慢性的な頭痛に悩む日本人は、約4000万人。これは糖尿病の950万人や、腰痛の1000万人などよりも、はるかに多い人数です。ありふれた疾患にも関わらず、死なない病気なので、軽視され、関心のないお医者さんも多く、内科で頭痛を訴えても、ロキソニンなどの頭痛薬を処方されるだけのことも多いのです。
中でも片頭痛は、遺伝する体質の頭痛でもあり、前回のブログに書いたような誘因が、生活の中で増えてしまうと、3日間も寝込んでしまうような、慢性の頭痛に悩まされます。片頭痛患者の74%が日常生活に支障をきたしており、なんとか対処しないといけない頭痛なのです。
片頭痛患者は、日本では840万人、男女比は1:4と圧倒的に女性に多く、年代としては20代くらいから始まり、仕事、家事、育児などで忙しい、30~40代に最も悩まされる人が多くみられます。人によっては、仕事が出来ずに、休んでしまうようなひどい頭痛発作が見られます。
2005年に、頭痛による、欠勤、早退などの経済的損失が、日本で計算されたことがあります。日本における毎年の経済的損失は2880億円と試算されています。しかし頭痛を主訴に病院を受診する人は頭痛患者の30%程度で、大半の方が市販の頭痛薬などでやり過ごしているのです。
片頭痛を、頭痛薬のみで抑える治療は、リスクを孕んでいます。慢性の頭痛は程度の差はあるものの、全て脳の興奮を伴っており、痛みを抑えるだけでは、脳の興奮がおさまらないため、頭痛の頻度が増えたり、頭痛の強さが増したりしやすくなるのです。そのまま年月を過ごすと、脳過敏症候群という、様々な症状に悩まされる状態に陥ったりもします。
頭痛外来をしていると、事務作業で一日中、パソコンを使っていて、肩や頚がガチガチになっている方が多いことに気づきます。市販薬の使いすぎで、毎日のように、仕事が出来ない程の痛みを伴うようになってから受診する人も多いのです。
片頭痛を痛み止めのみで、抑えようとしていると、脳の興奮は増してきます。次第に痛み止めの回数が増え、痛み止めのために、痛みを感じにくくなると、脳が悪いところがわからなくなったと判断して、痛みの基準値を下げてしまいます。今まで痛く無かったような刺激までも、全てが痛くなってしまう状態となるのです。言葉は悪いのですが、これを薬剤乱用頭痛と呼びます。
また市販薬には気分をスッキリさせるために、カフェインが入っていることが多く、カフェインは血管を縮める作用があります。1日にコーヒー3杯でカフェイン中毒になると言われていて、1日に数錠も市販薬を飲むと、カフェイン中毒になってしまいます。
カフェインは血管を縮める作用があり、片頭痛は頭皮下の血管が拡張するため、中毒状態でなければ有益な成分です。しかし中毒になってしまうと今度はカフェインの血中濃度が下がってきた時に、反動で血管が拡張して、片頭痛を誘発してしまいます。
市販薬で薬剤乱用頭痛になってしまうと、カフェイン濃度が一番下がる、朝一番から毎日のように、片頭痛を起こってしまうようになるのです。
脳の興奮を抑える頭痛薬は、市販薬にはなく、病院やクリニックで処方してもらう必要があります。トリプタン製剤と言われる頭痛薬で、現在スマトリプタン(イミグラン)、リザトリプタン(マクサルト)、ゾルミトリプタン(ゾーミッグ)、エレトリプタン(レルパックス)、ナラトリプタン(アマージ)の5種類が発売されています。
今後、これらの薬の使い分けや、NSAIDsと呼ばれる通常の痛み止めなどの使い分けについて、また書いていきますね! しかし片頭痛とうまく付き合ってゆくには、安易に薬に頼る治療の前に、まずするべきことがあります。長期にわたる鎮痛薬の常用は、処方薬であっても、薬剤乱用頭痛を起こしうるからです。
片頭痛治療については、脳の興奮を抑える薬も使って、頭痛をコントロールしながら、
1、まず自分の頭痛がどんな誘因で起こりやすいか知ること。
2、その誘因をどうやって減らせるのか、工夫して、生活習慣を改善すること。
3、自分の体質に合った、漢方薬なども、いろいろ試してみること。などをやってみましょう。
蒼野としては、自分の頭痛を理解し、最小限の薬でコントロールするために、以上のことを、やっていただきたいと思っています。頭痛の頻度は、年々上昇しており、重篤になってきているように感じます。その原因はやはり、人類の遺伝子に合わない現代生活に、大きな原因があると考えるからです。
頭痛を起こしにくくする、生活習慣を身につけることが、健康長寿への生活習慣を身につけることにもなり、死ぬまで元気で動ける体を手に入れるきっかけにもなると思うのです。
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