筋肉を増やすビタミン!?

2023/01/06

 お正月に蒼野が母親と初詣に行けなかった理由として、膝の痛み以外には、やはり筋力低下が挙げられます。ヒトは通常50歳を過ぎると平均で年間1%筋肉が落ちてゆきます。それにも増してコロナ禍での3年間は大きかったようで、外出を控えていた母親の筋力はかなり低下しているように思いました。

 高齢者が筋肉をつけるのに、本格的な筋トレは絶対に無理だと思います。日常の生活の中でちょこちょこ動く、ストレッチする、体操する、近くまで歩くなどを少しずつ増やすしか無いと思います。それ以外にも、タンパク質摂取が必要なことは皆様もご存知のことと思います。

 少しでも90歳の母親の筋力をつけ、来年の初詣に行きたい蒼野は、それ以外に方法が無いかについて調べてみることにしました。すると面白い論文を見つけました。高齢者集団におけるビタミン C の重要性を調査した研究です。元々はヨーロッパで行われたがんと栄養との関係を調べたデータから導き出されたものになります。

 42~82歳の13,000人を超える男女のデータを分析しました。食事中のビタミンC摂取量を7日間の食事日誌データから推定すると同時に、血液中のビタミンC量を測定しました。さらに体組成計で除脂肪量を測定し、BMIで補正して骨格筋量の指標としました。それ以外の要素を除く様に多変量解析しています。するとビタミンC摂取量と骨格筋量との間には有意差をもって正の相関が認められました1)。

 ビタミンCと骨格筋量の研究はマウスでも行われています。ヒトと同様に体内でビタミンCを作れないビタミンC合成不全マウスを用いて、血漿や骨格筋のビタミンCが減少すると骨格筋にどのような影響があるかを調べた日本の研究があります。

 ビタミンC投与群と非投与群の2群に分け、投与4、8、12、16週後に腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、前脛骨筋、長趾伸筋などの骨格筋の筋重量を定期的に測定しています。その結果、ビタミンCの不足期間が長くなると筋肉を構成する筋線維が細くなり、筋重量が減少し、ふたたびビタミンCを与えると回復することが判明しました。筋力や自発的活動量などの身体能力も、同様にビタミンC不足期間が長くなると低下し、ふたたびビタミンCを与えると回復しています2)。

 この結果を見て同研究グループは、東京都板橋区在住の70~84歳の高齢女性を調査し、血漿ビタミンC濃度の高い高齢者女性は、握力、開眼片足(片足で立っていられる時間)、通常歩行速度などの筋力や身体能力が高いことを確認しています。ウチの母親にもビタミンCを勧めようと思います。

 筋肉に影響を与えるビタミンとして注目されているものは他にもあります。ビタミンDは変形性膝関節症の時にも重要なビタミンとして紹介しましたが、骨の増強だけではなく、筋肉の合成を促進する作用が研究で報告されています。

 2020年版の『日本人の食事摂取基準』では、高齢者のフレイルを防ぐという点が注目されて、ビタミンD摂取基準が、18歳以上では5.5μgから8.5μg/日に引き上げられています。日光を浴びることで生成されるビタミンではありますが、日本人でも、瀬戸内より南に住む人でかろうじて、体内の基準はクリアできていますが、北に住む人では不足しています。

 ビタミンDは世界的にも不足しがちなビタミンです。食べるものも影響しており、魚介類や海藻、キノコなどで補給できるため、日本ではクリアできている人が多くなりますが、1日中太陽を浴びているハワイのサーファーを調べたところ不足していたという話があります。

 ビタミンDは筋肉合成に働くテストステロンを増やしてくれる作用があります。研究では65人の男性を毎日3,300IUのビタミンD3を摂取するグループと、そうで無いグループで比較すると、1年間で体内の組織のビタミンD濃度は2倍となり、テストステロンレベルは20%アップしました3)。脂溶性のビタミンですが、病院で処方される活性型のものでなければ、サプリで不活性型のD3を3000IU/日程度を摂取してもリスクは無い様です。

 ちなみにビタミンDは筋トレで増やしにくい速筋繊維を増やしやすくしてくれます。トレーニング量が多い程、遅筋繊維が発達しやすいという事があるので、ボディメイクでムキムキの身体を目指すなら、肥大しやすい速筋繊維を発達させるのが有効です。大会に出る様な方は、ビタミンDは補充する方が有利の様です。

 食べ物をエネルギーに変えたり、タンパク質を筋肉に変える反応の補酵素になるビタミンB群も重要です。水溶性ビタミンなので過剰症の心配はありませんが、蓄積できないため、余剰分は汗や尿で排出されてしまうため、こまめに摂取する必要があります。

 生姜も様々な健康効果が期待されるスパイスですが、ラットの実験で生姜がテストステロンと黄体形成ホルモンを増加させています。ヒトでも75人の不妊症の男性に生姜のサプリメントを毎日摂取させたところ、3カ月後にはテストステロン値が17%上昇し、黄体形成ホルモンの値も約2倍になったという研究があります4)。

 ビタミンEは、筋トレや運動で筋肉痛になった状態を素早く改善してくれます。加齢によって筋肉が減るメカニズムに、筋肉の細胞膜の酸化があります。細胞膜の酸化を抑えてくれて、血流を改善してくれるビタミンEは、筋肉維持に有効なビタミンです。酸化を防ぐことで、酸素の浪費も防いてくれるため、マラソンランナーがビタミンEを摂っていると、タイムが良くなるということも報告されています。

 食事で全部不足無く摂れるのが理想ですが、食欲がなくなってきている母には、サプリも勧めたいと思います。保険をかける意味では、毎食少量のマルチビタミンマルチミネラルサプリを、飲んでもらいます。その上で脂溶性ビタミンのDとEは1日1回脂のある食事と一緒に、水溶性ビタミンのBやCも食事の度に摂るのが有効です。

 水溶性ビタミンだけを摂取すると、急速に吸収されて排出されてしまうため、食事と一緒に摂取して、ゆっくり代謝させる方が体内に留まりやすいのでお勧めです。時々生姜料理も食べましょう。蒼野自身は、朝作ったレモン緑茶を1日かけてちょこちょこ飲む様にしています。

 もちろん運動しなければ、いくら良いサプリメントや栄養素を摂っていても意味がありません。母にはタンパク多めの食事と上記のサプリメント、朝、昼、夕、ベランダに出て、片足立ちをするよう勧めました。1分の片足立ちを1日3回すれば、骨も筋肉も鍛えられ、53分歩くのと同等の効果があるとのことです。

 今は1日30秒でやっとの様ですが、無理せずに続けてくれたら、来年は一緒に初詣に行けるかもと、大いに期待してしまう蒼野でした。 

参考文献:

1)Lower Dietary and Circulating Vitamin C in Middle- and Older-Aged Men and Women Are Associated with Lower Estimated Skeletal Muscle Mass. ; The Journal of Nutrition, 150(10), 2020, 2789–2798

2)Vitamin C deficiency causes muscle atrophy and a deterioration in physical

performance. ; Scientific Reports volume 9, Article number: 4702 (2019) 

3)Vitamin D and Male Sexual Function: A Transversal and Longitudinal Study. ; Int. J. Endocrine. Published online 2018   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5817208/

4)The effect of Ginger on semen parameters and serum FSH, LH & testosterone of infertile men. ; Tikrit Medical Journal 2012;18(2):322-329

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