片頭痛 その7 新薬登場!

2021/12/09

 今日は2021年に発売になった、片頭痛の根本治療薬とも呼ばれる、CGRP抗体薬、CGRP受容体拮抗薬について書いてみたいと思います。

 以前の片頭痛のブログで書いたように、脳の血管の周りには、三叉神経という、センサーの役割をしている神経があります。その神経からCGRPという物質が放出されるとCGRPは血管を拡張させ、炎症を起こします。最終的に脳の血管が膨らみ、神経が圧迫されると、脳が痛みとして認識します。これが片頭痛です。

 片頭痛患者では、頸静脈血中のCGRPが上昇していることが報告されています。片頭痛患者に、CGRPを投与すると、片頭痛発作が誘発されるけれど、健常者にCGRPを投与しても頭痛を起こしません。そのため、CGRPが片頭痛患者において、片頭痛を誘発する中心となる原因物質ではないかと言われています。

 今までの片頭痛の特効薬と言われていたトリプタン製剤は、CGRPの出口をふさぐ効果があります。CGRPが沢山出てくる前に、塞いでしまえば、頭痛は改善します。しかしタイミングが難しく、CGRPが沢山放出された後では、頭痛反応は進み、痛みが良くならないため、効いていない様に感じるのです。

 またトリプタン製剤は血管収縮作用が強いため、時にだるさ、胸苦しさ、吐き気や眠気などの副作用が出る人もいますし、狭心症や心筋梗塞の既往があると、服用できませんでした。

 ところが、新薬には、従来の薬(トリプタンや予防薬)で出ていた副作用がほとんどありません。まずエムガルティという薬が、2021年4月に発売になりました。これはCGRPに対する抗体の製剤です。

 これは三叉神経から出てきたCGRPにくっつき、排除していく作用があります。CGRPが少しだけ漏れて起こるような、軽い頭痛は起こらなくなります。CGRPが大量に出てくるひどい頭痛のときも、半分ぐらいはブロックするので、片頭痛が軽くなります。片頭痛の中心原因物質を、退治するわけです。

 次は8月に発売されたアイモビーグです。これはCGRPの受け皿(受容体)に対する抗体で、CGRPがくっつく所をブロックするため片頭痛反応が、進まなくなり、頭痛が起きなくなります。もうひとつは、同じく8月に発売された、エムガルティと同じCGRP抗体の製剤であるアジョビです。12週ごとに投与できるのが他との違いです。

 難点はコストが高いことです。新薬は抗体製剤なので、製造工程が複雑でコストがかかりますエムガルティの場合、薬価は1本4万5165円。保険で3割負担の場合でも1万3550円。エムガルティを初回に2本打ったら2万7100円になります。他の薬もほぼ同様です。

 しかし、片頭痛は人生の長期にわたって、日常生活に障害をもたらす疾患の、第2位であり続けています(1位は腰痛)。高価でも、効果が高い薬は、使うメリットがあります。頭痛の日数で言えば、平均で半減、25%の人は7割減、9%の人は頭痛がゼロになると言われています。

 また今までの予防薬と、トリプタン、痛み止めによる治療が効かない患者様にも有効です。蒼野のクリニックでも、適応を選びながら、何人も使ってみたのですが、「人生が一変した」と喜ぶ患者さんがおられると嬉しくなります。

 ただ、1ヶ月または4週に1回、12週に1回の投与なので、血中の抗体がどうしても減ってくる、最後の4~5日になると頭痛が出てくる人もいます。

 高い薬でもあるため、厚労省が出している処方基準も厳しいです。使用は日本頭痛学会、日本神経学会、日本脳神経外科学会、日本内科学会(総合内科)の専門医に認定されている医師に限られています。

 また、この薬が使える患者様は、既存の予防薬やトリプタンで有効性が得られなかったり,副作用が出たり,服薬が続けられなかったりした場合に、初めて導入を考慮するように、指導されており、誰もがすぐに使える薬ではありません。

 もし片頭痛で、色々な薬を試したけど改善が見られず、人生の質が低下しているとお悩みの方は、ネットで調べて、お近くの頭痛専門の標榜のある病院で相談してみられてはいかがでしょうか? 

 もちろん、まず試していただきたいのは生活改善ですよ! 早寝、早起き、スマホ時間を最小にして、こまめに体操して、首肩の凝りをほぐしましょう。パイオネックスを貼るのも良いですよ。ストレスは歩いて発散しましょう。

 食事は血糖スパイクを作ら無い様にローカーボ、カーボラストで食べましょう。炎症を起こさない食べ物を選んで、野菜を中心に食べましょう。砂糖(特に甘い飲み物)、小麦(特にパン)、コンビニ食や外食(食品添加物)、スナック菓子やファストフード、インスタント食品などを最小限にして、冬はお鍋を食べましょう。

 片頭痛を予防する生活習慣は、健康長寿につながってゆきます。是非、できることから、少しずつで良いので、取り組んでみてくださいね!