鼻うがいのススメ!

2022/11/30

 今朝のニュースでglobeのKEIKOさんの姿を見ました。くも膜下出血で重症だったと記憶していたのですが、見事に回復されていて、お元気そうだったので胸を撫で下ろしました。ラジオの生出演ということだったのですが、10数年ぶりとのことですので、長い長いリハビリに耐えての事だろうとお察しします。

 KEIKOさんのくも膜下出血の発症は39歳。大活躍されている最中のご病気であり、ご本人にとっては青天の霹靂だったろうと思います。蒼野自身の事故も、それで人生が変わるくらいのインパクトでしたので、健康は無くして初めてその大切さが分かるというのは、本当にその通りだと思います。

 健康は幸せの必要条件ですし、健康で無ければ他人に優しくすることも難しくなります。健康でいれば、人間関係も円滑に進める事ができるのです。そういう意味では、健康は何よりも大事なものでは無いでしょうか? 健康を維持するためには予防が一番です。予防のためには、生活習慣が一番大事なことになります。ということで前置きがめっちゃ長くなってしまいましたが、今日の取り入れてほしい生活習慣の話に移ります。

 今日皆様に取り入れてほしい習慣は『鼻うがい』です。先週から蒼野は忙しくしていて、昨日の朝目覚めると喉が痛くなっていました。週末外出もしていたので、コロナだったらマズいということで、朝鼻うがいをして、桔梗湯をうがいのみし、さらに葛根湯も飲みました。朝散歩の後冷水シャワーを浴びる頃には、喉はすっかり良くなっていました。

 今まで鼻うがいは、調子がおかしい時だけ使っていたのですが、コロナ第8波は、日に日に迫ってきているように感じます。鼻うがいがコロナにも有効だったという論文があるのでご紹介します。去年報告された米国オーガスタ大学の研究です。

 コロナ陽性が判明して24時間以内、平均年齢64歳、平均BMI30.3 の高齢かつ高リスクの患者79人に、2.5mL のポビドンヨード10% または 2.5mL の重炭酸ナトリウムをうがい液の素として、無作為に割り付け240mLに薄めて、1日2回 14日間の鼻うがいを行ってもらいました。

 診断後28日間における入院率と死亡率を、背景をマッチさせた同時期のコロナ陽性患者と比較しました。結果は一般の高リスクのコロナ陽性患者様の入院または死亡の割合が合わせて10.6%であったのに対し、鼻うがい実施例では入院が1名(1.27%)のみで、死亡はゼロでした。

 この減少はコロナの特効カクテル注射と比較しても遜色ないものであり、コロナ重症化率は8分の1以下に減少したということになります。これは副反応のためにワクチンが打てない人や、しばらくは打たないと決めている人などにとっても朗報です。重症化リスクが高い高齢者での確率ですから、リスクが小さい人ではさらに効果が期待できるかもしれません。

 なぜ普通のうがいではなく、鼻うがいなのかということに関しては、鼻うがいでしか洗えない上咽頭がその鍵を握っています。鼻奥に位置する上咽頭は、呼吸によって入ってくるウイルスを迎え撃つ第一の砦です。活性化リンパ球が豊富で、空気媒介のウィルス感染に際して重要な役割を果たす免疫学的関所なのです。

 もちろん空気媒介感染であるコロナウイルスも上咽頭を経て体内に侵入してきます。上咽頭粘膜の繊毛上皮細胞には、SARS-CoV-2のレセプターであるアンギオテンシン変換酵素(ACE2)が豊富に存在しています。コロナはまず上咽頭の細胞に、結合して入ってくるのです。この部分の戦いに負けると、コロナウイルスは体内で増殖が始まります。

 上咽頭で戦いが起こった段階で感じるのは喉の痛みです。その時すかさず鼻うがいを行えば、敵であるSARS-CoV-2を、物理的に洗浄して除去し、殺菌する事ができるのです。普通のうがいでは、喉の奥は洗えますが、鼻腔へ繋がる天井部分である上咽頭は洗えません。もちろん喉風邪であるインフルエンザや、普通の感冒も同時に防ぐ事ができます。

 上咽頭で軽い炎症が起こった状態というのは感染初期の段階です。自然感染が起こったということで、体内の免疫系も感染したコロナウイルスに対する自然免疫を備える事ができます。つまりワクチンを打たなくても新たにウイルスに対する免疫が獲得できるということになり、一度感染した変異株には罹りにくくなります。これはこれからのウィズコロナ時代には必須の方法ではないでしょうか?

 さらに新型コロナ後遺症も、鼻うがいが軽くしてくれる可能性が示唆されています。コロナ以前のウイルス感染でも、感染をきっかけに疲労感が持続する病態は、ウィルス感染後疲労症候群として知られていました。しかしコロナ後遺症は、それまでのウイルスに比べ、上咽頭の細胞レセプターへの親和性の良さから、断然起こりやすいことが知られています。感染後にも上咽頭に炎症が残りやすく後遺症との関係が疑われています。

 以前にも書きましたが、コロナ後遺症は上咽頭に慢性の炎症が残ることが大きく関与しているという説が濃厚です。コロナ後遺症外来を行っているところでは、上咽頭を擦過して、炎症を出血と共に排出するBスポット療法や鼻うがいが積極的に行われています。鼻うがいはコロナの予防、なり始め、後遺症に至るまで、すべての時期に効果のある方法なのです。

 その他、花粉症やハウスダストなどのアレルギーも、鼻腔内の抗原物質を洗い流すことで、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状を緩和する事ができます。アレルギーがある人は一石二鳥です。副鼻腔炎に関しても、予防や症状緩和の効果が期待されます。

 さて鼻うがいのやり方です。蒼野がやってみても簡単に痛みもなくできました。塩水を作れば十分な消毒効果が得られます。真水で洗うと、プールで鼻に水が入ったみたいな痛みがありますので、人間の体液と同じ塩分濃度0.9%(100mlの水に塩0.9gを溶かす、ティースプーン1杯で2gなので半分くらい)、37度くらいにするとさらに刺激は少なくなります。

 鼻うがい用の洗浄器具はネットでも、薬局でも売っています。”鼻洗浄器”で探してみてください。洗浄液も売っていますが、基本は塩水なので、毎日使う人であれば、自分で作るのがコスパが良いかと思います。

 前かがみの状態で、ノズルを片鼻に入れ、塩水を押し出しながら「アー」と声を出します。反対の鼻の穴から排出されれば完璧です。洗浄後に 優しく鼻をかんで中の水を出せば終了です。朝晩2回がお勧めです。

 注意事項としては、勢いよく押し出しすぎたり、注入中に飲み込む動作をしたり、濡れている状態で勢いよく鼻をかんだりすると、耳管に入る事があり、中耳炎になる可能性があるので注意しましょう。

 また外出が多く、行いにくいという人には、手軽に洗浄できるスプレータイプなどもあります。鼻にシューッとスプレーして鼻をかむだけである程度の洗浄ができますので、こちらもチェックしてみてくださいね!

 コロナもいよいよ感染症第五類にする検討が始まっています。ワクチンにも治療にもお金がかかり出しますので、いろいろな予防法を持っておくのは重要です。油断して長く続く後遺症を患うのは辛いです。大切なご自身の健康をなくさないよう、できることはやってみましょう。

 この冬は鼻うがいも駆使して、コロナ前のように活動的に過ごしたい蒼野でした!

参考文献: 
1)Rapid initiation of nasal saline irrigation to reduce severity in high-risk COVID+ outpatients: a randomized clinical trial compared to a national dataset observational arm

medRxiv.   https://doi.org/10.1101/2021.08.16.21262044    August 25, 2022

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