中に抑える実験を行うと、電気刺激による恐怖体験をマウスが忘れてしまう現象が確認されました。記憶が起こる時に活動していた新生ニューロンは、REM睡眠中に再活動することで、記憶に留めている可能性が指摘されたことになります2)。

 REM睡眠中には、外界とはシャットアウトされていますが、脳自体が活発に活動し、特に情動に伴う様な記憶を、夢を見ながら、整理して記憶に定着させている様なのです。2023年のレビュー論文でも、睡眠前の学習が関連する夢と、記憶の残り方について、有意で強い関連があったことが確認されています。

  睡眠研究は動物実験では分かりにくい部分があり、かといって主観が入ってしまう人間の研究も、その再現性が問題になります。しかし、深睡眠とREM睡眠のどちらもが記憶の形成に重要であることは間違いなさそうです。以前も書きましたが、東大合格者の平均睡眠時間は8時間を超えています。脳のパフォーマンスを上げるためには、十分な深睡眠とREM睡眠の時間が必要であろうと推測されます。

 深睡眠もREM睡眠も邪魔してしまうものは、結構あったりします。アルコールやカフェイン、ブルーライトやシフトワークなどです。良い睡眠はプラスになるものはあまり無く、マイナスを減らすしかない様なのです。現在のパフォーマンスを上げるためにも、将来の認知症のリスクを増やさないためにも、深睡眠とREM睡眠の時間は十分に確保しておきたいものです。

 アルコールは多くなると海馬を始めとする脳細胞を殺します。アルコールで最初の深睡眠は増える可能性がありますが、代謝が始まって、体内のアセトアルデヒドが上昇し始めると、睡眠は浅くなり、REM睡眠の時間も少なくなることが知られています。結局全体としては深睡眠時間も短くなることが多いです。

 せっかく頑張って昼間勉強しても、記憶に残らないのは勿体無いですよね!テストがある時や、パフォーマンスをできるだけ高く保ちたい時などは、しばらく禁酒するのが良さそうです。自分が毎日飲んでいる時には気づきませんでしたが、飲まなくなると、実感としても、記憶は良くなった気がしています。

 カフェインに関しては、脳が眠気を感じると出てくるアデノシン受容体をブロックして、眠気を止めるため、全体的な睡眠時間が短くなります。深睡眠を減らし、REM睡眠の開始も遅らせます。ブルーライトは、脳に昼間だという刺激を送り、睡眠の位相を遅らせてしまうため、起きる時間が決まっていると睡眠時間が短くなってしまいます。

 シフトワークについては、先日も書きましたが対策は限られています。睡眠不足は避けられない様に思いますので、回復力がある若いうちだけにしておく方が安全かもしれません。これからさらに時代の流れは早くなります。対応してゆくためにも頭脳や記憶は常に整えておきたいですよね。睡眠が良くなれば、大きな武器になるので、良い睡眠習慣を自分なりに工夫してゲットしてくださいね!

 朝日で早朝に目覚めるのが嫌で、完全遮光のアイマスクを買った蒼野でした。

参考文献:
1)Cerebral capillary blood flow upsurge during REM sleep is mediated by A2a receptors. ; Cell Reports 36(7) 2021 https://doi.org/10.1016/j.celrep.2021.109558

2)Sparse Activity of Hippocampal Adult-Born Neurons during REM Sleep Is Necessary for Memory Consolidation. ; Neuron  107(3) : 552-565 2020

3)A Meta-Analysis of the Relation between Dream Content and Memory Consolidation. ; Sleep. 2023 Apr 14 ; https://doi.org/10.1093/sleep/zsad111

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