MIND食!

2022/05/31

 今日はアルツハイマー型認知症を防いでくれる食事の話です。医療が進歩するにつれて、癌の治療成績は上昇していますし、全身の血管病についても、もしかすると、iPS細胞を血管内皮に補充して、血管が新しくなる様な治療が出てくる日が来る様な気がします。

 しかし脳だけは、新しく取り替えることができません。iPS細胞で新しくしてしまえば、真っ新になった脳には、それまでの記憶や経験が残っておらず、今まで生きてきたその人自体が居なくなってしまうからです。今ある脳細胞をいかに死なせないか、元気なまま寿命を全うできるかが勝負なのです。

 蒼野自身もそう思っているのですが、一番なりたくない病気は「認知症」という調査があります。自分が最もなりたくない病気として、一般の人の48%が認知症を挙げました。年齢と共に激増する認知症は、健康長寿にとって最も注意すべき疾患となっています。

 2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人となっており、6人に1人程度が認知症有病者という現状があります。内閣府の統計でも、糖尿病の有病率が今のまま増え続ければ、2060年には認知症有病率は倍の33.3%になると試算されています。3人に1人に介護が必要な社会は想像できませんよね!

 世界的に見ても、認知症患者数は2019年の5,700万例から2050年には3倍の1億5,200万例になると予測されているようです。優秀な研究者が血眼になって、アルツハイマー予防の薬を探していますが、いまだに決定的なものはありません。去年話題になった、アミロイドβを取り除いてくれるアデュカヌマブも予防効果は22%と限定的で、しかも年間薬剤費が610万円かかります。

 蒼野は12月末にブログで紹介したリコード法が、アルツハイマーを防ぐ効果が最も高い生活習慣だと思っているのですが、論文で検証はされていませんでした。しかし生活習慣の研究で、最近エビデンスのある論文が出てきている様なので、今日はそれを紹介したいと思いました。

 BMJ(2022年4月13日オンライン版)に、米ラッシュ大学が報告したもので、結論として、「適切な運動、認知機能を刺激する活動、健康的な食事の習慣は平均余命を延長し、残りの人生におけるアルツハイマー病認知症なしに過ごせる割合を増やす可能性がある」としています。寿命まで延びるというのが一つポイントです。健康長寿をテーマにする蒼野の目に飛び込んできました。

 認知症既往歴がない65歳以上の2,449人(平均年齢76歳、女性1,540人、男性909人)。質問票を用いて詳細な食事と生活習慣の5つの因子①MIND食、②認知機能を刺激する活動(読書、美術鑑賞、クロスワードパズルなど)、③少なくとも週に150分の身体活動、④禁煙、⑤低~中程度の飲酒(純アルコール摂取量:女性1~15g/日、男性1~30g/日)について調べています。

 各因子について、健康と評価された場合は1点、健康でないと評価された場合は0点とし、5項目を合計して健康的なライフスタイルスコア(範囲0~5点)を算出。4~5点を健康的な生活習慣、0~1点を非健康的な生活習慣としました。

 研究期間中に、439例(20.8%)がアルツハイマー型認知症を発症しました。人種や遺伝子、年齢、教育歴などの因子を調整し、健康生活群と非健康群で比較しました。65歳女性、健康群の平均余命は24.2年で、非健康群より3.1年延びていました。認知症発症の割合は、健康群で10.8%、非健康群で19.3%と、ほぼ2倍違っていました。

 85歳女性では、健康群の平均余命は8.5年で、非健康群7.2年でした。認知症発症の割合は、健康群で30.9%、非健康群で60.3%と、こちらもほぼ2倍違っていました。85歳まで生きれるような、肉体的に優れた人でも、生活習慣を整えていなければ、6割が認知症で家族や社会にお世話になるのかと思うと切ないです。

 一方男性では、65歳男性、健康群の平均余命は23.1年で、非健康群より5.7年延びていました。認知症発症の割合は、健康群で6.1%、非健康群で12.0%と、2倍です。85歳男性では、健康群の平均余命は6.8年で、非健康群2.8年でした。認知症発症の割合は、健康群で17.7%、非健康群で46.0%と、こちらもほぼ2.6倍違っていました。

 認知症は女性の方がなりやすいことが分かっています。また女性の方が長生きなのです。このデータを見ると、人生100年時代を、認知症で介護されることなく過ごすためには、是非生活改善に取り組むべきということが、切実に理解頂けるのでは無いかと思います。

 ここでMIND食について解説しておきます。これはこの論文を出したラッシュ大学医療センターが発表した、アルツハイマー型認知症を予防する食事法です。地中海沿岸の国々で伝統的な「地中海式食事法」と、高血圧を予防するダイエット食「DASH食」を組み合わせた食事法になります。

 日本では今糖質制限食がブームですが、アメリカでの人気は、DASH食、地中海食、MIND食がベストスリーです。DASH食と地中海食は共通して、肉類は控えめ、魚を多く摂取、野菜、果物、豆類、全粒穀物をよく摂る方法です。摂取カロリーは男性1800kcal、女性1500kcal程度に抑えるダイエットになります。実行できれば健康的に痩せます。

 違いとしては、DASH食は塩分制限(5.8g/日)、脂肪の乳製品を毎日摂取、アルコール量は男性28g/日、女性14g/日までです。地中海食は、オリーブ油30~45g/日使用、毎日魚を食べる、赤ワイン推奨ということになります。

 認知症予防のためのMIND食ですが、健康な食品と、不健康な食品が決められていて、その量も決められています。

健康な食品としては、

[1]緑色の野菜(週6日以上) [2]その他の野菜(1日1回以上) 
[3]ナッツ(週5回以上)[4]ベリー類(週2回以上)[5]豆類(週3回以上)
[6]全粒穀物(1日3回以上)[7]魚(なるべく多く)
[8]鶏肉(週2回以上)[9]オリーブオイル(優先的に使う)
[10]ワイン(1日グラス1杯まで)

不健康な食品としては

[1]赤身の肉(週4回以下) [2]バター(スプーン1さじ/日以下)[3]チーズ(週1回以下)[4]パン菓子やお菓子(週5回以下)[5]揚げ物やファストフード(週1回以下)

という食事になります。

 ラッシュ大学医療センターで58~98歳の932名を対象に、4年半の調査・研究の結果、MIND食を厳密に守って食事を摂ったグループ(15項目中9項目を達成)は、5項目以下の達成率のグループと比べ、アルツハイマー型認知症の発症リスクが53%減少しています。

  日本食は、野菜や魚が多く飽和脂肪が少ないなど、MIND食と似ている部分があります。ただ、伝統的な日本食は食塩がかなり多いため、それに注意しながら、MIND食を取り入れていけば良いのでは無いでしょうか?

 蒼野の現在の食生活は、MIND食と比べると、肉、飽和脂肪が多く、全粒穀物が少ないです。ワインもほとんど飲んでいません。全部真似はしなくても良い様に思いますが、皆様の食卓の参考になれば幸いです。コストコに冷凍ベリーを買いに行きたくなった蒼野でした。

参考ページ: New MIND diet may significantly protect against Alzheimer’s disease

   March 19, 2015  Rush University Medical Center     

https://www.rush.edu/news/new-mind-diet-may-significantly-protect-against-alzheimers-disease

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